杉山一樹に関する雑感

今回は杉山投手に関してです。
SNSでよく見かける「変化球の制球が悪い」のような意見への私なりの考えや何故成績を残し切れないのか、理想のピッチングなどについて述べていきたいと思います。

□各変化球について

杉山選手は「フォーク・縦スライダー・カットボール・カーブ」の4つの球種を持っています(何故か、上のデータに出てこない球種もありますが。)まずは、それぞれの球種について軽く説明したいと思います。

①フォーク

最強のボールです。一時期上手く落とせていなかったですが、7/22のオリックス戦からは綺麗なジャイロ回転で142km/hぐらいで落としながらも変化量も伴った素晴らしいフォークを投げていて、O-Swing%も非常に高い数値を記録しています。基本的にはストライクからボールになる球ですがゾーン内でも使えている場面も多々あるなど、彼にとっての”マネーピッチ”と呼べるでしょう。何故カウント球から積極的に投げず縛ったりしているのかが謎なぐらいです。素人からしても使わないのがおかしいぐらいです。

②縦スライダー

130km/hぐらいのパワーカーブ的スライダー。トップスピンの効いた良い球で、決め球よりは主にカウント球として使いたい球。ただ、今年はあまり投げていないのが気がかりなところ。左にはバックドアだけでなくバックフット気味に曲げたりできれば投球の幅は広がるはず。投げすぎには注意。

③カーブ

縦スラよりも5km/h程遅く典型的な山なりを描くカーブ。何故かフォークより多くなる時もある。実際のところそこまでは投げなくて良くて、1試合に1.2球ぐらいで良いかも。投げるタイミングを見極めて使わないと大事故につながるでしょう。

④カットボール

またまた、何故か使われない球種。投球数が少なすぎてなんとも言えないが、使って行かないと投球が苦しくなるはず(というか現に苦しい。)真っ直ぐが速い投手で且つ変化球の投球割合が少なすぎるが故に真っ直ぐは狙われることが多いので、その打者心理を逆手に取りしっかりスラットさせてアウトを積み重ねていけてら最高でしょう。初球から投げていくのも一つの手だろう。

ま、このように彼は以上の4つの変化球を投げるのですが、今年はここまで投球割合を見るとこの4つの球種が合わせて4割程度しか投げていません。非常に勿体無いです。成績が付いてこない一つの要因だと考えています。

□変化球のZone%について

 上記では四つの変化球を持ち合わせていることを紹介しました。ではその変化球がどれほど使えているかに付いて簡単な指標を元に説明していきます。

Zone%:「Zone%」とは簡単言うと「ストライクゾーンにどれだけ来たか」を表す指標のことです。

以下は杉山投手のピッチングのデータをまとめたものになります。

引用:悟@野球とデータ(@@bb_satoru)

 こういったデータを無償でまとめてくれて公開してくださる方には頭が上がりませんね。是非フォローして、多くのデータに触れてみてくださいね。

さて、見て頂ければ分かるでしょうか。”そもそも”の変化球の投球割合はかなり低いことには”敢えて”触れませんが、全体的に見て変化球の"Zone%"は壊滅的なものではなく、むしろ投球の6割強を占める真っ直ぐと同等、もしくはそれ以上の数字を残していますね。お世辞にもコントロールが良い投手とは言えませんが何も「全てが破綻していると言うわけではない」と言えるでしょう。

□真っ直ぐ過信を断つ

上記で「変化球が使えないわけではない」ということはある程度理解して頂けたと思いますが、では何故成績が伴わなかったり変化球の割合が極端に少ない試合がここまで多いのでしょうか。私は二つの要因があると考えます。

①:「バッテリーを組む相手」

大前提としてこれは主にバッテリーを組む甲斐拓也捕手への批判ではないことを頭に入れておいて欲しいのですがが、これは概ね間違いないと思います。甲斐選手は「真っ直ぐ」を主体に配球を組み立てたりリードする傾向にあり、杉山選手と組む時も50%越えは至って普通のことであり、今年の初登板時には70%を越えていたぐらいです。とにかく真っ直ぐを投げさせる傾向にあります。投げさせすぎなのです。

いつ見ても酷いですねこれは。いくら真っ直ぐが速い投手でその日の状態を考慮しても真っ直ぐが70%を超えた配球で通用するほどプロ野球は甘くありません。もっとこの真っ直ぐを生かす配球をして杉山投手を導いてあげないといけません。初回からオール真っ直ぐなんて全体にやっはいけません。

一軍クラスになると真っ直ぐしか投げないとこうなりますよね。これに関しては監督も苦言を呈していましたね。打者有利カウント(0-1,0-2で四割ぐらい打たれている)での被打率が非常に悪く、そしてそもそもの真っ直ぐの被打率も.296となっているので、変化球がデータ的にも使えない訳でもないので変化球でカウントを整えることを覚えて欲しいものです。極端な話、今の変化球と真っ直ぐの割合をそのまま逆転させるぐらいで良いのではないでしょうか。

②:「再現性」

使えないレベルではないということは前述しましたが、課題が残っていない訳ではありません。40%ぐらいはゾーンに入れていますが、本当は50-55%を安定して残して欲しいところです。まだまだ「再現性」に欠ける部分はありますので、そこはこれからの課題です。

しかし、だからと言って全く投げないみたいな極端なことになって良い訳ではありません。普通に投げるべきです。

□理想の配球

真っ直ぐが速い投手で真っ直ぐの被打率が悪いことからも狙われているのは間違いなでしょうし、芯を外せるカットボール(スラット)フォークボールなどで入りながら真っ直ぐを通す、もしくは投げずに最後まで変化球というような配球もやっていくべきでしょう。特にフォークは左右関係なく投げていくべきでしょう。逃げ球縛りなどやっている余裕などありません。とにかく真っ直ぐを投げずに如何に真っ直ぐを意識させるかに限ると思います。真っ直ぐも左にはライズさせる、縦スラもバックフットやフロントドア気味に投げるなど球種一つで幅を持たせたいところ。でもまずは、変化球を投げる(投げさせてもらう)ところからやっていきましょう。

□最後に

先日のオリックス戦で解説を務めた斉藤和巳氏が非常に興味深いことを仰っていたので紹介しますね。

簡単に要約すると「もっと早い段階から変化球を投げるべき」ということです。理由として、真っ直ぐしか投げないと変化球の「感覚」を掴めないまま試合が進んで言ってしまい自分を苦しめることになるから、です。本当にその通りだと思いましす、変化球の再現性に欠けるのはこのこともあるのかなと思ったりもしています。また、真っ直ぐばかりを投げた後の変化球だと打者は反応しやすくなのではないかとも考えます。なので序盤から変化球をしっかり混ぜながら感覚を養い、そして狙い球を絞らせないようなピッチングを組み立てていきたいですね。

先日の藤浪投手なんかはお手本にして欲しいものです。

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