愛媛の柑橘の栽培収益向上!ネットワークインフラ整備で地域課題を解決!【柑橘潅水制御デジタル化推進コンソーシアム|事業紹介】
近年「スマート農業」の展開が急がれている農業分野だが、ネットワークインフラが整備されていない生産現場が多く、デジタル技術を実装するためには、まず前段として「ネットワークインフラの整備」というハードルがある。
高級柑橘「真穴みかん」で知られる真穴エリアも同様で、県内でも積極的にデジタル技術を活用し検証を進めているのだが、リアス式海岸という地形柄、非常に電波が通りにくい環境にある。
そこで、日本のインターネット業界のパイオニア「株式会社インターネットイニシアティブ(以下:IIJ)」が、真穴エリアを対象に昨年度から実装を進める「株式会社アクト・ノード(以下:アクト・ノード)」と協力し、低コストかつ長距離通信が可能な無線通信技術(LPWA)を活用した地域課題を解決する新規プロジェクトをスタートした!
真穴エリアの水管理方法の課題
真穴エリアは240haの栽培面積を誇り、その9割がスプリンクラー灌水を行っている。これまで、農地を12ブロックに分け、ブロック単位での制御により南予用水から灌水を行ってきた。柑橘栽培において、水管理(灌水)が品質や収量に大きな影響を与えるといわれている。土壌が乾けば乾くほど果樹に水ストレスがかかり糖度があがる、それに反しストレスがかかりすぎると落葉し、収量が減ってしまうというリスクがある。2021年には、前年の出荷額から4億円の差額が生まれたことも(真穴共選の「温州みかん」の出荷額)。
これほど重要な水管理だが、マイルドストレスを与えるための灌水タイミングに明確な指標はなく、生産者の勘と経験に頼ってしまっている状況だ。ブロック単位でまとめて灌水を行うスプリンクラー灌水の場合、園地によって土壌の乾きやすさが異なるため、灌水タイミングを決めることが非常に難しい。
このような“生産者の勘と経験に頼った栽培”を打破すべく、昨年度からアクト・ノードがマルドリ方式栽培の名人である黒田さんの栽培ノウハウを可視化する実装を進めており、ある程度の成果が見えてきた。
▼実装の様子はこちらをチェック
この栽培ノウハウの可視化をさらに広い範囲で進めるために、真穴エリア全体のデータを取得したい。そして、リアス式海岸という地形柄、電波が届きにくいというネットワークインフラの課題を解決したい。そこで、今年度はIIJとタッグを組み、新たに真穴エリア全域をカバーするネットワークインフラの整備と、その通信機器に土壌水分センサーを紐づけることで、多数の園地の土壌水分データの取得・可視化を実現させる。
真穴エリアの通信インフラを整え土壌水分量を可視化!
IIJはIoT事業を数年前から展開しているが、柑橘栽培に関するIoT導入は愛媛が初の試みとなる。今回通信機器として採用したのは、低コストかつ長距離通信が可能な無線通信技術(LPWA) のひとつ、「LoRaWAN®(ローラワン)」だ。
LoRaWAN®は、1本のアンテナで数km~30kmの範囲をカバーし、センサーデバイスは内蔵された電池により数年~10年連続稼働する。今回、LoRaWAN®基地局を灌水設備の制御室に計7台設置し、真穴共選全エリアをカバー。そのうち、乾燥状況が一様ではなく、灌水制御が難しいとされている2ブロックの園地に集中的に100本の土壌水分センサーを刺した。最終的には120本のセンサーを設置する予定だ。
100本のセンサーからは、既にデータ取得ができている状況で、データはクラウドアプリ「アクト・アップ」に集約される。生産者はパソコンやスマホから、いつでも・どこでも農地の土壌水分状況を確認することができる。
また、LoRaWAN®は規格に合った製品であれば何でも繋げることができる、用途が増えれば増えるほど効果を増幅させるネットワークだ。今回は、「土壌水分センサー」の他に、「気温センサー」や「鳥獣害罠検知センサー」でも評価する。
今後、防犯、防災、減災に繋がる、一次産業だけに限らない様々な地域課題を解決するための利用方法が想定されており、このネットワークが地区に導入されることで、IoTによる地域のデジタル化を加速可能なデジタル実装普及エリアへ進化する。
この事業に期待すること
■真穴共選・中井共選長
昨年度から実装しているアクト・ノードさんの事業により、ベテラン生産者である黒田さんの栽培ノウハウがデータ化され、いつどのような行動をすれば良いのか、以前よりも早く判断することができるようになりましたし、実際目に見える成果が出ていると感じています。今回IIJさんの技術が加わり、真穴エリア全体の土壌水分量を数値で可視化できるようになれば、もっと高品質・多収量を実現できるのではないかと、非常に期待しています。
愛媛が誇る高級柑橘「真穴みかん」。これまで人の経験と勘に頼り、判断してきた栽培方法から、2社が持つデジタル技術を実装することで、新たな栽培ノウハウ確立を目指している。“糖度が高くて高収量の高級柑橘”、これが実現できれば生産者の収益向上は間違いない。事業者と生産者の挑戦に引き続き注目したい。
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