くるりのえいが
京都出身のロックバンド「くるり」が、脱退したドラマー含む結成当初のメンバーで試行錯誤しながらアルバムを制作する音楽ドキュメンタリーです。
※画像は京都で出会った「路地裏のニャンコ」です。
岸田さんは「おっさんの同窓会にはしたくない」と言ってましたが、昔の衣装の話でキャッキャしてる3人の様子は同窓会そのものでした。大学の同級生がひさびさ揃えばそりゃ積もる話もありますよね。
が、ひとたびスタジオに入るとその雰囲気は一変します。
ギスギスしているわけではないし、むしろリラックスした雰囲気だけれども、何か伺い知れない緊張感にそこはかとなく支配されている。
カメラが入ってるから、というのもあるかもしれないけど、やっぱりいろいろとあったんだろうなと感じずにはいられない。
そんな中でもどんどん曲はできていく。
岸田さんが適当に弾いているリフが徐々に形になり、「In Your Life」の原型が見えてくるシーンがあります。この映画の参考にしたというビートルズの「Get Back」と同様、何もない所から音楽が立ち上がっていく魔法のような瞬間を捉えていて感動します。
ベーシックは伊豆スタジオのセッションで録音していますが、残りは京都などさまざまな場所でかなり綿密にアレンジされていきます。ラフで勢いのあるセッションの感じはそのままに、「おっさんの同窓会」ではできない現代的なトリートメントが施され、しっかりと「最新のくるり」のサウンドになっていく。
結果できたのは「さよならストレンジャー」のようでいて、そうではない「感覚は道標」というアルバムでした。
「In Your Life」の歌詞に「炭酸 口にほろ苦し」とあります。
今のくるりは、混乱とか葛藤とかにぶち当たって傷ついた青春時代にはすっかり別れを告げて大人になったわけです。
その大人になるまでの道筋で、さまざまな選択を積み重ねてきて、失敗も成功もあったけど、頼りにしていたのは「感覚」であった、と。
そういえば「選択」に関して言うと・・・
森さんが驚いているシーンがあった。
歌のジャッジ(ボーカルテイクの良し悪しを判断すること)を今のくるりは佐藤さんがやっているのだ。歌い終わった後に佐藤さんの意見を聞き、素直に従う岸田さんの姿。
今のくるりは、あたりまえだけど、森さんの知らないくるりになっているわけです。しかし。
京都のライブハウスで「東京」を演奏するシーンがあります。
アンコールでものすごくあっさり始まって、淡々と演奏しているんだけど、なんというか、あの3人が演奏してた当時の感じが徐々に零れ落ちてくる。
あの曲自体がそういう青春の熱みたいなのをパッケージしてしまっているので、それを解凍すると、いつになってもそんな青い感情があふれ出してしまう。それは見ているこちらもまったくそうで、当時のことなど思い出して涙してしまう。
「感覚は道標」は本当にいいアルバムで何度も繰り返して聞いているのですが、「おっさんの同窓会」にも意義・意味はあるのではないかなと、「東京」を聞いて思いました。