HPVワクチンに関する質問状へのつくば・市民ネットワークからの回答と、それに対する私の返信
つくば市議会でHPVワクチンに関する質問がなされたことに関し、質問した議員の所属する市議会会派「つくば・市民ネットワーク」に対して私は質問状を7月18日に送付し、それに対する回答を8月21日に受け取りました。残念ながら、議会発言の誤りについて事実関係に基づいた根拠を示した私の質問内容を真摯に吟味した形跡はなく、失望を禁じえません。もっとも、私の指摘した事実、論理を踏まえた議論になれば、おのずと自分たちの主張の誤りを認めるしかないので、議論に入ることを拒まざるを得なかったのかもしれません。
以下に、つくば・市民ネットワークからの回答全文と、それに対する私の返信を公開します。
+++++++++++++++つくば・市民ネットワークからの回答全文 (2019年8月21日17時43分受信)++++++++++++++++++++++++++++
ご質問への回答
佐々木徹 様
市民の健康を考える上での重要課題について、貴重なご意見をいただきありがとうございます。
子宮頸がんの重症事例や致死事例を少しでも減らしたい私どもの思いは佐々木様と同様です。
小森谷議員が6月議会で行った一般質問に関しての佐々木様のご質問について、お答えいたします。
HPVワクチンについては、副反応を疑う症状が高頻度・重篤であるとの報告があることから、2013年、積極的接種勧奨が中止になりました。そのような状況の中、昨年度つくば市内における接種者数が増えたことが一般質問を行った直接のきっかけです。
HPVワクチンの重篤な副反応の頻度は、他のワクチンに比べ非常に多いという情報を事前に接種者に提供すべきと考え、市のホームページやライフプランすこやかなど、HPVワクチン接種の情報を掲載している広報に適切に載せることを要望するに至りました。
実際に重篤な副反応を呈している少女たちの症状は凄まじいものがあります。 ナイフで切り刻まれるような頭痛、骨を抜かれるような疼痛、突然の失神、激しいけいれん、母の顔もわからなくなるなどの記憶障害、簡単な計算もできなくなる学習障害、不眠、体温異常、月経異常、光過敏、音過敏・・・・等々が変化しながら重層的に襲いかかってくるとの報告があります。既存の疾患では説明できないことから、「これらの症状は精神的なもの」とみなされ前向きな対応が進められておらず、中には「それはHPVワクチンの副反応ではない」と言われ、泣き寝入りせざるを得なかったというケースも多数報告があります。
被害者の救済については非常に問題だといわざるを得ない状況と考えています。厚労省からもHPVワクチンの副反応報告の取り扱いについて、市による相談体制と報告体制の充実が求められています。
なお、いただきました質問項目については以下の通りです。
[1] 「HPVワクチンは0.007%つまり10万人に7人にしか有効でない。」の発言について
発言を正確に記述しますと次の通りです。
『計算上ですけれども、この子宮頸がんワクチンの恩恵をうけるかもしれないのは、全体の0.007%、すなわち10万人当たり7人ほど、ということです。』
国会質疑において厚労省が示した数字を用いましたが、ご指摘のような断定的な言い方をしたとの誤解を与えてしまったとすれば、申し訳ないと思います。
[2] 「HPVワクチンが子宮頚がんを予防する効果は証明されていない。」の発言について
厚労省のパンフレットに子宮頸がんを予防することは「期待」されますが「証明」されていないと明記されています。
[3] 「子宮頚がんは検診をきちんと受けていれば、局所的な手術で取り除くことで妊娠も出産も可能だ。」の発言について
定期的な検診はたとえHPVワクチンを接種しても必要であることは皆さんご承知のことと思います。
このことから、子宮がん検診の受診率向上のための啓発をしっかりとして欲しい、という思いから要望いたしました。
つくば・市民ネットワークでは、小森谷議員が一般質問を通して要望したとおり、
・市の広報にはリスクの情報もきちんと掲載すること
・副反応ではないか?と市民から訴えがあった時のために相談体制と報告体制を充実させ、市民に周知すること
・子宮がん検診の受診率を上げるための啓発に力を入れること
以上は、つくば市民の健康を守る上で大変重要なことだと考えています。
2019年8月21日
つくば・市民ネットワーク
代表 瀬戸裕美子
++++++++++++++回答全文終わり+++++++++++++++++++++++++
+++++++++++回答を受けてのネットワーク代表瀬戸氏への返信 (2019年8月22日0時48分送信)++++++++++++++++++++++++++++
つくば・市民ネットワーク
代表 瀬戸裕美子様
回答、ありがとうございました。
回答文の最初にHPVワクチンの重篤な副反応とされるものに触れられています。こうした症状は、ご本人、ご家族にとって筆舌に尽くしがたい苦しみをもたらすことは容易に想像でき、十分な医療的な手当てがなされるべきですが、一方でこれらが副反応とみなせる客観的な根拠はあるのでしょうか。私からの質問状でもすでに指摘したことですが、名古屋での広範な調査でもワクチンの接種と問題の症状の間に関連性は見いだせなかったとの結論が出ている通りです。メカニズムも疫学的調査による因果関係も何ら得られていない中で、起きている事象を見て副反応と断定的に見るのは極めて不適当です。
