「京都を、すごす」Vol.3
ある日の早朝。
目覚ましもなく自然と目が覚めて、外を見たら西の空に満月が浮かんでいました。
一眼レフを引っ張り出して撮って、でもスマホの方が月の輪郭がよくわかる写真が撮れるなぁ、と思いながら、早朝の白み始めた空が青くなるのを見ていました。
空が明るくなって月も見えなくなってしまい、二度寝をしようかなぁ、と布団の中に戻ったものの、眼が冴えて起き出して、コーヒーを飲んでいたら9時くらいになって、ふと、「あ、そうだ、あそこに行こう」と思い立って出かけた先がこちら。
木嶋坐天照御魂神社(このしまにますあまてるみたまじんじゃ)です。
名前が長くて私も正式名称はそらで言えません。別名は「蚕ノ社(かいこのやしろ)」。地元住民の間ではこちらの方が馴染み深いようで、嵐電でも「蚕ノ社」という駅があります。
四条河原町から市バスに乗って、30分以上はバスに揺られていたでしょうか。すがすがしい青空が眩しく、車内の暖房が暖かくてうとうとしている間に到着。
太秦方面へ向かうバスだったためか車内はまあまあの込みようで、むわっとした空気。バスを降りた瞬間の、冬のひんやりとした空気すら心地よいと感じるほどでした。
なぜこの神社に行こうと思い立ったのか。
それはここに「三柱鳥居(みはしらとりい)」があるからです。
私はこれが見たかった!
写真でも分かる通り、三本の支柱で出来た鳥居です。
三柱鳥居はその名の通り、柱三本を三角形に組んだ鳥居です。三方から中心の神座を拝することが可能になっている珍しい形の鳥居で、ここは「京都三鳥居」の一つに数えられるそうです。(あとの二つは「北野天満宮末社・伴氏社の石造鳥居」と「厳島神社の唐破風鳥居」だそうです。)
もうね、これを目当てに行ったので、見た瞬間の鳥肌ぶわっと感を伝えたい。
天気が良く、神社を囲む元糺の森からの木漏れ日でご覧の雰囲気です。すごく荘厳な空気を感じました。そして、すこし不気味だな、っていう気持ちもありました。これが曇りの日になると薄暗く、少し薄気味悪い感じになってしまうような気さえします。
私が訪問した時にはほかにも数名いらっしゃってました。
マダム三人組が来たので少し離れて、引きで三柱鳥居を見ていたのですが、きっとマダムたちには(あの小娘、なんで一人で神社なんか来てるのかしら…それに全然帰ろうとしない…)と思われたに違いありません。
現に、マダムたちが別のところに移動した後、食い入るように柵にはりついてカメラを向けていたので、きっと変人に思われてしまったかもしれません。良くてオカルト好き、かな。
神仏を前にこういうことをいうのはいかがなものかと思われるかもしれませんが、どうにも趣味で小説を書く創作脳が、ここはなにか封印されし場所だ、というイメージを呼び起こしました。
これは今後の創作活動に使える、と思ってめちゃめちゃ写真撮りました。
そしてこの三柱鳥居、じつは結構めずらしいんですよね。
そもそも三柱鳥居って存在する数が少ないんです。
Wikipediaに記載のあるものは上記の場所だけ。それでいて非公開の場所だったり、現存していないものだったり、謂れが怪しいもの(オカルト団体が創設したの?みたいなの)があったりもします。立地的に行きやすいなと思ったのが木嶋坐天照御魂神社、通称「木嶋神社(このしまじんじゃ)」でした。
木嶋坐天照御魂神社(以下、木嶋神社)の三柱鳥居は本殿左横、「元糺の池(もとただすのいけ)」に立っています。ちなみに木嶋神社を囲む森は「元糺の森(もとただすのもり)」と呼ばれています。
余談ですが、この元糺の森が、あの下賀茂神社の糺の森の原型になったという説があるそうです。
元糺の池は今は枯れていますが、かつては泉が湧いていたそうです。
7月の土用の丑の日には水をため、人工的な池にして禊ぎの儀式をするそうです。
三柱鳥居の手前には竹で出来た柵が設けられていて近づけないようになっています。これも昔は柵がなく、近付くことが出来たそう。
本殿の右隣には蚕ノ社である「蚕養神社(こかいじんじゃ)」があって、そちらの名前の方が浸透しています。
神社の前、道行く地元の方々が通り過ぎざま、お辞儀をしたり手を合わせたりしているのが印象的でした。地域の方にきちんと信仰されているんですね。
木嶋神社の創建は不詳。一説には、推古天皇12年(604年)に広隆寺創建に伴って勧請されたともいわれているようです。史料からは大宝元年(701年)以前の祭祀の存在が認められているみたいなので、歴史は相当古そう。さすが京都。
社務所はあったのですが、御朱印の対応はしていなかったです。
そして境内には摂末社がいくつかあります。
この奥に小さな社がいくつかあったのですが、そこはどうにも写真を撮ることが出来ませんでした。
カメラの不具合というわけではないのですが、この石の橋を渡った向こうが異様な空気感に包まれていたので、カメラを向ける気になれませんでした。
空気ががらりと変わるというか、隣に保育園があるので、そことの対比で余計に、妙な雰囲気でした。奥に見える小屋のような建物の中には半地下の石室があって、ひんやりとした空気が漂っていました。足を踏み入れる気になれなかったので少し遠目に手を合わせてそそくさと退散。
あ、でも奥に行ったときに保育園の給食の匂いなのか、お出汁のいい匂いがして、きつねうどん食べたいなって気持ちになりました(お稲荷さんなので)。
手前の木にはメジロがいて、手の届くくらいの距離のところで枝から枝へ、行ったり来たりしていてかわいかったです。ついついバードウォッチングをしてしまいました。
帰り際に気づいたのですが、どうやら嵐電・蚕ノ社駅から向かってくると大きな鳥居のある参道があったよう。惜しいことをしてしまった…。