子どもたちの笑顔のために! 保育業務効率化を図るICT導入を支援【保育ICT推進協会|事業紹介】
全国的に共働きの子育て世帯が増え、保育ニーズが高まっているなか、保育の現場では待機児童の発生、保育士不足など、全国的に同じような問題に悩まされている。
近年、保育現場が抱える多くの課題を解決できるのではないかと期待されているのが「保育のICT化」だ。現状を打破し、保育施設の業務改善を行うことで子どもたちの豊かで健やかな育成に寄与すべく、保育ICT推進協会は、保育の現場にICTシステムを導入する様々な支援を行なっている。
保育ICTシステムの登場
2015年あたりから、保育の現場でもICTを活用することで解決できる問題があるのではないかとクラウド型の保育施設向け業務支援システムが出始めた。2016年からは厚生労働省からICT導入を支援する補助金制度も整備され、年を追うごとに導入施設数は伸びていった。はじめは一つないしはいくつかの機能に特化したシステムが多かったところ、システム開発が成熟するにつれて、様々な悩みをワンストップで解決してくれるような総合型の優良なシステムがいくつも台頭してきた。
保育のICT化で多くの園が頭を悩ませるのが、「保育システムの選定」だ。そのため、保育ICT推進協会のICT導入支援では、それぞれの園に合ったICTシステムの選定から伴走支援している。今回は、園と協議を重ねた結果「コドモン」を選定した。
保育ICTシステムで改善できること
「コドモン」は株式会社コドモンが開発・運営している保育・教育施設向けICTサービスで、類似のICTサービスの中では業界トップの導入実績を誇っている。現場の声をもとに保育に関するほぼ全ての業務に対応した多彩な機能があり、施設の方針に合わせて必要な機能のみを選択して運用可能。
コドモンをはじめとした保育ICTシステムをうまく活用すれば、以下のような業務改善が期待できる。
●園全体の業務効率化(登降園・入退室管理、職員の勤怠管理、請求管理、写真共有・販売など全般)
●職員間の情報共有が容易・確実(園児情報記録・管理、ヒヤリハット)
●保護者への連絡・情報伝達が容易・確実(保護者連絡、緊急連絡、アンケート、行事予定、給食・献立管理、バス運行管理)
●連絡帳の確認・記入や欠席連絡などの電話対応の負担が軽減(連絡帳、保護者連絡)
※( )内はコドモンにおける機能
なかなか進まない保育のICT化
しかし、保育の現場においてICTの導入はスムーズに進んだわけではなかった。2022年度に行われた調査では、公立保育現場のICT化率は全国平均で36%(※)。愛媛県は補助金の活用などもあり、62%と比較的高い導入率を示したものの、業務の負担を軽減してくれるであろうシステムを導入しない理由はどこにあるのだろうか。
【ICT化が進まない理由】
●施設のICT環境の不整備
システム活用のためには、インターネット環境やパソコン・タブレットといった操作端末が不可欠。施設によっては、パソコンは園長や事務員が使用する1〜2台のみ、もしくは数台を全員で共有というところも少なくない。
●従来の業務方法を変えることへの抵抗感がある
従来のやり方に馴染んでおり、「手書き・肉声のあたたかみが子どもたちのために良い」「ICT化することによって関係性が希薄化してしまう」と感じるスタッフもいる。
●ITリテラシーが追い付いていない
園長が導入に意欲的でも、実際にシステムを使用する職員側のITリテラシーが追い付いていない場合もある。若い世代の保育士は、プライベートでもパソコンやタブレット、スマートフォンを使った生活が当たり前となっているが、仕事でパソコン等の機器を使用してこなかった世代は、操作そのものに不慣れなケースがある。
●検討・導入初期に対応するための余裕がない
システムの比較検討にも実際の導入や操作の慣れにも、普段の保育業務にプラスして人的・時間的余裕がなければできない。しかし、システム導入に割くだけの余裕がない園が多い。
また、ICT化はしたものの、導入後の活用に関するノウハウやリテラシーが現場に不足しているという新たな問題も出てきた。介護や医療では進んでいるIoT機器の導入もあまり進んでいない。
<※一般社団法人 保育ICT推進協会調べ(https://hoiku-ict.or.jp/)>
全ての保育施設にICTを!
