見出し画像

スマート養殖の普及拡大へ!養殖業者を取り巻く環境の向上に挑む【ウミトロン株式会社|実装報告】

2022年度より、2年にわたり水産王国・愛媛のスマート養殖化に取り組んでいるウミトロン株式会社。

2022年度は、スマート養殖化による生産者の生産効率化やコスト削減、売上向上等に寄与するシステムの実装ユースケース化、構築について実装を行うとともに、2023年度は、生産者だけでなく生産者を支援する周辺産業(金融機関・保険会社等)への養殖データの提供方法にも範囲を広げた取り組みを展開。スマート養殖導入により、養殖産業のみならず地域への波及効果があるアウトプットの創出を模索することを事業目的とした。
本記事では、「養殖業と周辺産業を繋ぐデータプラットフォーム構築プロジェクト」と題した2023年度の取り組みと、その成果についてレポートする。

▼ウミトロン株式会社の事業内容はこちらをチェック▼


養殖産業を取り巻く課題

・愛媛の養殖産業は、人口減少や高齢化、労働力不足、一次産業への新規就労者不足など多くの課題を抱えている。

・生産者は飼料価格高騰への対応や労務環境の改善、生産性向上などに課題を抱えている。そうした背景から金融や養殖保険への関心を持つ生産者も出てきている。

・養殖業は、事業期間が複数年にまたがることから、単年での事業内容の評価が困難、代金回収までに餌代などに多額の運転資金が必要、魚価暴落や自然災害の経営リスクが大きいといった特徴があるため、従来の評価手法では養殖経営体の経営実態を適切に評価することが難しいと一般的に言われている。

・生産者を支援する金融機関等の担当者においては、産業に関する知見の不足や養殖生産現場の状況が外部からは見えにくいことから、取得する情報の均一性の担保がされにくいという課題がある。

2022年度の実装成果

■海洋環境データツールの構築
海洋環境データ管理ツール「UMITRON PULSE」に、愛媛県の宇和海海況情報サービス「You see U-Sea」の海洋環境データを統合し、生産者に提供した。従来、生産者はインターネット上の情報や個別センサーのデータを個別に確認していたが、これにより生簀及び周辺の環境データを一括して確認できるようになった。

■えひめ養殖ポータルサイトの開発
スマート給餌機「UMITRON CELL」や「UMITRON PULSE」と連携させた生育データ等を管理するためのポータルサイトを開発。従来、紙やエクセルを用いてバラバラで管理をしていた情報が一元管理できるようになった。さらに、生産管理や生産・出荷計画を立てるために活用するためのレポートの作成を可能に。

■スマート養殖のユースケースを構築
生簀に「UMITRON CELL」を導入すると共に、海洋環境データツールやえひめ養殖ポータルサイトを活用し、スマート給餌機の導入だけではない、包括的なスマート養殖のユースケースを構築した。

■スマート養殖意見交換会の実施
実装先の生産者を含む養殖事業者を対象とした意見交換会にて、次のような意見があがった。
・給餌時間中の魚の確認作業が手元のデバイスでできるようになったため洋上作業時間が一日数時間程度減り、船の稼働に要する燃料代も削減できた
・顧客への魚の引き渡しは陸上で行うが、従前その時間は給餌作業ができずにいて困っていた。スマート給餌機導入により、陸上業務による給餌機会の損失がなくなった
・実証のようなデータ管理が今後できるのであれば、各社、自社の生産・販売計画に生かすことができそう
・スマート給餌機の導入により餌代が減ることを期待している

スマート養殖化を加速する、2023年度の取り組み

2023年度は周辺産業(金融機関・保険会社等)向けデータ提供スキームの実用化に取り組む。

【プロジェクトコンソーシアム】
■実装PJリーダー:ウミトロン株式会社
・事業の実施主体、提案書の作成、海洋環境データツール及び生育ポータルサイトの構築等
■実装PJパートナー:愛媛県内の養殖事業者6社(上田崇、木村水産、末廣雄一郎、株式会社ダイニチ、株式会社中西水産、濱名水産)
・スマート養殖実証先の提供
・レポート作成にあたっての協力
■実装PJパートナー:愛媛大学 小林教授
・水産ICT専門家としてのアドバイス
■実装PJパートナー:愛媛大学
・個体数推定システムの研究開発
・海洋環境データの連携

