「Pocket Owners」で生産者と消費者が繋がる!新たな機会を創出するシェアオーナー制度【EXest株式会社|実装報告】
地方経済を支える一次産業が現状抱えている課題は、①キャッシュフローや収穫高依存による収益の不安定さ②価格競争などによる経済的不安③高齢化や就業人口の減少④後継者問題⑤規格外生産物の安価な流通による値崩れ問題⑥ブランド毀損による正規品への影響など、多岐にわたる。
一次産業が直面しているこれらの課題を、生産者と消費者がともに支え合う「シェアオーナー」という新しい関係を構築することで解決を目指すのが「EXest株式会社(以下、EXest)」だ。
「Pocket Owners」の特長とこれまでの取り組み
同社は2022年度から、自宅に居ながら全国の生産者と繋がることができるシェアオーナー制度のプラットフォーム「Pocket Owners」を愛媛県内で実装している。「Pocket Owners」は既に全国各地の生産者が参加しており、2024年5月現在で生産者は300名、オーナーは4,800名にも及ぶ。
【Pocket Ownersの特長】
●初期導入コスト0円
シェアオーナー制度に興味のある生産者であれば誰でも参加可能! オーナー特典の設計やオーナー募集は「Pocket Owners」メンバーがサポート。
●JAやテレビ局が入力代行可能なシステム
生産者の中には「ITが得意ではない」「本業が忙しく対応が難しい」という人も。そんな人のためにJAやテレビ局、ライターなどが入力代行できるシステムを用意。
●オーナーになりたい人を集める仕掛け作り
特典を知ってもらうために、オーナー募集も「Pocket Owners」で実施。田村淳さんとの「いき物語」(各地方の生産者の魅力を伝えるオンライン番組)での取り上げや、地方テレビ局によるテレビCMを活用したオーナー募集も行う。
●オーナーが増えても安心、配送管理もシステム上で可能!
オーナーが増えた場合、オーナー特典で生産物を送ることに負担を感じる人も。負担を最大限減らせるようにヤマト運輸の産直配送管理システムとも連携。
●オーナー同士のコミュニティを活性化させるメタバース
メタバースを活用し、生産者とオーナー、オーナー同士のコミュニティを活性化。
このシェアオーナー制度を一次産業従事者に導入してもらい、愛媛県、中四国、全国からオーナーを募集。オーナーコミュニティを活用した新しい産業構造を構築し、生産者にとってよりチャレンジしやすい環境を創造するというのが本プロジェクトの取り組みだ。
2022年度は愛媛県での実装により、この制度に関しての一定の評価は得られたものの、生産者・オーナーの数、そして生産者は慣れないデジタルを活用し情報発信を実施することや、 地方の農業体験イベントはどうしても集客が難しいなど、アクティブレートには課題が残った。
愛媛拠点の情報発信で認知をさらに拡大!
2023年度は、これらの課題を解決すべく、以下の取り組みを行った。
愛媛大学社会共創学部学生と連携し生産者へアプローチ
目標である生産者数50名を達成するために、愛媛大学のインターン生、愛媛県専用のプロジェクトマネージャーを採用。農家へのアプローチを増やし、登録数の増加を目指した。まず、一次生産者260名をリストアップ、160名へ連絡し、42名と面談した。
■成果
結果として、40農家にコンテンツ制作を実施した。愛媛大学生からのメールの反応率は、EXest社からのメールの反応率の2.5倍程度高い結果に。
インフルエンサーとの連携
インスタグラムのフォロワー数が多いインフルエンサーと連携し、情報発信を実施。インフルエンサーにはオーナーの権限を付与し、自身でサービスを体験してもらう。そして、実際に良いなと思ったタイミングで本サービスの情報を発信。ユーザーと信頼関係ができているインフルエンサーだからこそ、体験価値を伝えやすいのでは、という仮説を検証した。
■成果
タイアップが確定したインフルエンサーの数は18人(2024年5月時点)。連携が始まったばかりのため、明確な成果は出ていない状況だ。引き続き連携するインフルエンサーの数を増やし、効果測定を行う。
オーナーからのフィード投稿機能の実装
双方向のコミュニケーションを重視し、オーナーからの情報発信機能を実装・リリース。生産者からの情報伝達だけではなく、オーナーが投稿することで、 いいねやシェアなどのアクションのアクティベートを狙った。
■成果
オーナー投稿機能はフィードのアクティブ化が実現でき、投稿数が実装前の約4倍になった。実際にオーナーからの投稿も増えており、生産者の満足度も高まっている。
勉強会の開催
登録生産者がより有効に「Pocket Owners」を活用できるようにするための勉強会を開催した。
■参加者(リアル・オンライン含む)
しましま農園・山媛ファーム・ JAひがしうわ・宇和島農産・スマイル農園たかの・戸田果樹園
■勉強会の内容
・「Pocket Owners」を活用しての感想や課題感のフィードバック
・ フィード投稿機能の活用方法に関して
・ 農業体験イベントの実施に関して
登録生産者に対しフィード投稿機能を説明すれば、「Pocket Owners」内でのアクティブ率が高まり、オーナー募集に対して一定の効果を得られると想定。勉強会でフィード投稿機能を理解してもらった結果、 オーナーの購入は6件出現した上、生産者のエンゲージメントも高まった。
今後の展望
今後の展望として、生産者サイド(登録数、イベント数、アクティブ率など) については、オーナーを増やしていくことで、生産者内認知率を高め、リファラルで増やしていく。 また、地元テレビ局と連携し、定期的な露出を目指す。
オーナーサイド(オーナー数、イベント参加者数、プロジェクト参加数)については、リアルなタッチポイントを増やしていく(Pocket Owners Standの実装、WUとの連携) 。そして、愛媛県内企業と連携 や、インバウンドも視野に入れ、商品開発プロジェクトなども定期的に実施する予定だ。今年度、愛媛県に拠点を置いたことのメリットが大きかったため、引き続き現地でのプロジェクトマネージャーの採用、大学との連携を広げ、愛媛での拠点設立を視野に入れ活動していく。
■EXest株式会社 CEO 中林 幸宏さんコメント
トライアングルエヒメを通じて、様々な成功体験、失敗体験ができました。事業主体として事業に没入し、熱量高く事業を推進していく中で、俯瞰的な視点はどうしても見失いがちになります。(事業主体が常に俯瞰的な味方をしているとうまくいかないと思いますが)それを事業主体ではなく、数字を追わなければならないプレッシャーのある事務局だらこそ、弊社メンバーとは異なる視点で色々とディスカションができたことは、方向性を決める上で役に立ちました。
トライアングルエヒメとの関わりは一旦終了になりますが、今後は地元の大学やPMと連携し、没入感を持って進めていただき、私は様々なエリアと合わせ、俯瞰して事業を見ていきたいと思います。
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