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青柳晃洋が乗り越えなければならない壁

初めまして、Taroyt(たろいと)と申します。
前々からなんとなくnoteで記事を書いてみたいと思っていたのですが、私は特定の何かに詳しいわけではなく、唯一詳しいと言える野球でも私よりもっと詳しい方々がおられるので、執筆のきっかけがありませんでした。
そんな時に飛び込んできたのが、NPBの阪神タイガースからポスティングシステムを利用してMLB移籍を目指していた青柳晃洋投手がフィリーズ入りするというニュースです。

フィリーズはアメリカ国内ではトップクラスの人気を誇るチームですが、過去に在籍した日本人選手は田口壮さんと井口資仁さんの二名のみ。アメリカのプロスポーツについて詳しくない方は、そもそもフィラデルフィアがどこにあるのかすらご存知ないかもしれません。

そんなフィリーズについての解説を長々やっていると何万文字書くことになるか分からないので(推敲能力の皆無な私ではなおさら)、それらは他の方々にお任せして(フィリーズについての情報はペンさんがおすすめです)、この記事では青柳選手がメジャーリーグの投手として本拠地Citizens Bank Parkで投げるまでにどれほどの壁を乗り越えていかなければならないのかを解説していこうと思います。フィリーズファンどころか、MLBファンならだれでも書けるような駄文なので、本当にMLBについて全く知らない!という方のみこの先に進んでいただければと思います。
(本稿は10000文字程度です。飛ばしても大筋の理解には問題ない部分が複数あるので、時間のない方は飛ばしてください。該当する部分では案内が入ります。全て飛ばせば4000文字近く減ります。)

満員の本拠地Citizens Bank Park。公式ホームページより

1. フィリーズってどんなチーム?

まず最初に、簡単にフィリーズについて説明します。フィリーズは昨年13年ぶりに地区優勝を果たしましたが、メッツとの地区シリーズで敗退しました。シーズン中の投手成績は防御率、xFIP共に3.86、K%8.94で、fWAR21.8は全体2位の数字。その他の数字も軒並み高水準です。これにリーグ5位の784得点を叩き出した打線が加わることで、NL2位の95勝、勝率.586の成績を残しました。

フィリーズは時に脳筋集団とも呼ばれ(そう呼んでいるのは某MLB Youtuberだけな気もしますが)、強力打線で相手を破壊し、その代償として得たむごい守備で大量失点を喫するチームというイメージを持っている人も多いです。実際、一昨年のフィリーズはFANGRAPHS算出の守備指標において、エラー抑止以外の全てでマイナスを叩き出しました。ところが、昨年はそれが一転、守備で大きなマイナスを叩き出していたファーストのRhys Hoskinsがブルワーズへ移籍し、外野手のKyle SchwarberがフルタイムDHへ移行したこと、代わりにファーストの守備についたBryce Harper、センターJohan Rojasがプラスを生み出したことで、DRSやOAAなどの主要守備指標が好転、平均的な守備力を手に入れました。一昨年まで棒立ち同然だったサードAlec Bohmの守備が急成長したのも大きいです。ここに後述する投手陣の活躍が加わった結果、昨年の地区優勝に繋がったわけですね。

2. 青柳晃洋は先発としてMLBチームに加われるのか?

ここからは本題に入っていきます。はっきり言うと、来年青柳選手がフィリーズで先発投手として投げることは99.9%ありません。決して、私が読売ジャイアンツのファンであるためにライバル球団出身の選手を貶めたいわけではなく、フィリーズで先発の機会を得ることはそれほど困難な道だからです。

フィリーズは既に、ローテーション投手が揃ってしまっています。MLBのローテーションはごく少数の特殊なチームを除き5人ローテで、フィリーズも例に漏れず5人ローテを採用しています。本章では、フィリーズの先発陣について簡単に解説していきます。少し長くなりますが、お付き合いください。各選手の詳しい情報には興味がない、という方は目次からに飛んでいただき、すぐ上にあるまとめを読んでいただければ大体理解できます。

1 Zack Wheeler

まずはエースのZack Wheelerです。今年35歳になるベテラン右腕で、オールスター2回、サイ・ヤング賞投票では今年を含めて2回、2位を獲得しています。近年は負傷離脱も少なく、フィリーズに移籍してからの5年間で200イニングを2回、200奪三振を3回記録しています。特に昨年は圧巻の成績で、32試合に先発し200イニングを投げ16勝7敗、防御率2.57でrWAR6.1を記録。MLB Networkのパワーランキングでは投手三冠を達成したChris SaleTarik Skubalを差し置いてトップに立ちました。また、彼には頭髪あるものが足りておらず、青柳選手との共通点もあります。

