【院試解説】平成30年度 東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 9A (2)
こんにちは やまたくです。
今日は院試解説として
平成30年度 東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 9A(2)
を解いていこうと思います。
著作権上の都合から、問題は大学ホームページのリンクからダウンロードしてください。
芳香族求核置換重合に関する問題
今回も前回に引き続き基礎的な問題だったので答えから先に示します。
下図の化学構造式で示される芳香族化合物は、芳香族求核置換重合のモノマーとして用いられる. この芳香族化合物の中のXとして、(オ:カルボニル)基や(カ:スルホニル)基を有するモノマーと, ビスフェノール A のナトリウム塩を重縮合させると芳香族(キ:ポリエーテル)が生成する。しかしながら, 150 ºCの高温条件を要するため, (ク:エーテル交換)反応による副反応が起こって, 高分子量体は生じにくい. そこで, 下図のモノマーのクロロ基のオルト位に電子(ケ:求引)基であるニトロ基を導入すると, ニトロ基の(コ:共鳴)効果によってモノマーが活性化されるので, 重縮合は副反応を起こすことなく室温で進行し, 高分子量体の芳香族(キ:ポリエーテル)が生成する.
低分子の有機化学でも同じことが言えますが、芳香族ハロゲン化物は脂肪族ハロゲン化物に比べて圧倒的に求核置換反応が進行しにくいという性質があります。
これは、芳香環と直結しているハロゲンの非共有電子対が芳香環のπ電子と共鳴していることに加え、ハロゲンの強い電気陰性度による誘起効果でハロゲン-炭素結合が二重結合性を帯びていることに起因すると考えられています。
しかし、今回の問題でもあったように、ニトロ基のような強い電子求引性基が芳香環に導入されると、共鳴効果により求核置換反応が進行しやすくなります。また、カルボニル基やスルホニル基がポリエーテルの合成に利用されるのも電子求引性基であるためです。
意外と忘れがちですが、脱離するハロゲンに基づく芳香族ハロゲン化物の反応性はF > Cl > Br > I となります。
一方で脂肪族ハロゲン化物の脱離反応の反応性は I > Br > Cl > F となります。
これは、芳香族ハロゲン化物の脱離反応は付加-脱離機構で進行するため、求核剤の付加段階が律速になり、電気陰性度の高いハロゲンの方が反応が早くなることに起因しています。
終わりに
(1)に続き比較的優しい問題が続きましたね…
最後に、質問やコメントがあれば残していってもらえれば嬉しいです。
(この記事は100%合っていることを保証する解答ではないので間違いがあるかもしれません。もし間違い等があればコメントで教えて頂ければ幸いです)
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