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実装フィールドを拡大し畜産業界の生産性を高めるシステムを構築!【株式会社ゆうぼく|事業紹介・実装報告】

昨年度から、カメラとAI技術を活用した「牛の異常状態の検知システム」による生産性・収益性の向上によって、“儲かる畜産農業”の実現を目指す株式会社ゆうぼく。今年度は、昨年度も試験導入農場としていた自社農場に加え、今治市の「和牛 新(新開農場)」と愛南町の「池田牧場」を実装フィールドとして、システムの実装展開・検証を行った。


肉用肥育牛における課題解決に向けた挑戦

■課題1:夜間の事故死が一定確率で発生する ⇒死亡⽜の削減
・⽜の⾏動を⾃動監視し、異常時は⽣産者へアラートを発信することで事故を予防する
・売上⾼1%に相当する損失を削減する

■課題2:一人で100頭~150頭の牛を毎日確認しなければならない ⇒労⼒削減
・普段に加え、夜間や休⽇の⽜の監視をカメラに任せることで、監視の労⼒を削減する

■課題3:体調不良の牛を見落として死亡してしまうことがある ⇒⽜の管理の質向上
・クラウドデータベースを活⽤した⽜の管理を⾏って定量的な分析をスピーディに⾏い、⽇々の改善活動に繋げる

ゆうぼくは、上記のような肉用肥育牛における課題の解決策として、カメラで牛を監視して画像を定期記録し、AIにて異常を自動検知する「牛の異常状態の検知システム」の構築を進めている。昨年度の実装段階で、検知システムのベースとなる仕組みの構築は完了しており、今年度は自社農場以外の黒毛和牛のいる他の農場でα版を稼働させ、異常検出用の学習データを取得し、制度をさらに高めることを試みた。

【対象農場】
●ゆうぼく(西予市宇和町)
肥育頭数:交雑種300頭乳⽤種去勢300頭計600頭(愛媛県の⽣産頭数の6%を占める、県内有数規模)
⽣産体制:牧場スタッフ全員が⾮家族の企業型営農(8~17時の定時業務)
売上規模:1億5000万円
※起⽴困難と思われる死亡事故で年間200万円以上の損失(売上の1.5%相当)が発生

●和牛新(今治市野間)
肥育頭数:⿊⽑和⽜200頭(現在400頭規模に増頭中)
⽣産体制:個⼈事業の家族営農
対象拠点:2拠点の⽣産を⾏っており、今回は無⼈になる時間が多い拠点を対象とする。

●池田牧場(南宇和郡愛南町)
肥育頭数:黒毛和牛繁殖用50頭、黒毛和牛素牛育成30頭、黒毛和牛肥育30頭
⽣産体制:個⼈事業の家族営農

事故発生によるシステム精度の向上

ゆうぼくが開発を進めるシステムは、姿勢・時間の観点から「起立困難事故」の検知を行う。カメラに映る牛の異常を検知すると、サイボウズ社が提供する「kintone」のクラウドデータベースに登録され、モバイル端末へアラート(プッシュ通知)が発信される。そしてアラートに気づかず一定時間経過すると、アラートアプリ(CattLook Alert)から強制的にアラートが発信されるという仕組みである。これにより、「起立困難事故」に対処することが可能となる。

昨年度のプロジェクト期間中は、実際に「起立困難事故」が発生しなかったため、疑似起立困難の画像を用いての学習となった他、異常に関しては未だ誤検知が多い状況にあった。しかし今年度は、実装先の2カ所で起立困難状態に陥った牛の姿勢を記録することができた。その結果、AIに学習させることができ 、サンプル数はまだ少ないものの実際に検知を実現した 。

また、カメラでデータ取得を継続した結果、⽜の夜間の⾏動特性や体調不良⽜の⾏動特性等、当初想定していなかったデータが収集できた。それらのデータを、クラウドデータベースを使用して牛の管理に活用することが可能となった。牛の物体識別と姿勢検知の技術を発展させることで、起立困難のみならず、体調不良の牛の早期発見など管理に役立てられることが明らかとなったのである。

今年度の成果と、精度向上のための今後の展開

今年度は、リアルタイムで牛を認識する、姿勢を検知する、怪しい姿勢の場合アラートを発信するという機能は実現し、牛をデータで管理する仕組みも標準化して実装先で運用を開始した。よって、これらはパッケージとして展開可能なレベルに到達できたといえる。特にデータの管理の仕組みを、これらは牛の管理項目や分析グラフを導入時に個別にカスタマイズすることができるように整えられている。今後は、新たに導入農場を増やし、検知率の向上、検証を行なっていく必要がある。

さらに、畜産関係の協会が開催する会で紹介の場が設けられ、県内生産者への導入を推進。進捗状況や成果を共有し、AIによる牛監視に関心を持ってもらうことで畜産業のデジタル化を加速する。JA、金融機関、公的機関、及び生産者10社程度が参加し、取り組みを理解してもらうこと、そして、試験導入先を増やすことを目的とした。2回実施し、生産者に関しては5社の参加となった。

実装先には、起立困難検知の他、データ管理に関する使い方やデータ項目のニーズを聞き取り調整する。結果として継続して使ってもらえる仕組みを確立することが目標である。

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