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令和7年初春文楽公演

2025/01/03(初日)所見。敬称略。記事冒頭の写真は今月の芝居絵(五世長谷川貞信筆)。


正月初日の国立文楽劇場
正月恒例鏡開きを待つ人々
和生師匠による鏡開き
「本日初日」
正月恒例の鏡餅・巳字・にらみ鯛

第一部

大入札止。新版歌祭文。座摩社。勘市、文昇、簑一郎、紋秀を中心に人形は丁寧さが目立つ。清友は正月らしく華やか。三輪、南都、咲寿が安定。野崎村。祭文聴かせる清志郎、希は小助を聴かせ、語りに濃淡が出て、立体的に。「女房ぢゃもの」が一品なのは織太夫、藤蔵は語りに寄添い奥行を与える。高い集中の清介は最高の合で引っ張る。若は久作得意、おみつのクドキは一品。名曲・野崎村が新春を寿ぐ。細かく表現清十郎、気品漂う可憐な紋臣、勘壽が締める。

第二部

八段目。和生が居方の美しさと所作の滑らかさで魅せれば、簑紫郎は視線美と身の軽さで応える。和生はもの憂さ、武家の格調、娘への共感を節々で表現。清治の一撥の奥行と時代の手堅さが全体を統率。呂勢の音曲が最大限生きる。碩、清馗が安定。今年は、初春-嫁入、二月-苧環、四月五月-初音と、上半期で三大道行すべてがかかる。今月の八段目はその最初として堂々たる好演。和生-簑紫郎-呂勢-清治がそれぞれの意図を意識しながら、補い合いながら、反応しながら高める。

劇場ロビー2階

九段目。千歳は戸無瀬とお石の問答をその緊迫さで聴かせ、「鳥類でさへ」との対比を浮き彫りにする。富助が対旋律に。一輔が出色、芯あるお石を好演。勘十郎が表現したのは「人間・本蔵」。藤は語分けの妙で大きく語る。燕三が線を見せ物語の輪郭を際立たせる。

第三部

本朝廿四孝。道行。2ヶ月連続の團七-團吾、今日は両人好調。希、亘、安定。丁寧な勘彌。謙信館。玉佳が状況の深刻さを伝える。靖、小住安定。節々に師匠が宿る簑二郎。錣は濡衣、蓑作、八重垣姫を的確に語分け、濡衣と八重垣姫の悲哀の違いを表出。宗助は濡衣と八重垣姫それぞれの悲嘆を表現。四段目の手堅さを体現する錦糸。

劇場ロビー2階
「文楽の狐」
「文楽の狐」解説

総評

野崎村・道行(八段目)・狐火と、三味線の名曲揃いで新春を寿ぐ。三味線部の充実が窺える。五月まで名曲が揃うので楽しみだ。その中で、八段目と女夫丸で同曲が続いた番組は残念。太夫部は切語り、織・呂勢、靖の充実はもちろんのこと、三輪・南都・咲寿・亘の安定も喜ばしい(南都は一日中ロビーで勉強会の宣伝をしていた)。なお織・藤蔵・芳穂は非常に短場であった。織-藤蔵、若-清介、錣に声がかかる。人形は正月初日らしく皆丁寧。顕彰記念の和生はさることながら、一輔・簑紫郎が出色で華やか。1部2部は久しぶりの大入。正月の活気が戻ってきた。

公演概要は以下を参照.
https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/bunraku/2024/202501bunraku/

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