『ビ・バップ』の誕生は、西洋音楽史上の大革命
『ビ・バップ』の誕生は、西洋音楽史上の大革命です。
従来で合わないとされていた非和声音も「音楽理論上使える音を全部使ってみよう」という実験精神で、歴史上初めて『即興演奏』の可能性を大幅に解放した大革命です。
既存の古い音楽様式によって刷り込まれた制限からの逸脱した「表現の自由」を表した大革命。
菊地成孔氏は著書『東京大学のアルバート・アイラー—東大ジャズ講義録・歴史編』において、『ビ・バップ』の兆候を「音楽のスポーツ化」と呼んでいます。
同じ理論(ルール)を共有して初めて「競争」が成立するのでわけです。
『ビ・バップ』という新しいルールによって、ジャズ・アーティストの演奏は「より速く・より複雑」になっていき個人のテクニックを極限まで表現できて競い合う演奏スタイルに変わっていきました。
『ビ・バップ』は「スウィング・ミュージック」へのアンチテーゼ
『ビ・バップ』はテンポが速過ぎるために、踊れるスウィング・ミュージックを好んだ人々からは敬遠されました。
白人社会には黒人主導の『ビ・バップ』に対する嫌悪感もあったのでは?と考えられます。
黒人主導の『ビ・バップ』は黒人社会では大人気になります。
『ビ・バップ』は、黒人ジャズ・アーティストが「芸術音楽」も演奏できるという底力を示した。
『ビ・バップ』は、アルバムを通して「聴く」という姿勢に変えました。
ライブにやってくるオーディエンスは、インプロヴィゼーションを聴きにやってくるようになりました。
ジャズが「踊る音楽」から「鑑賞する芸術音楽」へと変化していきました。
『ビ・バップ』はジャズという狭い範疇だけではなく、白人主導の表社会・裏社会そして人種差別の厳しい現実の闇社会を明らかにしていき黒人意識向上・公民権運動への影響を与えた大革命でした。
『ビ・バップ』に対する好奇心は急速に高まり、人気を得るにつれてレコーディング・ストライキが終わった大手レコード会社も、 『ビ・バップ』 へ徐々に参入し始めます。
『ビ・バップ』は、従来のジャズに比べて、より複雑で速いリズムや和音進行を特徴としていて、プレーヤーの技術力が問われます。
そのため、同じ曲でも、演奏者によって異なる演奏が生まれることがあります。
『ビ・バップ』は「即興演奏」に重点を置いており、演奏者が自由にアドリブを加えることができます。
従来のジャズでは表現しきれなかった、新しい音楽的なアイデアや感情表現を可能にしました。
既成の枠を破り方には、人それぞれでしょうが、『ビ・バップ』は、腕自慢が集まって『即興力』をぶつけ合って「いままでとは違うやり方でやってみよう」という【好奇心】が、イノベーションを創造した最大要因です。
ケニー・クラーク(Kenny Clarke)
まず「リズム面」からのトライアルです。その中心人物がケニー・クラークです。従来のスイング・ジャズでは、8分の拍子に基づくリズムが基本でしたが、例えば、4分の拍子に基づくリズム、3拍子や7拍子などの不規則なリズム、そして「ビート」を変化させることで、新しいリズムパターンを生み出すといった方法が試されました。
セロニアス・モンク(Thelonious Monk)
変わり者が多いビ・バップ仲間内でも特に変った人物であったセロニアス・モンク。
多くのジャズ・アーティストが彼の音楽に影響を受けたが、彼の技法を学ぼうとする者は、ほとんどいなかったらしい(笑)
そんなモンクだからこそ、新しい柔軟なリズムを受けて、ピアノは打楽器的になっていき、ソリストのバックに徹するのではなく、刺激的なハーモニーとなる独特のピアノ・プレイを創造していきました。
ディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)
『ビ・バップ』特有の物凄い速さで旋律を演奏する事の出来た最初のトランペット奏者ディジー・ガレスピー。和声理論を深く理解していて、明るい外交的な性格で『ビ・バップ』の広報宣伝にも活躍しました。
バド・パウエル(Bud Powell )
『ビ・バップ』の頻繁なコード・チェンジに対応するために、
左手はコードプレイに徹するという演奏スタイルを確立しました。
Music is your own experience, your own thoughts,your own wisdom.
If you don’t live it, it won’t come out of your horn.
ー Charlie Parker ー
音楽は、体験であり、思想であり、知恵だ。
もし、君がそれを実践しなければ、楽器からは何も生まれない。
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