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楽しいサタンリターン

そういえば来月30歳になるなあ、とふと気づく。

「ん?てことは、もうサタンリターン終わったの?」と思って確認したら、少し前に静かに終わってた。なんというか、気が抜けるほどなんともなく通り過ぎてしまった感じ。ホロスコープの専門書で書かれているほど「大変」に感じないのはきっと、もともとの土星がハードアスペクトだらけで日頃から鍛えられてるのと、数年前のトランジット冥王星とのコンジャンクションの生きるか死ぬかの地獄をすでに乗り越えてしまったので、相対的に「大変」には感じないんだと思う。というかむしろ全然楽しかった。さよならサタン。また30年後。

トランジットの冥王星が1室のネイタル土星・天王星・海王星のコンジャンクション(それは9室の水星・金星と、7室の木星でTスクエア)にコンジャンクションした時は、最愛の人を失くして人生の基盤を木っ端微塵に打ち砕かれた。長年抑え込んできた幼少期のトラウマが、日常の小さなきっかけでエンドレスにフラッシュバックしはじめ、その悪夢を止めるためにペンで体に痛みを与えることでやっと息をし続けてた地獄みたいな夏。医師に処方されたあわないSSRIで体の全ての感覚は鈍磨して、希死念慮も消えるぶん、生きてることの感覚も全て感じられなくなって、明日死んでても生きてても全てどうでもよくなった。25歳で自分は一度屍になり、そんな冥王星のトランジットの灰の中から不死鳥のように蘇り、現在オマケ人生の29歳(の最後の1ヶ月)。

正直、冥王星に比べれば土星なんて全然楽だった。次々と目の前にやってくる課題をとにかく誠実にこなせば「サタンリターン」はなんともなく過ぎ去ってしまった。むしろ、今までの努力が実になって教授から実力が認められたり、論文の出版が決まったりして、今までの29年で実は一番楽しい年だったような気がする。どんなに厳しいプレッシャーがかかっても、自分は目標をやり遂げられる自信を持てるようになったし、むしろそういう状況で最高の結果を出すことを楽しめるようになったかな。無論、今の自分に満足できるわけじゃないけど、でも、だからこそ理想の自分に一歩づつ近づいていく楽しみがたくさんあって退屈してる暇がなくて調子がいい。

ホロスコープの専門書は、いろんなことをシステマチックに分類化して説明するけど、その事象を本人がどう感じるかは、本当にケースバイケースなんだと思う。土星のハードアスペクトが少なくて、冥王星の地獄を味わったことがない人にとり人生初のサタンリターンは「大変」なのかもしれない。だけど、自分の場合は全然そうじゃなかった。教科書を勉強するのも大事だけど、個々人のチャートを読んで本人に聞いてみなきゃわかんないこともきっと山ほどあるとおもう。そういう意味ではプロの星読みの、ケースバイケースの研究の質が大事なんだろうな。


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