2 Aaron Nola

Aaron Nolaも、Wheelerと並んで二大エースと称される投手です。球速はそこまでですが高い奪三振能力を誇り、K%9.87は歴代14位、現役10位を誇ります。大きく鋭く曲がるナックルカーブは彼のマネーピッチであり、投球の32.9%を占めています。昨年は33試合に先発し14勝8敗、199回1/3で197奪三振。例年より奪三振は控えめでしたが、コロナによる短縮シーズンの2020年を除き、5シーズン連続で200奪三振を達成していました。彼の最も優れた点はその耐久性で、こちらも2020年を除けば6年連続で30試合以上登板しています。

3 Cristopher Sanchez

Cristopher Sanchezはフィリーズの左腕エースともいえる投手です。実に15回、MLBとマイナーを行き来した苦労人がついに覚醒、オールスターにも選ばれ、サイ・ヤング賞投票でも得票しました。基本的には打たせて取る投手ですが、大事な場面ではしっかり三振を取り、必ず試合を作ります。打球管理も完璧で、16先発終了時点での被弾はなんと1本。初のフルシーズンでの疲労からか後半戦は被弾も増え、最終的には11被弾しましたが、2完投(うち一回は完封)を含む181回2/3を投げ、防御率3.32の成績でした。

この三人は来年も確実にローテを回します。ここから紹介する選手は、確実にローテを回すとは限らない選手です。

4 Ranger Suarez

Ranger Suarezはベネズエラ出身で29歳のサウスポー。彼も普通ならば確実にローテーションを回してくれる投手なのですが、いくつか懸念点があります。昨年前半、彼は絶好調で防御率は1点台、同じく当時無双していたカブスの今永昇太と並んでサイ・ヤング賞候補の一人でした。しかしオールスター前に成績が下降し始め、腰のケガでIL入りします。復帰後も彼は本来の投球ができず、QS(クオリティースタート、6回3失点以内)すら一度もできないままシーズンを終えてしまいました。FAイヤーの彼はオフに敏腕代理人のScott Boras氏と契約しており、契約延長が困難であるため、今オフ、もしくはシーズン中にトレードで利確される可能性があります。
彼の懸念点は2つあり、1つは昨年前半ほどまでは言わずとも、本来の調子を取り戻すことができるか。もう1つはトレードで移籍する可能性があるということです。現状、彼をトレードしてまで獲得したい選手はいないため、オフに移籍する可能性は低いですし、シーズン中もポストシーズンを狙える状況ならトレードはしないでしょう。彼がシーズン中にトレードされる場合は、成績を落としリリーフに回されている可能性が高いですが、価値を落とした状態でトレードするくらいならQOを出してドラフト指名権を貰えた方がいいので、おそらく彼はトレードされないと思います。

5 Jesus Luzardo

Jesus Luzardoは今オフ、二人の有望株と引き換えにマーリンズから獲得した選手で、昨年不在だったローテ5人目の最有力候補です。昨年は怪我の影響で12登板、防御率5点台に終わりましたが、2023年には178回2/3で208奪三振と素晴らしい結果を残し、マーリンズのプレーオフ進出に貢献しました。復活を遂げて2023年のようなパフォーマンスを見せれば、ローテーションの3番手、または4番手を担う可能性もあります。

6 Andrew Painter

Andrew Painterは2021年のドラフト1巡目、全体13位で指名された選手です。当時の高校生右腕の中ではJackson Jobeに次ぐ評価を受けていましたが、彼のほうが上だと評価していた方も一定数いたようです。スーパー高校生で、マイナーリーグでも敵なし。AAまで一瞬で駆け上がりましたが、2023年の開幕前にトミー・ジョン手術を受けることになり、2023・24年を全休。NPBファンの方ならば、2023年ドラフト1位で大阪桐蔭高校から福岡ソフトバンクホークスに入団した前田悠伍投手をイメージすれば、彼のポテンシャルを想像しやすいかもしれません。
そんな彼ですが、シーズンオフのAFLで復帰、圧巻の投球を見せました。彼の魅力はその完成度。2022年の高卒1年目時点で複数の変化球を適切にコントロールできており、球速は100マイルを超えます。今年中のデビューが予定されており、デビューすれば新人王投票に絡むことは確実、将来のサイ・ヤング賞候補です。