【実装ソリューション】

■スマート給餌機「UMITRON CELL」

AI・IoT技術を活用したスマート給餌機
・遠隔自動給餌システムを搭載しており、スマートフォンなど手持ちのデバイスによる簡単な遠隔給餌を実現
・カメラで取得した画像をAIで解析し、魚の食欲を点数化(点数に応じて給餌を自律的にコントロール)
・手持ちのデバイスによる簡単な遠隔給餌を実現
・給餌パターンや魚の活性の評価基準はユーザーで調整可能

■海洋環境データ管理ツール「UMITRON PULSE」

衛星リモートセンシング技術で、高解像度の海洋環境データを提供するモニタリングシステム
・世界中どの地点の海洋データ(水温・溶存酸素・クロロフィル・塩分・海流など)でも簡単にチェック可能
・海洋環境ファクターを時系列で比較する機能あり
・愛媛県近海のデータをリアルタイムで集積している宇和海海況情報サービス「You see U-Sea」とデータ連携

■えひめ養殖ポータルサイト

業務に必要な紙やエクセルの日誌を統合・一元管理するサイト
・種苗、魚群ごとの給餌実績管理、生育指標を可視化
・原価・増肉の自動計算、移動・分養・統合も対応
・中長期の生育目標設定をサポートする機能

【実装の流れ】
実装PJパートナーである県内の養殖業者6社それぞれに、「UMITRON CELL」のスマート養殖製品・サービスを導入。

魚の食欲をAI判定するスマート給餌機「UMITRON CELL」の給餌データや水温・測定データを統一管理する「えひめ養殖ポータルサイト」から環境・生育データを抽出し、「養殖データレポート」を作成する。

水温・測定データについては、愛媛大学と連携し、宇和海海況情報サービス「You see U-Sea」のデータも連携することで、衛生データを活用したウミトロンの海洋環境モニタリングだけではなく実測値も併せて手元で確認することができるようになった。

これらのレポートを金融機関や生産者に提示し、ヒアリングし、有効性・活用可能性等について検討した。

■実装検証結果

生産者の声
・苦手意識があるが、デジタルで記録・管理していくことが重要なのは理解できた
・給餌機に搭載されているAIは信頼でき、遠隔でタイマー変更や餌の残量の確認ができるのはありがたい
・AIをどんどん有効活用して自動化したい
・時化でも自宅から生簀のモニタリング・管理ができるようになったのはよい

金融機関フィードバック
・養殖データレポートは決算書等の補足資料として有効である
・レポートからへい死数の多さや給餌効率の低さが読み取れても、それ自体が問題となることはなく、むしろ問題となりうる事象を生産者がどう読み解いたのか、どう対応したのか説明できることが重要

漁協フィードバック
・これからの養殖産業にとってデータ活用した取り組みは重要となってくる
・今回の取り組みについて、本事業に関わっていない生産者や生産者と向き合うことの多い漁協メンバーも集めて、来年度以降さらなる意見交換をしてみても良いのではないか

今後の展開:実装結果から見えてきた課題に取り組む

今後は、2022年度及び2023年度のデジタル実装加速化プロジェクトにおいて構築した基盤を活用し、愛媛県内のスマート養殖の普及拡大に取り組んでいく。

データ活用に関しては、生産者のさらなるデータ活用方法の提案や、生産現場だけでなく、加工や流通・消費、国内外の販売等との連携など、ほかのバリューチェーン段階でのデータ活用場面を増やしていくことを目指している。

養殖データのプラットフォーム化を実現し、現場の状況を見える化することで養殖業と周辺産業を繋ぐ。この取り組みが、愛媛の養殖産業が抱える課題解決の突破口となっていくことが期待される。

■公式ホームページ
https://dx-ehime.jp/

\SNSもやっています/
■Instagram
https://www.instagram.com/tryangle_ehime/

■Facebook
https://www.facebook.com/tryangleehime

■X
https://twitter.com/tryangle_ehime

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?