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日本初! 愛媛県で再エネの地産地消と電力DX化の成功モデルを構築【東芝インフラシステムズ株式会社|事業紹介】
2016年の電力全面自由化以降、家庭や企業など全ての消費者が、電力会社や料金メニュー、サービスを自由に選択できるようになった。しかし現在の愛媛県では、発電設備の不足や発電・消費のマッチング不足等により、電気収支が赤字となっている。また、再生可能エネルギーの利用や省エネ・創エネ設備の導入など、ゼロカーボンの実現に向けた努力は社会全体に要請されている課題だ。
それらの問題を解決するべく、東芝インフラシステムズ株式会社では、デジタル技術を活用しながら再生可能エネルギーの地産地消に取り組むシステムを開発した。
愛媛県における電気収支の課題
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注1)「石炭・原油・天然ガス」のエネルギー収支は、本DBの「鉱業」の純移輸出に全国平均の「鉱業」に占める「石炭・原油・天然ガス」の純移輸出の割合を乗じることで推計
注2)エネルギー収支には原材料利用や本社・営業所等の活動(=非エネルギー)は含まれない(Ver5.0までは含まれる)「国民経済計算」「県民経済計算」「経済センサス」「産業連関表」等より環境省・地域経済循環分析自動作成ツール2018年版Ver.6.0にて作成
現在、愛媛県では県外への電力販売よりも県外からの電力購入が多く、電気収支が559億円もの赤字となっている。その理由として、県内での発電量が需要量に対して不足していること、また県内で発電した電力が消費側とマッチングされておらず、うまく県内で消費できていないことが考えられる。
一方で、県内の企業や消費者は進む物価高・なかなか上がらない収入に苦しむなか、さらに電気料金の高騰に苦慮している。
また、電力に関しては、ゼロカーボンの実現に向けた努力も社会的な課題だ。近年、地球温暖化が世界的な問題となっている。2015年の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において採択された「パリ協定」では、世界の平均気温上昇を産業革命以前と比較して2℃より十分低く抑え、1.5℃に抑える努力を追求することが掲げられた。それを受け、日本政府は2020年10月、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「2050年カーボンニュートラル」、つまり脱炭素社会の実現を目指すと宣言した。
これを実現するためには、自治体や企業など、社会全体が従来の火力発電を中心とした化石エネルギーに頼るのではなく、太陽光発電やバイオマス発電などの自然環境を活かした再生可能エネルギー(再エネ)を積極的に利用することで、CO2排出量を削減する努力が必要となる。
再エネを蓄電しEV充電を行う「V2Xシステム」
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東芝インフラシステムズ株式会社の扱う「V2Xシステム マルチパワーコンディショナ」は、太陽光パネルで発電した電力を東芝製のリチウムイオン二次電池に蓄電し、電気自動車(EV)に充電する装置だ。太陽光パネル・蓄電池・EVを直流のまま接続するので、電力変換が少なく高効率。最大10台のEVを同時接続することができるため、市販のEV(60kWh搭載)を10台接続すれば、600kWhの電池として活用できる。
平常時には、太陽光発電電力のみでEVへ充電できるほか、EV含めてまるごと電池と考えれば、設備負荷の平準化や電力会社からの調整力電源としても利用できる。
一方、停電時や災害時には、EVをバックアップ電源として活用可能。水道ポンプやエアコンなど動力負荷も含め、一般的な避難所の3日間分の電源供給が可能であり、電気自動車にて他所へ運搬することもできる。地域防災ステーションとしての役割も期待できるのだ。
個人間の電力売買を実現する「P2P電力取引プラットフォーム」
そして今回のプロジェクトで注目すべきは、このシステムをPeer to Peer(P2P)*1プラットフォームと繋いだ点だ。
TRENDE株式会社のP2P電力取引プラットフォーム「trex(トレックス)」は、電力の個人間売買を実現するシステム。家屋に太陽光パネルを設置し、自宅で使用する電力を賄っている一般家庭では、晴れた昼間には一般家庭の使用量を上回る電力が発電されることが多い。その余剰電力は電力会社に買い取ってもらうことができるのだが、これを需給状況に応じた変動価格で売買できるのだ。
家庭や事業所ごとに設定されるAIを活用したエネルギー管理システム(電力売買エージェント)が、電力消費量と太陽光パネルの発電量予測に応じて電力を売買できる市場に、自動的に電力の買い注文・売り注文を出す。それを一定のアルゴリズムでマッチングさせ、取引が成立すれば送配電網を通じて電力の融通を実施するという仕組みだ。
*1 特定のサーバやクライアントに依存せず、ノードと呼ばれる各端末が対等に直接通信を行って取引等を実行する仕組み。
城下町型*2 P2Pを活用した電気の地産地消プロジェクト
