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くらしの幅を広げると、見える景色も広がっていく。 Interview 南貴之さん 後編
東京・京都・福岡での三拠点生活を実践されている、クリエイティブディレクターの南貴之さん。後編では、多拠点生活における移動の捉え方や、移動に伴うオンオフの切り替えなど、3つのすまいをそれぞれに使いこなし、仕事とプライベートの両方をますます充実させている南さんならではの視点からお話しを伺いました。また、新たな拠点として今注目している地域についてもお話ししていただきました。
>前編は、こちら。
「進みすぎた時計の針を戻してくれる、街と人との軽やかなつながり。」
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店舗奥には中庭を挟んで、蔵を改装した展示スペースが。
― 前編では京都でのくらしについてお伺いしましたが、それ以外の東京と福岡のおすまいについても改めて聞かせてください。
南さん(以下、南):東京は4、5年間くらい賃貸で住んでいたマンションがとても気に入っていたのですが、大家さんが帰ってくることになって出ていかなくてはならなくなって。仕方なくあたらしいすまいを探したのですが、すぐにいい物件に出会えなくて。その後一旦、8階にあるとても景色のいいマンションに住んだのですが、僕、じつは高いところが苦手なんですよね(笑)。
加えて、オブジェなど壊れやすいものも、たくさん持っているので「これで、もし大きい地震が来たら」と思ったら怖くなってきちゃって。やっぱり人間は、地に足を着けておいたほうがいいと思ったんです。今は、一軒家に住んでいます。
― その一軒家には、すてきなお庭もあるそうですね。
南:庭があるんですけれどね、これが意外と庭には出ないものなんですよ。引っ越して最初の頃こそバーベキューをしましたし、今では冬場はテントサウナをすることもあるのですが、気持ちいいシーズンが限られるので。ベランダや庭が広い家に住みたい人も多いと思いますが、個人的にはおすすめしません(笑)。
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― 福岡のおすまいには、どのような流れで出合ったのですか?
南:もともと福岡も好きな街で、いつか店舗を出したいなとずっと思っていて。博多辺りで店舗用の物件を探していたら、不動産屋の友人が「すごい物件が出たよ!」と言うので見せてもらったら、これがまたマンションだったんです。
―まさか、前編でお話しいただいた京都と同じパターン? そのときも店舗を探していたのに、気がついたら町屋を借りていたんですよね(笑)。
南:そうそう(笑)。その友人曰く「なかなか出てこない珍しい物件だから、とりあえず見せておこうかな」と思ったそうで。まぁ、見せてもらってすぐに借りることを決めたのですけれどね。
― 決め手は何だったのですか?
異常に広いんです。本来60平米の住戸を3戸ぶち抜いて1戸にした物件で、1部屋で180平米あるんですよ。それなのに、家賃が驚くほど安い。あとは、もともとの内装がかわいいので、京都のすまいのように自らリノベーションする必要がないのもよかったです。
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― 現在、福岡にはどのようなシーンで滞在されることが多いですか。
南:店舗はまだないのですが、卸先さんがあって。このあいだも〈グラフペーパー〉のポップアップショップを実施してくださって(南さんが手掛ける)東京の角打ち居酒屋「寄」のメンバーも連れて行ったので、福岡の拠点にみんなで泊まりながらポップアップの準備をしました。こういうときにも、広い部屋だと便利ですね。
ー 東京にベースを置きながら、京都・福岡にはどのような頻度で行き来されているのですか?
南:バラバラなんですよね。月に2回行くこともあれば、2〜3か月行かないことも。滞在するときは、なるべく週末に合わせて予定を入れて、ゆっくりと休みを過ごしてから、週明けに帰るスケジュールにしています。京都も福岡も、僕が滞在しない期間は友人に泊まってもらったり、京都では〈グラフペーパー京都〉に出展される作家さんにホテルの代わりに使っていただくこともあります。
移動時間は、心にゆとりが生まれる気持ちのスイッチ。
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ー 拠点が3つあることで、そのぶん多くの移動も伴うと思います。移動は、多拠点生活におけるハードルのひとつでもあると思うのですが、実践されてみて何か感じることはありますか?