本章のまとめに入ります。上記の6人が来季主に先発を担う面々ですが、彼ら以外にも昨季スプリングトレーニングで頭角を現したMichael Mercadoを筆頭に、Tyler PhillipsSeth Johnsonなどのデビューして間もない投手たちが先発投手の座を狙っており、6人のうち誰かが欠けた場合は彼らが優先して起用されるでしょう。若手以外にも、2023年に15勝を上げたTaijuan Walkerの復活や、現在FAになっているSpencer Turnbullとの再契約もあるかもしれません。詳しくは後述しますが、青柳選手がこれらの選手より優先されることは、余程のことがない限りありえません。もし今年、青柳選手がMLBで先発として投げているならば、フィリーズは怪我人続出でとんでもない惨状である可能性が高いです。

3. 先発は厳しい。ならリリーフなら?

青柳選手が先発投手としてフィリーズで投げるのは難しいということは理解していただけたかと思います。では、リリーフとしてはどうでしょうか。結論から言うと、青柳選手が今年リリーフとしてMLBで投げる可能性はあると思います。それでも、確率は非常に低いです。これも後述する理由に起因します。

健康なら完璧といってよい先発陣と違い、フィリーズのリリーフ陣はいくつか問題を抱えています。昨年のリリーフfWARは5.8でMLB6位ですが、勝ちパターンとその他には差があります。また昨年勝ちパターンを務めたJeff HoffmanCarlos EstevezがFAとなり、Hoffmanはブルージェイスと契約、Estevezと再契約に向けた交渉が行われているという情報もなく、移籍すると考えたほうがよいでしょう。このように、フィリーズのリリーフ陣には計算できる選手が少なく、割って入る余地があります。

先発経験の豊富な青柳選手がリリーフとして昇格する場合、まずは負けている試合のロングリリーフとして投げることになるでしょう。来年、最初にその立ち位置で投げるのはブルワーズからFAとなったJoe Rossになります。次点には昨年ホワイトソックスから獲得したTanner Banks。前章のまとめで名前を挙げた先発候補たちも、場合によってはここに加わります。負け試合を主に投げる投手は彼ら以外にも、23年WBCベネズエラ代表のJose RuizMax Lazarらもいます。基本的には、彼らのうち複数人が怪我をしてどうしようもない、もしくは登板するたびに打たれて我慢の限界、という状態になれば、マイナーでの成績次第で青柳選手が上に呼ばれることになると思います。

上記の投手たち以外にも、勝ちパターンの投手にJose AlvaradoMatt Strahm、 Jordan Romano、 Orion Kerkeringなどがいます。彼らは青柳選手の動きには基本的に関係がないので、興味を持った方は調べてみてください。特にAlvaradoはファストボール系しか投げない面白い投手なので、青柳選手をきっかけにフィリーズに興味を持った方はぜひ。

4. いくつもの壁を乗り越えて… なおも立ちはだかる"制度"の壁とフィリーズの思惑

マイナーで結果を残し、トップチームでは怪我人が続出。いよいよ名前が呼ばれる時…。
とはいかないのがMLBです。ここからが最も大きい壁。MLBの制度が最大の壁となって立ちはだかります。

それっぽい画像がなかった。あったけど、権利がありそうなものばかり。仕方なく雑コラを投下。

制度の壁

青柳選手はマイナー契約であるため、まずはメジャーリーグの40人枠に入らなければならないのですが、そのためには一人の選手を枠から外さなければなりません。NPBのように自由に二軍に選手を送れるわけではなく、枠から外した場合はより良い立場を保証してくれる他球団に選手が流出する可能性があるのです。MLBで試合に出場するには、そこからさらに26人枠に入る必要があります。26人枠と40人枠の行き来も、シーズン中は制限されます。詳しく説明すると長くなるので、気になった方はマイナーオプションDFAについて調べていただければと思います。本稿では、「この選手不調だから、マイナー契約の選手と入れ替えたろ!」という動きはすごく難しい、ということだけ理解していただければ大丈夫です。

上記の理由から、不調の選手と入れ替わるというシナリオはめったなことがない限りは非現実的です。そのため、青柳選手がメジャーリーグの舞台で投げるためには、怪我人が複数出る必要があります。
MLBには故障者リスト(IL)が存在し、怪我の重さ、復帰予定日などで10日、15日、60日の3種類があります。この中で、10日と15日に登録された選手は26人枠から除外され、40人枠内の選手と交換できます。しかし、40人枠外の選手と交換することはできません。一方で、60日ILは40人枠から選手が外れるため、一人マイナーから40人枠に格上げとなります。青柳選手にとって最も大きなチャンスはここです。それでも基本的には元々40人枠にいた選手が上に呼ばれるので、青柳選手がMLBで試合に出るには、
投手が一人60日ILに入り、さらにそこから投手に怪我人が出る
というイベントが発生する必要があります。