これらの課題の解決には、まず導入にあたってのシステムの選定や現場でのオペレーションを指導する人材、また優秀なシステムやIoT機器を現場に届けて運用を支援するパイプ役が必要だ。
保育ICT推進協会では、施設ごとの悩みに寄り添い、システム検討から導入、活用までを伴走・サポートしている。
●システム未導入施設への新規導入支援
保育システムを導入していない施設に対して伴走支援を行い、システムの活用を促す。
IT機器が揃っていない施設の補助金申請から機材選定、施設に合わせたICTシステムの選定、職員のITリテラシー向上のための勉強会、実際の使用方法についてのレクチャー、導入後のアフターフォローなど、システム導入の障害となっていた課題を丁寧なサポートで解決していく。
●IoT機器の新規導入
既にシステム導入済で、さらなる業務改善に意欲のある施設において、hugsafety(販売元:株式会社Gakken)のIoT機器(体温計・センサーマット)の導入と、コドモンとの連携による業務負担の軽減を見込む。
●実装成果・ナレッジ共有会
県内保育施設の職員、各自治体の保育所管課、DX所管課の職員などを主な参加対象者とし、今回のプロジェクトの結果の共有や、今後の国の動向などを共有する研修会を開催する。
宇和島市・尾串保育園での導入支援
2023年10月24・26日には、コドモンを新規導入する宇和島市・尾串保育園で職員向けのシステム勉強会が行われた。
保育業界を取り巻く現状と今後の展望、ICTシステムの利便性などについての解説のあと、実際のタブレット端末を操作しながら、業務におけるシステムの利用方法について丁寧にレクチャーが行われた。
コドモンは誰もが直感的に使いこなせるように設計されているため、最初は操作に不慣れな様子を見せていた職員も、少しサポートすれば操作できるように。今後、月1回の巡回訪問による活用支援が行われる予定だ。
今年度の実装に向けて期待すること
■宇和島市・尾串保育園 河野謙三園長
前々から保育のICT化には興味があったのですが、市からお声がけいただいたことや補助金が出ることを知ったことがきっかけで、当園へのICTシステムの導入を決めました。
宇和島市はやはり大学などで出て行ってから戻ってきてくれる若い人が少なく、保育士のなり手の確保には苦労しています。だからこそ、人の手の不足を補ってくれるICTシステムの導入が必要だと感じます。
ICTシステムをうまく活用できれば、日々の業務を省力化・効率化することができます。特に、膨大な書類作成の負担を減らしたい。子どもが好きで、子どもに関わる仕事がしたいと入ってきてくれた保育士が、重要ではあるけれど子どもたちと直接ふれあうわけではない書類仕事に忙殺され、それを理由に辞めていく人も見てきました。保育士の心の余裕を確保すれば、子どもたちにゆったりと丁寧に向き合ってもらうことができるのではないかと考えています。
もちろん、導入したばかりの時は慣れないこともあり大変だと思います。その最初に越えなければならない壁をできるだけ低くすることが重要と考え、ICT化の研修会でお会いした三好さんにコドモンの導入のお手伝いをしていただいています。
ゆくゆくは、現在は業者さんが撮影し、園で掲示・購入チェック・集金をしている写真販売を、コドモンでできたらいいなと考えています。また、今は個別に現金で集めている集金関係もなかなか手間がかかり大変なので、コスト面が折り合えばぜひ導入していきたいです。
■保育ICT推進協会 代表理事・三好冬馬さん
私は西予市内の保育所で保育士をしつつ、ICT導入と活用に携わってきました。だからこそ、現場の悩みやICTの必要性、そしてICT化の難しさを痛感しています。
現場は日々の保育や業務に手一杯で、新しいことを取り入れる余力がありません。しかしシステム会社は保育施設に寄り添いながらも、やはり自社の利益の追求も図らざるを得ない。現場もシステムも理解しながら中立の立場で、ICT化を支援する存在が必要なのです。
何のためにICT化するのか。もちろん保育士さんの負担軽減や保護者の方々の利便性向上につながるのですが、一番は子どもたちのためです。保育士さんや保護者の方の余裕は、大好きな先生やお父さんお母さんが子どもたちにゆったり向き合う時間を増やしてくれます。
ICT化は今後必須になってくると思います。近く、トライアングルエヒメ保育ICT化協議会を設置し、愛媛県内のICT化とその活用をさらに進めていきたいと考えています。
■保育ICT推進協会 理事・吉野亜祐美さん
私は自らの子育て経験の中で、保護者として様々な保育施設に関わってきました。先生や職員の方々には感謝するばかりですが、一方でICTを活用すれば、保育を取り巻く環境はもっと良くなるのではと考えています。
デジタルの活用で保護者や子どもたちと保育士さんの関わりは冷たくなる?と考えている人もいますが、従来のやり方に加えて選択肢が増えるだけなんです。大切な情報伝達はアプリなどで正確に、ふれあいやコミュニケーションは従来通りのやり方で。
三好とSNSで意気投合して協会を設立しましたが、愛媛に拠点を置いているからこそ、愛媛の保育業界の底上げにより注力していきたいです。
2023年度、尾串保育園でのコドモン新規導入のほか、西予市・小規模保育園あおなみや宇和島市・Anna保育園でのIoT機器導入など、複数の施設での実装に取り組んでいる保育ICT推進協会。2024年1〜2月にはアンケートによる検証を行う予定だ。
サポートの様子や導入後に現場の悩みがどう改善されたかなど、実装結果については次回詳細にレポートする。
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