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マイルス・デイヴィス先生が『イノベーションの”ジレンマ”への挑戦』を解説
『イノベーションの”ジレンマ”』とは
「業界トップ企業が顧客のニーズに応えて製品改良を進めた結果、新興企業によるイノベーションに遅れを取り、やがて需要を失う」現象を表す言葉
停滞期~衰退期を迎えたジャズ(アコースティック・ジャズ)業界を マイルス・デイヴィスは どんな取組を行って どんな新しい方向性に導こうとしたのか?
クリステンセン『イノベーションの”ジレンマ”への挑戦』概略
『持続的イノベーション』は
メイン事業の顧客がすでに価値を求めている技術を活用して 商品やサービスの機能・性能を向上させる持続的技術が原動力になっている
大企業は 競合他社に差をつけるため 改良した新商品を販売できる 持続的技術を開発し 導入するように組織ができあがっている
『持続的イノベーション』を開発し、導入するのは ほぼ決まって業界のリーダーである
しかし 業界のリーダーがけっして「破壊的イノベーション」を起すことはなく それにうまく対処することもできない
『持続的イノベーション』だけでは限界があり 巨大な企業ですら潰れてしまうことを指摘して
『持続的なもの』にしろ『破壊的なもの』にしろ
イノベーションに対応するための組織形態を次3つとしています
① 新たな組織構造をつくる
② スピンアウトにより 新たな組織能力を創造する
③ 買収によって組織能力を獲得する
楠瀬啓介さんの投稿の通り
「飛躍的イノベーション」には
固定観念からの脱却と偶発性・創発性が必要
![スクリーンショット (245)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/76890042/picture_pc_8e61894f66f9b76d223725d795366273.png?width=1200)
業界のリーダー『黄金のクインテット』設立
1950年代のジャズ黄金時代に クール・ジャズ ハード・バップ モード・ジャズ と数多くの傑作を生み出してきた
マイルス・デイヴィス
1964年 かねてから声掛けをしていた ウェイン・ショーター(サックス)を招き入れて 『黄金のクインテット』を結成
その他メンバーは ロン・カーター(ベース)ハービー・ハンコック(ピアノ)トニー・ウィリアムス(ドラム)
ウェイン・ショーターを中心としたスタジオ・アルバム4作品をリリース
『ESP (’65)』『Miles Smiles (’66)』『Sorcerer (’67)』『Nefertiti (’67)』
ジャズ業界のリーダーである「黄金クインテット」といえども
「外部環境の変化」「消費者ニーズの多様化」「テクノロジーの進化」
そして ビートルズに代表される新規参入のロック勢に押されて アルバムの売れ行きは芳しくありません
この当時のジャズ業界を取り巻く環境は
![スクリーンショット (2150)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/76837013/picture_pc_02c48dbd9f61f93ef88b11a45c19b961.png?width=1200)
日に日に厳しさを増すばかりでした
マイルス流『イノベーション』への挑戦
マイルス・デイヴィスは 停滞状況を乗り越えるべく
どんなものになるかまだわからなかったが、変化を求めている自分に気づいて、演奏したい音楽への他のアプローチの方法も考えはじめていた。オレは、ギター的なボイスに可能性を感じるとともに、電子楽器が与えるボイシングの影響にも大いに興味を持ちはじめていた。(引用:マイルス・デイビス自叙伝Ⅱ p.123-124)
① 新たな組織構造をつくる
1968年2月と5月 エレクトリック・サウンドを取り入た録音を行って
『マイルス・イン・ザ・スカイ:Miles in the Sky 』をリリースします
組織変革の第一弾として
電気楽器の導入 (エレクトリックベース・エレクトリック・ピアノ)
エレクトリック・ギターを追加
(♬Paraphernalia♬で ギターリスト ジョージ・ベンソンを参加させる)
今風に言うと 既存領域へのDX でしょうか?
