AI機能を駆使した環境モニタリングシステムで農家の経営課題と労働環境を改善【株式会社セラク みどりクラウド事業部|事業紹介】
農業に関する知識が不十分な新規就農者や若手生産者はもちろん、ベテラン農家であっても、近年の異常気象や気候変動により収量の大幅な増減が発生するなど、経験と勘に頼った農業は難しくなっている。さらに、過酷な労働環境による熱中症や、発見しづらい病害虫の問題など、農家が抱えている課題は多い。そんな農家の課題を解決するべく開発されたのが、環境モニタリングシステム「みどりクラウド」。IoTデバイスによって、圃場の環境を計測し、クラウドへ蓄積。圃場環境の異常検知と通知を行うサービスだ。現在は全国にユーザー数2,000名、累計出荷台数も2,000台の実績があり、多くはイチゴ、トマト、キュウリ、ナスなどを栽培している農家、農業法人で利用されている。
この記事では「みどりクラウド」を提供している「株式会社セラク(以下:セラク)」による、愛媛県内の露地栽培サトイモとハウス栽培イチゴの圃場で勉強会と初期設置の模様も紹介する。
農家の課題解決の糸口に!環境モニタリングシステム「みどりクラウド」
温湿度や水分量などを計測するセンサーと連携させた「みどりボックス」を圃場内に設置するだけで、AIによる栽培サポートのサービスが簡単に受けられる「みどりクラウド」。電源を確保できない露地などにはオプションの太陽光パネルを設置し、そこから給電して使用することができ、短期間で実装が可能なシステムだ。パソコンやスマートフォンでリアルタイムに圃場の様子を確認でき、映像に限らず、気温、地温、湿度、日射量、CO2量、土壌水分、養液EC、水位、風向/風速など様々な環境データを計測するセンサーがバリエーション豊富に揃っている。
■ITの先進技術で“農業の育てる力”を支援
不確定な自然を相手に作物を育てる農業は高い専門性が求められる事業。セラクのみどりクラウド事業部は生産支援のサービスを提供している。生育環境や作業状況を計測、記録してデータ化することで、感覚に頼ってきた作業を見える化する。データをもとに判断したり、制御することで作物の生育や圃場の環境を最適化し、農作業の省力化や効率化を促し、生産性の向上だけでなく、高品質化、高付加価値化に貢献している。
■導入しやすいリーズナブルな運用費
「みどりクラウド」の運用費用は月額3,260円(クラウド利用料2,280円+通信料980円※圃場にWi-Fi環境が整備されていれば通信料は不要)とリーズナブル。圃場の温湿度管理や土壌水分管理など、これまでは経験を頼りに判断されていたものが、環境モニタリングが導入されることで、ノウハウがなく適切な判断や栽培管理が困難な新規就農者だけでなく、既存生産者にとっても不安定な収量の安定化や後継者への栽培ノウハウの伝承などにも役立てることができる。本事業で開発・実装予定の「栽培サポート」と「病害虫サポート」もさらに注目したいサービスと期待されている。
■「みどりクラウド」の既存機能
圃場環境を自動で計測し、登録している端末に2分おきに環境データが送信される「みどりクラウド」。その機能は、確認だけに留まらない。受信したデータはクラウド上に蓄積され、グラフ化され、そのデータを元に分析することで今後の栽培方法やタイミングの検討を行うことができる。また、アラート機能もあるため農作物への影響を未然に防ぐことができる。具体的には、AIによる温度や湿度管理による栽培サポートや病害虫対策、「PLANT DATA社」と協力しての光合成速度分析で、可販収量を安定させることを目的としている。36時間先の気象予測を通知することで、過酷な労働環境をサポートすることもできる。
必要に応じて設置する各種センサー。設置前にはそれぞれのセンサーの機能別に設置箇所のポイントなどもレクチャーされる。
圃場での勉強会を開催
愛媛県が誇る「愛」あるブランド産品「伊予美人」と「紅い雫」を栽培している圃場で「みどりクラウド」を実装するにあたり、導入検討中の関係者も交えた勉強会を開催。ハウスや露地など、耕地の種類に関係なく、導入可能な「みどりクラウド」のシステムだが、圃場の広さや環境によってセンサーを設置する場所はどこが良いか、また環境データの見方などをレクチャー。