無論、青柳選手が誰かひとりの選手を放出するリスクを負ってでも40人枠に入れたい、と思わせるような圧倒的な成績をマイナーで残せば、10日/15日IL(10日は野手、15日は投手か二刀流選手と決まっているので、実質的には15日ILのみです)でも交換要員になることができるので、より可能性は高まります。そこで結果を残せば、もしかするとトップチームに残れるかもしれません。

フィリーズの思惑

長々と書いてきましたが、もっと簡単に彼がMLBで投げる方法があります。それはトレードされることです。投手が不足しているチームへとトレードされれば、より出場機会を貰える可能性が高まります。勝負期のチームであるフィリーズの場合、トレード相手は確実にMLBレベルの選手なので、トレード先で空いた40人枠内に入れる、もしくはいきなり26人枠に入れる可能性もあります。しかし、彼がトレードに出されるとは考えにくいです。それは、フィリーズが彼を獲得した目的が関係してきます。

(注)以降の記述には、私の憶測が多分に含まれます。事実と異なる場合があり、阪神ファン、または個人的に青柳選手を応援している方は不快に思われる表現が用いられている可能性があります。ストレスを感じやすい方、選手に思い入れがある方はお手数ですが記事の最初に戻っていただき、目次から5を選択してください。そうでない方はそのまま進んでいただいて問題ありません。

Kyle SchwarberプロデュースのSchwarburger。よだれが止まりません。(出典
売り上げの一部は救急救命士・警察官などの「ファーストレスポンダー」への
支援に使われています。
Citizens Bank Parkへ立ち寄った際はぜひ。

基本的に、ポスティングで獲得した選手を即座にトレードに出すようなことはしません。争奪戦を制し、大枚をはたいて獲得した選手を即転売、なんて意味不明です。というか、どこも引き取ってくれません。ただ、昨年パドレスからマーリンズへトレードされた高佑錫のように、短い期間、少ない金額で契約された選手であればトレードの可能性があります。ただ、私は余程の対価を得られない限り、フィリーズが青柳選手をトレードすることはないと思います。理由はフィリーズが青柳選手を獲得した目的にあります。

フィリーズは最近、様々な国に食指を伸ばしており、イタリアやオーストラリア、台湾などから選手を獲得しています。大谷翔平選手からMLBに興味を持ち、ドジャースに移籍した今でもエンゼルスファンだ、という方は昨年後半戦でデビューし初勝利を挙げたSammuel Aldegheriを覚えているでしょう。彼はCarlos Estevezとのトレードでエンゼルスに加入した選手のひとりで、イタリア出身です。フィリーズ傘下には台湾人の100マイル右腕、潘文輝が所属しており、トミー・ジョン手術のため直前で離脱しましたが、同国代表が優勝を果たした24年プレミア12のロースターにも入っていました。今年も中南米の選手に交じってイタリア人選手を獲得しており、今後の日本人有力選手獲得のため、日本市場を開拓したいという思いがフィリーズにあるのは確実です(日本市場への興味は複数の報道で語られています)。

もちろん、ベストなのは佐々木朗希選手の獲得だったでしょうが、早々に書類選考で落とされ断られてしまったため、青柳選手に白羽の矢が立ちました。ならば、より若くポテンシャルのある小笠原慎之介選手を獲得したほうが良かったのでは?と思われた方もいるかもしれませんが、現地報道を見る限り小笠原選手はメジャー契約に加え、少ないとは言い難い金額を支払うことになりそうなので、よりリスクの少ない青柳選手を獲得したというわけです。フィリーズが青柳選手に全く期待していないと言っているわけではなく、改良する見込みがあって獲得しているとは思いますが、上記の思惑が多分に入った獲得であることは間違いないと思います。そのため、フィリーズが青柳選手をすぐトレードしてしまうと、日本人選手からの心象を悪くしてしまう可能性があり、彼を雑に扱うことはできないはずです。

以上の経緯から、青柳選手は少なくとも1年間はフィリーズの一員として活動すると思います。契約の詳細がまだ出ていないので、もしかすると契約を破棄して他球団との契約を模索できる条項が織り込まれるかもしれませんが、現状は何とも言えません。