②スピンアウトにより新たな組織能力を創造する
新しいアルバム作成に向けて 1968年6月に従来メンバーでセッションを行いました
1968年9月のセッションでは メンバーチェンジ して
ロン・カーター ⇒ デイブ・ホランド(コントラバス)
ハービー・ハンコック ⇒ チック・コリア(アコースティックピアノ&RMIエレクトラピアノ)
「FrelonBrun」と「MademoiselleMabry」 の2曲を録音
1969年『キリマンジャロの娘(Filles de Kilimanjaro)』をリリースします
ソフト面ですが
アルバムにエキゾチックなタッチを与えるためにすべての曲のタイトルを フランス語 でリストにした
ジャケットは女性は
マイルス・デイヴィスの2番目の妻 ベティ・メイブリー
「ベティは、オレの音楽だけじゃなく、個人的な生活にも大きな影響を与えた。ジミ・ヘンドリックスの音楽とジミ本人、それにたくさんの黒人ロックとそのミュージシャンを紹介してくれた。彼女はスライ・ストーンとか、そういった連中もたくさん知っていたし、彼女自身もすばらしい才能を持っていた。」マイルス・デイビス自叙伝Ⅱ p.127
♬Mademoiselle Mabry (Miss Mabry)♬ は彼女に捧げられた曲です
③ 買収によって組織能力を獲得する
マイルス・デイヴィスは さらに新しいメンバーを加えて
ジョー・ザヴィヌル(オルガン)
ジョン・マクラフリン(エレクトリック・ギター)
新メンバーに加えて ハービー・ハンコック にも復帰してもらって
1969年『イン・ア・サイレント・ウェイ(In A Silent Way)』をリリース
後々 この作品が フュージョン という新しい音楽ジャンルの先駆けと言われるようになります
このマイルスの動きは 買収ではないですが 別の組織能力を獲得して制作したアルバムではあります
垣根を取っ払う
マイルス・デイヴィスの エレクトリックへの 新しい動きは 当初
『クロスオーバー(Crossover)』と呼ばれていました
『クロスオーバー(Crossover)』とは ジャンルの垣根を乗り越えて音楽性を融合させるスタイルを指す音楽用語(引用:Wikipedia)
まず ジャンルの垣根を越えて 新しい考え方や方法論を導入させたんです
『思い込み』や『決めつけ』を捨てて 垣根を取っ払う
巣立っていったメンバーたちは?
1970年代になって
ウェイン・ショーターとジョー・ザヴィヌル
Weather Report を結成
チック・コリアは スタンリー・クラークらと
Return to Forever を結成 アルバムは大ヒット
ハービー・ハンコックは ますますエレクトリック化していってヒットアルバムを量産しました
マイルス・デイヴィスと一緒にプレイしていった人が
フュージョン・ミュージック
などの 新しいジャンルを創造していきます
『フュージョン(Fusion)』とは
融合。溶解。統合。(引用:デジタル大辞泉
マイルス・デイヴィスのその後
1970年
2枚組のアルバム『ビッチェズ・ブリュー(Bitches Brew)』をリリース
![スクリーンショット (246)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/76891736/picture_pc_f805f17e4dee29d8868907f630132567.png?width=1200)
本国アメリカでゴールド・ディスクを獲得(マイルス至上初)
『ジャズ史上最も革命的な作品』
『ジャズとロックを融合した先駆的なアルバム』
と呼ばれて 『カインド・オブ・ブルー』と並らぶヒット作に
マイルス・デイヴィス曰く
「俺が本気になれば、世界一のロック・バンドだって作れる」
と豪語し ロック・フェスに出演するなど 新しいファン開拓を目指すようになっていきます
前述の2番目の妻 ベティ・メイブリー の影響大だったんでしょうね
まとめ
『破壊的イノベーション』とは 新しい種類の商品・サービスの導入によりまったく新しい市場を創造するものである。その導入初期においては メイン顧客が置いている機能・性能の尺度では劣っていると判断されることもある(クレイトンM.クリステンセン)
マイルス・デイヴィスのディスコグラフィーを追うだけで モダン・ジャズの盛衰の過程を一通り学ぶことができると言っても過言ではありません
自ら創り上げてきた モダン・ジャズ を 自らの手で ぶっ壊して 新しい音楽を創造していく
![スクリーンショット (251)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/76900081/picture_pc_38700088b366556a8d3899f5899fca56.png?width=1200)
マイルス・デイヴィスが 創造してきた音楽の過程を調べるだけでも
イノベーションの”ジレンマ”への挑戦
理解できる
マイルス・ディヴィスにとっての『飛躍的イノベーション』は?
フュージョン という 音楽ジャンルの創造 に止まることなく
融合 溶解 統合
ロック ~ ヒップホップ
一歩も二歩も先を見据えていたのではないだろうか?
とにかく カッコイイ 音楽の創造
では 最後は マイルス・デイヴィスの最もロック色の強いナンバーで