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今回のプロジェクトでは、AI技術による蓄電システム最適制御サービスを提供しているグリッドシェアジャパン株式会社とも協力し、同社との契約がある四国地方の卒FIT*3一般家庭からモニターを募集。当該家庭からP2Pプラットフォームを通じて余剰電力を購入し、実装先の東芝EIコントロールシステム株式会社四国事業所に設置したV2Xシステムに蓄電するという流れを仮想的に実施。
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そこに繋ぐEVは、従業員の通勤車として利用。通勤は車を利用する距離がだいたい想定できるため、超長距離の移動だと充電が保つか不安なEVであっても運用しやすいのだ。出勤してきた従業員は、V2XシステムにEVを繋ぐ。するとそこで、EV内に残っている電気は放電され、社内で使用する電力として有効利用される。つまり、業務時間内はV2XシステムとEVが会社や工場の電源として活用されるのだ。そして退勤時には、再びEVがフル充電の状態になるように設定されている。
*2 V2Xシステムを設置した企業等を城、再エネ発電を行う住宅を町として城下町に見立て、企業と周辺住民を繋ぐことから。
*3 太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーで発電した余剰電力を電力会社が一定期間・固定価格で買い取ることを国が保証する「FIT制度」の、買取期間が終了すること。卒FIT後は買取価格が下がってしまうため、余剰電力の活用方法を見直す家庭も多い。
日本初「城下町型P2P×V2Xシステム」のメリット
●「電気の地産地消」が実現!
従来は愛媛県内の一般家庭で発電された再エネが県外へ売られたり、県内の企業がより安い電力を求めて県外で発電された電力を買ったりするなど、愛媛県としての電気収支は赤字となっていた。
しかし、このシステムによって県内で発電された再エネが県内の企業で使用されることにより、電力・資金の県外流出を止めることができ、再エネ電力と地域経済を循環させることができる。
●卒FIT家庭の売電収入UP
卒FITによって売電価格が下がった家庭では、需給状況に応じた変動価格で売電できるP2Pプラットフォームを活用したほうがより高い価格で売電できる。
●企業の電気料金DOWN
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P2Pプラットフォームを活用すれば、再生可能エネルギーで発電された電力を従来の電気料金よりも低価格で電力を購入することができると想定される。
また、V2Xシステムと日中非稼働のEVを電源として使用することで、業務に使用される電力をピークカット*4することができる。最大需要電力を抑えれば契約電力が下がり、基本料金の削減が可能となる。
●カーボンニュートラル*5の実現に貢献
化石エネルギーの代わりに再生可能エネルギーを利用することで、CO2を削減できる。
また、従来ガソリン車を利用していた通勤にEVを利用することで、走行時のCO2排出を削減できる。
*4 最も電気を使用する時間帯の使用電力量を削減すること。
*5 温室効果ガスを人為的に吸収もしくは除去していくことによって、実質的に排出量をゼロにすること。
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東芝EIコントロールシステム四国事業所でのプロジェクトでは、約1週間で早くも喜ばしい結果が得られた。12〜13時(太陽光発電のピーク時)にはP2Pの電気のみで工場を稼働できたほか、ほぼ待機電力のみになる休業日には、昼間はほとんどP2Pの電気のみで使用電力を賄えたという。
本プロジェクトを終えての結果と詳しいデータ分析は、実装報告にてレポートする。
城下町型P2Pモデルが目指す理想の未来
長年にわたって電力や水処理、交通などの社会の重要インフラを支える事業に携わってきた東芝グループは、「人と、地球の、明日のために。」を経営理念とし、カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミー*6の実現に貢献するべく様々な取り組みを行っている。
この「城下町型P2Pモデル」の目指す未来は、電力の地産地消と災害時のレジリエンスを同時に実現するコミュニティの形成だ。コミュニティの中で電力を循環させれば、地域の経済も活性化する。再エネを効率的に活用することは、地球環境にもやさしい。本プロジェクトは、一方が利益を得て他方が損をするのではなく、関わる全ての人の目的が達成され誰もが笑顔になる、そんな理想のコミュニティの創出を目指して実装・検証を重ねている。
*6 資源の投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を最大化することを目指す社会経済活動。資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等を目指す。
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