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特例法によって法的性別を変更した者の犯罪に関して

 性別不合当事者の会の赤井キツネです。今回は生物学的女性の権利を守る会(以下、守る会)様のこちらのnoteに対するアンサー記事になります。尚、特別に記載のない限りこの記事での〝女性〟〝男性〟は全て生物学的医学的性別=sexのことを指し、個人のgenderやgender identityは、少なくとも記事内においては考慮していません。

 と紹介しても元のnoteを読まずに流す人が多そうなのでこちらで守る会様のnoteについては適宜言及しながら記事を進めるつもりです。
 では、まずはキーとなる人物、菊池あずは受刑者についてざっくりと紹介。

 殺人事件を起こした2015年時点で28歳。幼少期から女子が好むような遊びが好きで小中学校では友人から「女の子みたいだ」と言われていた。高校に進学するも男子の制服を着るのが嫌で中退。その後、医療機関で性同一性障害の診断を受診後、タイに渡って性別移行手術を受け、2006年に性同一性障害特例法が適用されて法的性別を男性から女性へと変更。法的性別変更後は一年ほど故郷の九州博多の中洲でホステスをしていたが銀座へ移る。しかし銀座での仕事は上手くいかず、試用期間の1、2ヶ月でほとんど契約を打ち切られていたようだ。2013年頃から一年働き続けた店で自分に親切にしてくれていた後に被害者となる幹部社員の男性と2014年から同棲を開始。しかし、同棲後すぐに男性は同棲の継続は無理だと悟り、次第に気持ちが離れてゆく。そして2015年2月、男性から結婚は無理だと伝えられた菊池受刑者はそのことを恨み、後日用意した金属バットで被害者の頭部をめった打ちにしてから胸や首を多数回刺して失血死へと至らしめ、逮捕される。裁判で弁護側は受刑者の軽度な知的障害や広汎性発達障害を理由に減刑を求めたが、同年12月に求刑18年に対して16年の刑期を裁判所より言い渡され、女性刑務所へと収監された。

 一応複数のニュースソースから引用しながら菊池あずは受刑者のプロフィールを書きましたが、事実とは異なる点があったとしてもご了承下さい。この記事の趣旨は守る会様のnoteに対するアンサーであり、菊池あずは受刑者個人について考察するものではないので事実と異なる点があったとしてもぶっちゃけ些事です。
 では、ここから守る会様のnoteに触れていきたいと思います。

<要望その1:菊池あずは氏を男性刑務所に収容するよう要望します。>

 要点としては、

1 骨格や体格(菊池受刑者の身長は179cm)など男性の身体的特徴を有している菊池受刑者の存在が、虐待、性暴力、DV被害などによって男性身体に対するトラウマを抱えている女性受刑者への障害や抑圧になり得る。

2 第二次性徴を男性として過ごした菊池受刑者の身体機能はほぼ男性のそれに等しく、女性受刑者や女性刑務官にとっては場合によっては脅威になる。

3 菊池受刑者が男性刑務所へ移送された場合、性暴力被害に遭う懸念があるので「居室を単独にする」などの配慮を希望する。

 といった内容になっています。要約に私の恣意がある程度混ざっていますので正確に知りたい方は原文のnoteを読んでください。また、3については当たり前の配慮なので特に言及しません。
 この要望を読んで多くの方はこう考えるかもしれません。

「特例法で性別変えたんだから、菊池受刑者は女性刑務所に入れるのが筋じゃね?」

 正直に言うと私も最初はシステマチックにそう考えました。が、GID-MtFの方の存在を多数の女性が脅威に感じ得る状態であるならば、その人物がたとえ法的に女性と見なされる状態であったとしても女性刑務所のような女性同士が緊密に集団生活をするような特殊な女性スペースから排除することは合理的判断と見なされるのではないでしょうか? あるいは、GID-MtFの方の多くは自分が外性器以外には男性身体のままであることを理解しており、女性のスポーツ大会に出場することを避けたり女性の方々に恐怖を与える可能性に配慮して公衆浴場などには入らないといった判断を下していて、当事者自身が女性と空間や権利を共有することが憚られる場面があることを十分理解しておられるように見受けられます。当事者の方々自身がそういった判断を下すことからも分かるように、女性刑務所からGID-MtFの方を排除することは状況次第では妥当であると言えるのではないでしょうか?

 とは書きましたが、だからといってGID-MtFの受刑者の方を全員自動的に男性刑務所へ収監することが理に適っているとは正直思えません。刑務所のキャパシティの問題があったり、GID-MtFの受刑者の方の保護を行う男性刑務官の負担が相当大きかったりする筈だからです。そう考えると、昨今社会の無用な混乱を避ける目的で女子トイレや男子トイレの他にユニセックストイレを用意する風潮が強くなっているのと同様に、性同一性障害の診断を受けた方やジェンダーのトランジションを行っている人の為の収監施設を設置する、といった判断があっても良いのかもしれません。性同一性障害や「トランスジェンダー」と呼ばれる社会的性別規範のトランジションを好んで行いたがる人たちの存在が世間一般に周知され始めている現状、そういった議論が為される必要があるように感じられます。

次回に続く

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