農作業中に目にするモニタリング機器から確認できる熱中症アラートで労働環境をサポートできること、さらに圃場管理をサポートすることにより、推定では農薬の量や作業時間を約50%削減できる予定との説明に、参加者から多くの質問もあり、関心の高さが伺えた。
■11月29日開催
東温地区でイチゴ「紅い雫」を栽培している高須賀直登氏のビニールハウス内で行われた勉強会
■11月30日開催
サトイモ「伊予美人」を露地栽培している株式会社中温の圃場で行われた勉強会
サトイモ栽培に適した環境モニタリング機器を新たに開発。地上部と地下部の水分量を測定し、潅水(水やり)のタイミングをアプリ上で通知し、指標化できるため、安定した栽培が可能に。
■12月1日開催
経験値のない高設栽培イチゴのハウスを引き継いだマッセ農園での勉強会
今治市菊間町を中心に6000坪の圃場でキュウリやブロッコリー、花などを栽培している「マッセ農園」。高齢でもあった農家さんが栽培を断念したハウスを引き継いだばかり。もともとイチゴの栽培はしていたものの、高設栽培のイチゴは初めてとなる。
CO2の増減の変化など、実際のデータの見方など活用法も細かくレクチャー。
スマート農業実現へ寄せる期待
マッセ農園では農業経験の全くなかったスタッフが従事することも多い。今治市を中心に点在する数多くの圃場に担当責任者は置いているものの、栽培状況に合わせて、収穫のピークになるとその圃場に皆が集結することもあれば、普段は担当ではないスタッフが作業することもある。そんな状況だからこそ、データを活用したスマート農業の実現に期待を寄せている。遠隔地からでも的確な指示ができるスタイルは、休みがなかなか取れないイメージが強い農業の働き方改革にも繋がるはず。
事業への意気込み・期待すること
■株式会社セラク みどりクラウド事業部 担当者
農業はまさに職人の世界。しかし昨今の異常気象による農作物の不安定収量、想定外に発生してしまう病害虫の問題など、経験と勘で培ってきたノウハウだけでは対処できない課題も発生しています。「みどりクラウド」はリーズナブルな月額使用料で圃場の環境データを「見える化」できるので、新規就農者だけでなく、農業歴の長い方や農業法人などでも様々に活用していただけると思います。各種センサーは追加していけるので、初期費用は最小の設備でスタートし、状況に応じて追加カスタマイズしていけるのが当社の強み。有償対応にはなりますが、農業法人向けにデータ分析の上、マニュアル制作なども行っていますので気軽にご相談ください。
■マッセ農園 小泉祐輔代表
実家は建設業、自分自身は飲食業など異業種に携わっていたので、何も知識がないところから農業を初め、10年間突っ走ってきました。特にここ数年は「もうやれんようになったから、畑を引き継いで欲しい」という声を数多くいただき、今では6000坪の圃場で様々な作物を作っています。一緒に働く仲間も増えてきた今、「需要があるものを作れば、農業も儲かる」というコンセプトで第2フェーズへと進化していきたいと思っています。経験のなかった高設栽培のイチゴを育てるにあたり、様々なデータが取れることや、勉強会もあると聞いて、このプロジェクトに参加させてもらいました。例えば遠隔地にいても、圃場にいるスタッフに「少し温度を下げて」ではなく「温度を2度下げて」という具体的な指示が出せそうなので有効活用できそうです。今回導入するこのハウスのデータの分析結果を使いこなし、他の圃場での作業ノウハウにも充分活かしていけるのではないかと期待しています。
勉強会を開催した各圃場に「みどりクラウド」を導入し、これから実装化を進めていくセラク。環境データを分析し、栽培にどう活かしていくのか。実装結果がどうなったのか、次回、具体的に紹介するのでお楽しみに。
■公式ホームページ
https://dx-ehime.jp/
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