猫のこと
くるみ
君が
いってしまって
掃除する必要なんてなくなった
座れば君の
先っぽがちょんと白くて
次に茶最後は黒い毛が
腕にそっとくっついてくすぐったい
君が
食べたカリカリが
ひと粒残った君のお皿
君が
最期の呼吸をしただろうベッド
君が
手放した身体がいた床
君に
最期さよならを言うこともせず
間抜けに寝ていた深夜
君が
小さな口に咥え歩いていた
毛糸のボンボンが
机の下にある
君が
肩で息するほど張り切って
追いかけ続けた
丸めたアルミのボールが
テレビ台の下に
ソファーに背もたれの間に
ベッドの下に
ある
君の
柔らかくて甘い
匂いのする
毛だらけのスリッカー
君の
写真がたくさん詰まった
古い携帯達
くるみ
先週
部屋を掃除したんだよ
5年振りに
風が窓から吹き抜けて
5年振りに
ソファーにしばらく座っていたよ