南:移動の時間が“切り替え”の時間になっていたりするので、それはそれで悪くないと最近は思うようになりました。もともとは移動を面倒に感じるタイプだったのですが、「どこでもドア」みたいに便利過ぎないほうが、意外と僕には合っていたみたいです。移動中は読書をしたり、ダウンロードしたドラマを一気観したりして過ごします。でも、だいたい途中で終わっちゃうんですよね。
ー 京都も福岡もアクセスがいいから、移動もあっというまですよね。東京・京都・福岡、それぞれに暮らしてみて何か違いを感じることはありますか?
南:やっぱり、拠点が変わることで気持ちが切り替わる瞬間はあるんだと思います。例えば、街によって見えるものが全然違いますし。同じ国内なので、カルチャーの違いまでは感じませんが。
ー それぞれの街が、南さんにはどのように見えているのでしょう。
南:それが東京らしさなのかもしれませんが、東京はスクラップアンドビルドの街という感じで。 京都は昔のものと共存するようなカルチャーがあるじゃないですか。一方で、あたらしいものを受け入れる素養もある。その違いを京都に住んでみて、さらに感じるようになりましたね。
福岡は食べ物のクオリティがとにかく高いし、リーズナブル。この価格で、こんなに美味しいものがあるのかと、本当にびっくりします。京都も然りで、食べることが大好きな僕にとっては、食が充実していることは街の魅力を感じられるとても重要なポイントです。
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ー 現在は東京のおすまいがメインだと思いますが、東京以外に主軸を動かすとしたら、どこを選びますか?
南:福岡ですかね。服づくりの現場は、関西や中部地方にあることが多いんです。それなら京都にしたほうが便利なのではと思われがちなんですけど、博多を拠点にしたほうがどこにでも行きやすい。市街地から空港までも近いので、飛行機に乗ってすぐに移動できるのも便利ですよね。
あとは、福岡のすまいは広さも部屋数もあるので、オンとオフのモードを空間で切り替えやすい。京都のすまいでは、リビングのソファで音楽を聴いているうちに、気が付いたら2時間経っていたなんてこともあって、ついついのんびりしたくなってしまうんです(笑)。
今、新たに欲しいのは自然が身近にあるくらし。
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ー 南さんのSNSなどを拝見していると、3つの拠点以外にもいろいろな場所に出掛けられていますよね。4拠点目の構想などは、あるのでしょうか?
南:北海道ですかね。京都、福岡の次は札幌に店舗をつくりたいと思っていて。
― おお、札幌! そこでは、どのような暮らしをしてみたいですか?
南:京都も福岡も都会なので、札幌に住むなら自然の多い地域にアクセスしやすい拠点が欲しいですね。僕の先輩に「mountainman(マウンテンマン)」というアウトドアレストランをやっている方がいるのですが、そのお店も札幌の市街地から車で20分くらいの距離なのに、山も川もあって、とても気持ちいい場所なんです。
― 自然を身近に感じられる北の拠点、いいですね!
南:あとは、北海道の食の生産者さんと知り合う機会があって、その方々との交流がとても楽しいんです。帯広、余市などで、あたらしい食文化を開発しようとしている方々がいらっしゃって、今注目しています。
空港に近いという点では、旭川の東側にある東川町も気になります。美味しいと評判のレストランもあって、興味がありますね。でも、まずは札幌かな。ゆっくりと探してみたいと思います。もしかしたら北海道でも、京都や福岡のように店舗を探しているはずが、すまいから借りることになるかもしれないですね(笑)
― あたらしい拠点探しもたのしみですね! ここまでのお話しを通じて、南さんがそれぞれの拠点での「くらし」をたのしまれていることがとてもよく伝わってきました。また、拠点を増やしながら、新たなコミュニティや興味の幅も広げていくことは、人生をより豊かにしてくれるように感じました。
このたびは、ありがとうございました!
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Photo: Ayumi Yamamoto