【院試解説】令和元年度 東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 9B (2)
こんにちは やまたくです。
今日は院試解説として
令和元年度 東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 9B(2)
を解いていこうと思います。
著作権上の都合から、問題は大学ホームページのリンクからダウンロードしてください。
① 連鎖重合の重合開始剤
重合Fについて
アゾイソブチロニトリル (AIBN) は有名すぎるラジカル開始剤です。是非かけるようにしておきましょう
したがって重合Fはラジカル重合のイが正解となります。
重合Gについて
三フッ化ホウ素が開始剤として用いられています。高校段階では習いませんが、大学に入ると、ホウ素の空軌道がルイス酸として働くことが知られています。
酸を開始剤に用いる重合様式はカチオン重合ですので答えはウとなります。
最後に重合Hについて
ナトリウムナフタレニドは不安定な化合物で高い求核性を有しています。そのため、一般にアニオン重合生の低いαメチルスチレンでも重合が可能になります。また、ナトリウムナフタレンを開始剤として用いた場合にはナフタレンは分子中には導入されないという特徴を持っています。
したがって正解はアニオン重合のエとなります。
② ポリマーの特徴
重合Fについて
重合Fは水中に分散させた液滴中というキーワードで乳化重合であるということが読み取れます。
乳化重合では反応溶液の攪拌速度や溶液の温度を制御することで簡単に粒子状のポリマーを合成することができます。
したがって正解はキとなります。
重合Gについて
まずカチオン重合そのものが連鎖移動反応がしやすく高重合度のポリマーを得ることが難しいということを覚えておくといいでしょう。特に、今回の問題のように側鎖にメチル基を有するような場合はプロトンが容易に引き抜かれてしまいます。
したがって正解はクとなります。
最後に重合Hについて
重合Hで得られるポリマーはポリαメチルスチレンですが、このポリマーは加熱分解した際、安定な第三級炭素を生成するので天井温度が低いことが知られています。
したがって正解はカとなります
③ トルエンへの連鎖移動反応
この反応の答えは下記のようになります。
これはベンジルラジカルがベンゼン環の共鳴効果により安定であることに起因する反応です。ラジカル重合では分子量低下の要因となるので注意が必要となります。
(なお、モノマーの種類にもよりますがベンジルラジカルから再開始反応が生じることも知られています。)
終わりに
今回はかなり簡単な問題だったので入試本番では5~10分程度で解きたかったないようなのではないかと思われます。
同じモノマーでも重合方法によって得られる物質の性状が異なるのが高分子合成の面白いところなので是非調べて見てください。
質問やコメントがあれば残していってもらえれば嬉しいです。
(この記事は100%合っていることを保証する解答ではないので間違いがあるかもしれません。もし間違い等があればコメントで教えて頂ければ幸いです)