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「東京都パートナーシップ宣誓制度」素案の意見を提出しました

 今回の「東京都パートナーシップ宣誓制度」素案につきまして、影響を受ける当事者団体としてパブリックコメントを送付いたします。

 私たちは、性別不合の当事者が会員となっている集まりです。性別不合はいわゆる性同一性障害の後継概念です。以下、分かりやすさのため性同一性障害と記載します。

 「東京都パートナーシップ宣誓制度」素案は性的マイノリティが対象となっている制度とのことですが、同性愛者や両性愛者のみならず「性自認が出生時に判定された性と一致しない者」を含むとあります。これは「性自認」を社会制度に取り込む危険性を孕んでおり、いくつか懸念があります。以下に法案に対する意見とその理由を記載いたします。



1.一部性的マイノリティであることを他者判断しにくいケースと特権化する懸念

 本素案の名前には「同性」とは付いていませんが、制度創設の目的により性的マイノリティを対象とした制度だと理解しています。
 素案の定義上「性的マイノリティ」とは、「性的指向が必ずしも異性のみではない者」「性自認が出生時に判定された性と一致しない者」となっています。「性自認が出生時に判定された性と一致しない者」とは「自認」で申請できるものと理解しますが、その場合、異性をパートナーに持つ者はどう対応されるのでしょうか?(FTMだけど男性とのカップル、もしくはMTFだけど女性とのカップル)
 性同一性障害の診断を持たない場合、本人の「自認」以外はまったく他者から判別が付かない場合もあります。
 また、ジェンダーフルイドのように性自認が男性だったり、女性だったりする人は性的マイノリティ当事者となるはずですが、その場合についてもどう対応されるのでしょうか?宇多田ヒカルのようなノンバイナリーを自認する者と男性とのカップルについても同様に疑問です。
 パートナー関係にあることを宣誓しているとしても、それは事実婚の男女でもそのような条件に当てはまる者はいるでしょう。しかし、これらのケースではその人が性的少数者であることを他者が判断することができません。
 都が提供する都民向けサービス事業について、「受理証明書」の保有者が活用できるよう検討するとも書いてあります。上記のようなカップルが申請できるのであれば、事実婚の男女から見ればマイノリティ特権にあたる制度になってしまいます。

2.性自認が他者から判別できないものである面からの懸念

 「性自認が出生時に判定された性と一致しない」ことを他者が判断することはできないため、届出の際にその「性自認」を要件確認の対象にした場合、それは自己申告をそのまま受け取るのみとなるでしょう。
 逆にもし、届出で申告している「性自認」について受け付ける側が正当か否かを評価をして届出を受理しないようなことがあれば、制度の要件に対して性自認を他者の視点で判断したとして大きな問題になると考えられます。
 であれば、性的マイノリティの定義に「性自認が出生時に判定された性と一致しない」の項目が存在する意味は有って無いようなものです。性的マイノリティに限らず、全ての男女を対象にするべきです。

3.なりすまし発生の懸念と不満が生まれる懸念

素案の通りに性的マイノリティに限った場合、2で指摘したように性自認を他者が判定することはできないため、事実婚の男女でも生得的性別と異なる性別を「自認」するだけで届け出ることはできることになります。
 仮にですが、そのようにして「なりすまして」利用しようと考えるカップルが出てきた場合、その「なりすまし」が何かトラブルを起こすと性的マイノリティの印象悪化に繋がる可能性があります。もしくは意図しない言動で性的マイノリティとはこういう人たちで、こういうことに悩んでいる、そういう面で周囲の人たちへ誤解を与える可能性もあります。
 また、異性愛のパートナー関係にある人たちの中で、そのような抜け道があると知られれば不公平感から不満が生まれてしまいます。

4.LGBTQ人口が増える懸念と不平等感が生まれる懸念

1や2で示したようにノンバイナリーやジェンダーフルイドのような性自認の男女カップルが対象となれば、一般の男女カップルから見れば不平等感は否めません。不公平と感じる人が増えれば、性的マイノリティへの風当たりが強くなる可能性が高まります。
 また、ノンバイナリーやジェンダーフルイドなどの性自認は、なりすましという意図が無くても、社会の空気によって増加する可能性があります。2021年10月26日のNewsweekでは「アメリカの若者の30%以上が「自分はLGBTQ」と認識していることが判明」という記事が出ています。
 自認で届出が受理されるような制度を設ければ、名乗った者勝ちになります。そのような制度では、都でもLGBTQが増えていく可能性は十分あるのではないでしょうか?
 このような名乗った者勝ちのような仕組みでは、性的マイノリティを自称する人たちへの反発が増えるだけでなく、本来の当事者より当事者が増えることで本当に悩む性的マイノリティの望む支援と制度が乖離したり、人々が思う当事者像と当事者の実態が乖離する懸念があります。
 3にしろ、4にしろ善意やふつうの感覚を頼った制度は危険です。戸籍上の性別で同性同士に限るか、性的マイノリティ以外の全ての男女を対象にした制度とすべきだと考えます。

5.本制度で発行する受理証明書での懸念

受理証明書や、あれば関連で発行する証明書などもですが、「性自認」を「性別」と取れるような欄を作らないようことを強く望みます。
 仮に、そのようなこと証明書を都が発行した場合、都が「性自認」を「性別」として認めたことになってしまいます。
 「性別」は社会の根幹を作る基礎的な要素です。男性と女性はその身体的な違いにより明らかな力差、立場の強弱があります。一方で「性自認」は主観的な概念です。他者が判断することはできません。
 この制度により発行する受理証明書等の文書には、戸籍上の性別、もしくは、性別欄は無しにされるようお願い申し上げます。

以上になります。何卒十分なご検討をお願い申し上げます。

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