具体的な質問項目に対する回答内容を拝見すると、3つの各論で私が示した具体的な事実関係、論理については何ら言及しておりません。反論するなら、私の示した事実、論理について、それはこう違うから私たちはこのように主張しているのです、といった議論をしていただけるものと期待していましたが、何一つ触れられていないことに失望いたしました。
[1]の「10万人当たり7人ほど」について「国会質疑において厚労省が示した数字を用いました」としていますが、私の質問状の中ですでに述べていますように、3つの数字は確かに厚労省が確認していますが、これらの数字を組み合わせて出てくる0.007%の数字はその計算の考え方も含めて厚労省は認めておりません。私が質問状で指摘した小森谷議員の考え方の誤りになんら触れることなく、同じ主張を繰り返しているだけなのはどう理解すればいいのでしょう。私の論述が間違っているならそれを指摘すべきです。それをしないということは、貴会派は私の主張を否定する論拠を持たないと理解せざるを得ません。「断定的な言い方をした」ことを問題にしたのではありません。
そして、質問状に書いた大事な点を貴会派の回答は何ら触れていません。0.007%の数字を肯定している医師はいるのかとの質問です。触れていないということは、専門家たる医師からは賛意が得られていないものと理解します。子宮頸がんのことを議論しているのに、医師から正しいと確認も取れないことを議会の場で発言し、それを取り消そうともしない会派と理解いたします。
[2]については、「証明」はまだ不十分としても各国で効果を示す論文が多数上がっていることについて貴会派がどう思うか問うたものです。厚労省のパンフレットの内容を聞いたわけではありません。これだけHPVワクチンの子宮頸がんの発症を抑止する効果が推測できる学術論文が上がってきている中で、それを評価する姿勢が取れない会派だと理解いたします。
[3]についても、私の質問には何も答えておりません。私の質問は、「子宮頚がんは検診をきちんと受けていれば、局所的な手術で取り除くことで妊娠も出産も可能だ」との小森谷議員の発言の誤りを、具体的な事例をあげて指摘し、そのことへの考えを問うたものです。「定期的な検診はたとえHPVワクチンを接種しても必要である」ことは百も承知で、私どもも検診とワクチンは子宮頸がん対策の車の両輪とすでに質問状の中で述べたとおりです。「検診の受診率向上のための啓発をしっかりとして欲しい、という思いから要望いたしました」との回答は問題のすり替えです。
またここでも、小森谷氏の発言内容が医師の確認を取ったものかどうかについて私が回答を求めたことに対して回答を避けています。「検診を受けていれば妊娠・出産も可能」との発言は医師の確認の取れていない無責任な言説と理解いたします。
当初の2週間の回答期限に対して、意思決定会議である8月20日の運営委員会で承認を得てから回答したいとの申し出を受け、会派として真摯に検討していただいているものと期待しておりましたが、私が示した具体的な事実関係や論理は何ら検討した形跡がなく、失望を禁じえません。
貴会派は重篤な副反応とされる少女たちに寄り添っているとお考えなのでしょうが、その先に何が待っているかを冷静に考えなければなりません。木を見て森を見ずということがあってはならないということです。各国が子宮頸がんの克服に向かう中で日本だけが取り残されていいのでしょうか。ことは命にかかわる問題です。子宮頸がん患者を一番近くで見ている医師たちが参加する日本産科婦人科学会はHPVワクチンの積極的勧奨再開を繰り返し求めています。HPVワクチンによって救われる多くの女性たちの命、妊娠・出産のできる健康な体のことを思いやってください。
ご存知のように、今回の議会質問をきっかけに、つくば市周辺の医師たちも危機感を持ち、子宮頸がん、HPVワクチンに関する勉強会を8月28日に開催することを計画しています。主催する医師によりますと貴会派に対しても招待していたにもかかわらず所用を理由に欠席すると回答があったと伺いました。残念なことです。「子宮頸がんの重症事例や致死事例を少しでも減らしたい私どもの思いは佐々木様と同様です」とおっしゃるなら、医師と直接議論を交わせるこの機会を逃すべきではないのではないでしょうか。貴会派の姿勢をうかがわせるものとして心に留めさせていただきます。
現在に至るまで国はHPVワクチンの積極的な勧奨を中止したままで誠に遺憾なことですが、自治体レベルで対象者に通知し接種を呼びかけることは可能です。最近、千葉県のいすみ市では勉強会を契機に市長の決断で対象の子どもに通知することを決定したそうです。小森谷議員の市議会での発言をきっかけにした勉強会を弾みに、つくば市でも対象の子どもに通知が届くようになってほしいものです。
令和元年8月22日
佐々木徹
++++++++++++++++返信、ここまで+++++++++++++++++++++