見出し画像

Jazz&HipHop・R&Bチャートを調べて学んだ『差別撤廃』の難しさ

黒人アーティストによる音楽は、白人側の事情によって分類され再分類され続けています

1894年11月1日:音楽業界誌『Billboard(ビルボード)』創刊

1936年1月4日:最初のヒットチャート『Most Played In Jukeboxes』(ジュークボックスで流れたヒット曲の一覧)を発表

1942年10月24日:黒人アーティストの音楽ランキングは『ハーレム・ヒット・パレード(Harlem Hit Parade)』という名称で登場(このチャートは、その名の通りニューヨークのハーレム地区のレコード店6店舗の売り上げに基づくランキング)

それ以降、ビルボード誌は時代に合わせて次々に名称を変えます

【1942年10月~45年02月】:『Harlem Hit Parade』
【1945年02月~49年06月】:『Rase Records』
【1949年06月~58年10月】:『Rhythm & Blues Records』
【1958年10月~63年11月】:『Hot R&B Sides』

【1963年11月30日付号から1965年1月23日付号】:黒人アーティストのランキングが未掲載

【1965年01月~69年08月】:『Hot Rhythm & Blues Singles』
【1969年08月~73年07月】:『Best Selling Soul Singles』
【1973年07月~82年06月】:『Hot Soul Singles』
【1982年06月~90年10月】:『Hot Black Singles』
【1990年10月~1999年】 :『Hot R&B Singles』

【1999年~2005年】:『Hot R&B /Hip-Hop Singles & Tracks』
【2005年~2009年】:『Hot R&B / Hip-Hop Singles』
【2009年~ 】:『R&B /Hip-Hop Songs』

『差別』は次の3つが考えられます

①『直接的差別』

侮辱的な発言をしたり 人を排除したりする行為(「その行為をした人が悪い」と分かる行為)

②『制度的差別』

法律・教育・政治・メディア・企業といった大きな枠組みのなかでシステマティックに行われるもの 

③『文化的差別』

人々が無意識に共有している価値観「こうするのが当然だ」といった空気感によって逸脱した行為をタブーにする

マイノリティ側が被る『差別』の裏には必ずマジョリティの『特権』があります

『特権』
マジョリティ性を多く持つ社会集団にいることで【労なくして】得ることのできる優位性

『特権』を持っているマジョリティには気がつきにくいのですが、『特権』を持っていないマイノリティには『特権』の凄さがハッキリ感じられます

『特権を持つ者』は、自分の下にいる人間について知ろうとしなくても問題なく生きていられますが、『特権を持たない者』は『特権を持つ者』の考え方を知らなければ生きていけません


皮肉にも「差別撤廃」や「博愛精神」が強調される社会・集団ほど「差別的な考え方」を持つ人が増加します

そんな社会・組織・集団の共通項は?

『権威主義的な人(権威主義に縋りつく人)』の【パーソナリティ要因】
②その他一般的な人にとっての【社会状況や文化といった環境要因】

ここが重要ポイントです

【構造的に差別を受けないですむ人】に対して

「差別はいけません」と『個人の心の持ち方を変えること』

を求めたところで【構造的な『差別』】を撤廃する行動に移さないでしょう


それは【差別を受けている人】のため手助けすることは【差別を受けないですむ人】にとっての不利益にしかならないからです

対人間・集団に紛争は頻繁に発生して、時には深刻な問題になり、紛争解決の主要原理として『公正』であるということが挙げられますが

『差別』『偏見』の解決策として『公正動機』だけでは、解決に導けない複雑で難しい課題が多すぎます

BLM運動の真っただ中の2020年6月8日
アリアナ・グランデやドレイクを擁する有力レコード・レーベル「リパブリック(Republic)」が公式Instagramで次のように発表

当社では音楽用語としての『アーバン(Urban)』を今後一切使用しません

これを受けて グラミー賞を主催するレコーディング・アカデミーも「アーバンの使用をやめます」との発表

『アーバン』は音楽業界では 黒人音楽の総称(JazzからBluesからR&BからHip Hopなど)だけでなく『黒人を大雑把にまとめてしまう言葉』として使用されるようになっていったことから『アーバン』=差別の温床になるかもしれない(なっている?)との理由だそうです

『ポリティカル・コレクトネス(以下「ポリコレ」と略す)』とは

社会の特定のグループのメンバーに不快感や不利益を与えないように意図された政策または対策などを表す言葉の総称であり 人種、信条、性別などの違いによる偏見や差別を含まない中立的な表現や用語を用いることを指す。政治的妥当性とも言われる。

引用:Wikipedia

白人の事情によるマーケティングの観点から『アーバン』という単語は使われるようになりました

この『アーバン』という言葉を使用しないことで他の単語に変えたとしても『ポリコレ』として表面を取り繕うだけのことに過ぎないでしょう


『特権』を持っている人の利権が絡む

「隔離と不平等に根ざしたマーケティング構造」

がある限り 問題の本質=人種差別問題 は何も解決しないでしょう





アメリカ全土で公民権運動が熱を帯びていた頃、不思議な現象が起きます

ビルボード誌【1963年11月30日付号から1965年1月23日付号】:黒人アーティストのランキング(R&Bチャート)が未掲載となります

ビルボード誌サイドは

「これだけ様々なジャンルの音楽が巷に溢れている今、わざわざR&Bチャートをジャンル分けして掲載する必要がない」

と苦し紛れの弁明をします


1965年からR&Bアルバム・チャートがスタートしました


いいなと思ったら応援しよう!