5. 結章

ここまで、青柳選手がMLBの舞台で投げるまでにどのような道のりを歩むことになるのかについて解説してきました。
本稿の内容を簡単に要約すると、

・今年、フィリーズの一員としてトップチームで青柳選手が投げる確率は非常に低く、多くの怪我人が発生する特殊な状況下である必要がある
・その状況になったとしても、マイナーで圧倒的な成績を残せなければチャンスは巡ってこない
・トレードされればチャンスを貰える可能性が高まるが、獲得の背景からして考えづらい


こんな感じです。

本稿の内容はあくまでスプリングトレーニングで結果を残せなかった場合の話で、スプリングトレーニングで無双すれば開幕から40人ロースター入りする可能性もあります。
ここからは、備考的なおまけの話をしていきます。もう少しお付き合いください。

30歳を超えて渡米するということ

まず、フィリーズが青柳選手を雑に扱うことはない、というのは前述の通りですが、30歳を超え、衰えてから渡米したマイナーリーガーを特別扱いするのは難しいです。元々いた選手たちのプライドもあります。青柳選手がどの程度の生活を想定して渡米したかは分かりませんが、フィリーズとしては帰国して悪評をばらまかれるのは避けたいはず(※青柳選手がそういう性格だと言っているわけではないです!)。通訳などスタッフの同行、栄養士等による食事支援のような最低限のこと(あくまでもこれは一例です。これに関して私は何も知らないし情報も出ていないので、もしかしたら何もないかもしれません。もしそうなら獲得意図からして少し疑問ですが…)ではありますが、一般的なマイナーリーガーとは差別化されるはずです。
本稿の中で何度か「圧倒的な成績」という言葉を使いましたが、これは前提の話で、もし青柳選手がとんでもない成績を残しても、MLBに昇格する可能性は低いです。その理由とは…

フィリーズは青柳選手には合わないかもしれないんです。

いまさら何を言い出すんだと思われるかもしれませんが、フィリーズは青柳選手にはあまり合っていません。守備が良くないというだけで嫌な予感がした方もいるかもしれませんが、一番の問題は本拠地Citizens Bank Parkの形状にあります。

wikipediaより。古い画像ばかりで、かろうじて信頼できる画像がこれしかなかった。

右中間が狭いですね。

次に、ぼーのさんが作成されたNPB版Baseball Savantで、昨年の青柳選手のデータを見てみましょう。

出典

左にめちゃくちゃ弱いです。

もうお分かりかと思いますが、球場と青柳選手の相性が絶望的に悪いんです。レフトとライトなら、ライトに守備の良い選手を配置するほうが良いことは多くの人がご存知だと思います。NPBでもMLBでもほとんどのチームがそうしています。しかし、フィリーズはこの球場の形からか、昨年は守備が比較的上手なBrandon Marshがレフトを守り、あまり守備が良くなく、肩も弱いNick Castellanosがライトを守っていました。

左打者に弱い青柳選手とライト側の狭いCitizens Bank Parkが融合すると、とんでもないことが起きてしまう可能性があります。幸いにもセカンドのBryson StottとファーストのBryce Harperは守備が上手なので、2022年の青柳選手が戻ってきてゴロを量産すれば、MLBでも十分通用するでしょう。それが叶わなかったとしても、青柳選手の独特なリリースポイントはいくらMLBの打者であろうと慣れるまで対処が難しく、しばらくの間は活躍してくれるに違いありません。

※追記
私はもっと左翼と右翼で差があるイメージを持っていたのですが、調べてみたらそこまででした。せっかく書いたので残しておきますが、こいつ大げさだな、くらいに思っておいてください。ただし、成績含め少なからず影響は出ると思われます。3Aで青柳選手がプレーすることになるLehigh Valley IronPigsの本拠地、Coca-Cola ParkはCitizens Bank Parkより更に右翼側が狭いため、3Aで無双できればトップチームに呼ばれる可能性は十分あると思います。

2022年の青柳選手。化け物です。(出典

おわりに

ここまでお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
青柳選手のアメリカでの生活が、より良いものになることを願っています。日本人選手が赤いピンストライプのユニフォームを着ている姿を見ることができれば、それ以上に喜ばしいことはありません(欲を言えば、良い噂を流していただき、これから渡米する選手を一人でも多く引っ張ってきてください!)
本稿がNPBファンの方がフィリーズ、ひいてはMLBへの理解を深めることに少しでも貢献できれば幸いです。
かなり長くなってしまい申し訳ありません。次の記事を執筆することがあるかは不明ですが、また記事をアップすることがあれば読んでいただけると嬉しいです。

アメリカ独立宣言の街であるフィラデルフィア。
Liberty Bellを模した巨大な鐘がフィリーズの選手のホームランに呼応し音色を奏でます。

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