次世代Wi-Fiの活用で木材生産・流通に革新を【株式会社ジツタ】
県土面積の約7割を森林が占める愛媛県。ヒノキやスギの生産量は全国トップクラスで、愛媛ブランド材「媛(ひめ)すぎ・媛(ひめ)ひのき」も有する。量・質ともに高水準を誇る林業県だ。
しかし近年は「ウッドショック」など社会情勢の影響もあり、林業や木材界を取り巻く状況は刻々と変化しており、臨機応変な対応が求められる。木材生産・流通の安定化と効率化は急務といえるだろう。
「スマート林業」の実現に功績(チャレンジャー:株式会社ジツタ)
「株式会社ジツタ」は、林業や建設業界におけるICT技術活用を始めとし、測量、地理空間情報等に関する機器販売や保守サポート、関連ソフトウェア開発も手がけ、各種事業現場のニーズに則した数々のソリューション提供を行っている。ICTを駆使した「スマート林業」の実現への貢献度は高く、技術力と発想力で生み出す各種システムは森林組合や行政機関などで多数の稼働実績を持つ。
今回同社は林業界の問題解決に向け、実績あるソリューションに近年進歩・充実がめざましい通信環境の現状を加味した、新しいシステムを提案する。
情報共有の一貫性と即時性を追求(実装フィールド:久万高原町)
検証を行うフィールドは久万高原町。県内随一の林業地だ。森林資源の保護と担い手の育成、産業の効率化と活性化など、ICT導入も含むさまざまな方策で、従来から林業振興に積極的に取り組んでいる。
生産・流通現場の課題
木材の流通は、川上の生産現場である林業事業者から川下の建築業者に供給されるまでに、非常に多くの事業者を経由する。需要動向の情報が行き渡りにくく、タイムラグやニーズのミスマッチが多々発生している。
また近年、原木の生産現場では生産性向上のための高性能林業機械を導入している。機械の償却を行うために年間を通じて生産を行い、素材生産量が増加するも、市場では入荷の急増を受け入れられない事態も発生している。
さらに川中に位置する製材事業者でも、現場の情報が見えないため安定的な仕入ができず、入札による買い付けで在庫に余裕を持たせたことで、原木市場の在庫滞留が発生。これが原木市場入荷停止の原因の一つになっている。
同社はこの不透明さが引き起こす問題に着目した。
サプライチェーンで一貫した情報をリアルタイムに共有できれば、これらを解決へと導けるかもしれない。
通信網を活用した解決策
原木の生産量や搬出時期、径級(原木サイズによるクラス分け)を出荷時点でリアルタイムに知ることができれば、以降の各現場において工程の見通しが立ち、滞留や不足等の問題発生を阻止できる。
このリアルタイム監視の実現には、安定した通信環境が必須だ。これまで山間部ではそれが難しい状況にあった。しかし近年急速に通信環境の整備強化・充実が進んでいる。今回の検証においても実装地となるエリアをカバーする次世代Wi-Fiの通信網が整備された。
既に稼働実績のある同社のシステムや製品に加え、今回新たな機能開発も実施する。これらを使って必要な情報やデータを効率的に取得し、Wi-Fi通信でリアルタイムに各所で共有することで、全体フローの透明化と効率化を図る。
検証内容と期待効果
現地検証において各所で使用する装備と検証内容の概要は次の通り。
山土場や市場、組合事業所などにWEBカメラを設置し、モニターで状況をリアルタイムに監視できるようにする。
丸太の出荷・検収では、山土場で撮影された丸太の画像を森林組合事務所で受信し、「AI丸太画像アプリ」を使って検収を完了させる。組合から山土場に出向いて手検収を行う必要がなく、作業時間を削減することができる。
施業現場では、GNSS(測位衛星システム)による位置情報と作業進捗状況の把握を可能とし、こちらも現地確認作業時間の削減が図れる。
そして森林組合による流通や在庫などの全体指示管理においても、現場を含む各所のWEBカメラ映像を取得し「丸太在庫管理GISシステム」や「AI丸太画像認識システム」を使うことで、効率化を実現する。
これらの策が従来の現地手作業と比較してどのくらい効果があるか、所要時間や生産性向上率の数値比較、並びに画像認識システムにおける正確性の検証なども含め、実装プロジェクトを進行する。
今回効果を実証できれば、木材生産・流通の未来が大きく拓けるかもしれない。システムの県内展開、全国展開も見据えた本検証で、国産材の安定供給に寄与する木材流通システム構築を目指す。
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