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妄想旅行記〜五島列島編〜(最終回)
予想外に多くの方に読んで頂き、そしてなんと日経MJにも取り上げて頂いてしまった妄想旅行記〜五島列島編〜もいよいよ最終回だ。(左下の「にしてシェア!」の部分が私のnote。記事でも名前を出していただいた)
【27日のMJ】外出自粛で旅行が難しいなか、ガイドブック片手に自宅にいながら現地に行った気分に浸る妄想旅行はいかがですか。妄想旅行による〝地球の歩き方〟を取材しました。 pic.twitter.com/gYoamo5fHZ
— 日経MJ (@nikkeimj) April 25, 2020
最後に改めて改めて書いておくと、これはフィクションだ。そしていろんな人に誤解されていたので補足しておくと、私は五島列島を訪れたことはない。博多ですら20年くらい前に訪れたきりだ。過去の記憶を頼りに、ではなく本当の妄想旅行記なんです。
ではお楽しみください。最終回だし、今回はもっと妄想を爆発させちゃおうかな。
同行者
最終日の朝。今日も晴れだ。明日からは東シナ海に迫る低気圧の影響で曇りがちになるらしいが、今日までは大丈夫だ。今回の旅はつくづく幸運に恵まれている。
今日は実は一人旅ではない。昨晩、ドミトリーで話をした子(A君としよう)がいて、A君も午前中暇だというので、一緒に市街を回ることにしたのだ。名古屋から来た大学生。九州一周旅行の最中で長崎から昨日渡ってきたらしい。残念ながらというか男の子だ。自分も大学時代自転車部で日本国内を貧乏旅行していたので、なんかその時のことを思い出したりして懐かしい気持ちになってつい話してしまった。
一人旅をしていて難しいのが、他の旅行者との距離感だ。自分が一人旅をしているからこそ感じることだが、一人旅の最中は他の人とのコミュニケーションに恋しくなるのと同時に、一人の世界に篭りたいとも同じくらい思っているものだ。よく聞く、旅先での偶然の出会いというものに惹かれたりもするが、微妙な道中になってしまうんじゃないか、せっかく楽しい一人旅が微妙なものになってしまうんじゃないか、という不安もある。
だからこそ、このおじさんは大外れかもしれないのに「明日一緒に回りませんか」と誘ってくれたA君の勇気に敬意を表して、最後の1日は賭けに乗ってみることにしたのだった。
先行者
同行者と書いていて、本当にどうでもいいことを思い出していた。キッズたちがまだ生まれていない頃、古のインターネットで「先行者」というロボットが流行ったことを。ご存じない方はこちらのサイト(侍魂)をご覧いただきたい。ご存知ある方は久しぶりに訪ねてみていただきたい。友人に教えてもらって学校のpcでこのサイトを見ながら「インターネットっておもしろいんだなあ」と思ったことを思い出した。
海城「福江城」
話を元に戻して、今日は市街地の観光だ。A君にどこにいくつもりだったのか聞いてみると、とりあえず福江城に行きたいとのことであった。私も同じくらいしか考えてなかったので、最初に福江城に向かうことにする。
福江城は石田城とも呼ばれ、三方が海で囲まれた日本で唯一の海城だ。
日本で唯一なので、何を見てもこういうものだ、と思うしかない。そんな感想だった。A君の大学での専攻や私の自転車部時代の話などをしながら、ちょっと不思議な気分で城を巡った。
城をみたら少しはこの街の生い立ちに興味が湧いてきたので、観光歴史資料館に向かう。A君は工学部でエンジンの熱効率を高める研究をしているらしく、歴史や民俗にはそれほど興味はなさそうだったが、せっかくなので、ということでついてきてくれた。
展示は、エンジンとは全く関係がなかったが、A君もそこそこ楽しそうに見ていたし、手作り感あふれる展示が多く私もそこそこ楽しむことができた。
昼食〜別れ
昼食は、車でちょっと行った奥浦というところに気になる店があったのでそこにいくことにした。
昔からあった食堂を2019年にリニューアルした食堂で、とてもリーズナブルな値段だが美味しくてよかった。近くに海もみえたが、市街地とちがって静かな入江の街という感じで食後の散歩もとても気持ちよかった。
食事の後は、飛行機の時間もあったので市街地までA君を送って降ろしたあと、空港に向かうことにした。
鬼鯖鮨
飛行機に乗る前にどうしても寄りたい場所があった。鬼鯖鮨。
これはどうしても食べたい。食べなきゃ帰らない。そのくらいの決意で店まで向かった。定休日だったり激混みだったらどうしようという一抹の不安はあったが、幸運にも開店しておりそれほど混んでもいなかった。
飛行機を待っている間に食べる用とお土産用と2つ購入し、レンタカーを返却したのち空港に向かう。福岡空港経由での帰京だ。待合所で缶ビールを飲みながら撮った写真を見返して思い出にふける。500枚くらい写真をとっていた。密度の濃い旅だったなあ。。。。
羽田まで、そして
羽田に戻る機中で、ずっと考えていた。もっと島を旅していたい。なんなら東京に着いた後その足で伊豆諸島にいきたい。式根にいきたい、神津にいきたい、八丈にいきたい。なんで明日から働かなきゃいけないんだ?確かに生きるために働いているが、島を旅することが生きることなんだとすれば、働くことで島に行けなくなったら本末転倒じゃないか?確かにアルコールの勢いも少しはあったかもしれない。しかし、筆を取る手はほとんど淀むことなく、気づいたら私は「一身上の都合により〜」から続く文章をしたためていた。
そして羽田についた私は、モノレールに乗り浜松町にある郵便局からそれを送り、交差点の角の店で串揚げを食べ、ゆで太郎で蕎麦を食ってから足取り軽く竹芝桟橋に接岸している退役間近のさるびあ丸を目指すのだった。
(了)
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