テレワークの組織マネジメントの失敗例
テレワーク導入の現状
テレワーク導入企業は大幅に増加
コロナ禍によりテレワーク導入企業は大幅に増えました。
2022年4月現在で東京都では規模関わらず50%以上が実施しており
今後実施予定も含めると6-7割の企業がテレワーク実施意向を持っています。
テレワークで生産性が高まっている会社は少数派
しかし一方で、「テレワークを導入してもうまくいかない」という声も少なくありません。パ―ソル総研による調査では対面時に比べて平均15%ほど生産性が低くなっているというデータも出ています。
生産性を下げている要因は様々
テレワークの生産性を下げている要因は何でしょうか。
アドビが調査した結果(下記)によると課題は同僚とのコミュニケーション、執務環境、業務整理、ツール類の整備、運動、時間管理など多岐にわたります。それらが複合的に関係して生産性を下げていると言えそうです。
テレワークの組織運営における失敗例
実際にテレワークを導入した企業において、どのような失敗例があるのでしょうか。ここではこれまで筆者が直接話を伺った企業の失敗例をご紹介します。
事例1:とりあえずテレワークにしてみたら不満噴出
コロナ禍をきっかけにテレワークを導入したA社
元々チャットツール、ビデオチャットなどを使っていたため大きな問題はないはずとスタートしました
始まった当初はスムーズに立ち上がったかに見えましたが
開始して早々に紙を扱う経理・契約部門はほぼ毎日の出社が必須の状態になっていることに後から気づきました
経理部門も極力テレワークでと伝えていたものの、お客様の担当者も出社していない、自社の担当営業も出社していない中で紙をやりとりする業務の難度や複雑さが増して業務量が大幅に増加していました
これから業務を整理するから、と話をしていたものの
結果的に経理・法務部門の担当者2名が退職
業務が回らなくなり、急遽採用活動の開始と紙からデジタル化への業務構築を同時に進めましたが、現場は大混乱となってしまいました
事例2:業務はうまく進むはずなのに離職者が次々に
以前からテレワークを検討していたタイミングでコロナ禍となり、全面的にテレワークを導入したB社
営業は移動時間がなくなりアポイントをこれまで以上に入れることができ、業務効率があがったと歓びの声があがっていました
しかしテレワークになって半年ほど経ってから退職相談が急激に増え、主力級の人材が3名も立て続けに退職したのです
理由を聞いてみると「テレワークに伴って激増する業務量についていけない。上司に相談しても頑張ってくれしか言われず限界を感じた」ということでした
移動時間がなくなったために隙間の時間も全てアポイントを入れるように指示が出ており、日中の時間が埋まり残業が常態化する事態になっていましたが上司は業績不安から少しでも多くの案件獲得を指示していました
結果的にこの会社の業績はこれまで上り調子だったところから停滞
そして主力が抜けた余波で他メンバーへの負荷が高まり更に退職者が発生することになりました
事例3:社内の人間関係が悪化し対応に追われることに
コロナ禍により全面的にテレワークを導入し、業務面はスムーズに進むように構築されていたC社
しかしテレワークを導入した直後から同僚や上司に対する不満が経営者に直接入ってくるように。しかもその数は増え続けて止まる様子がありません
不満の内容を聞いてみると「○○さんが怒っていてやりづらい」「△△さんが仕事をしてくれない」など、人間関係に関するものがほとんど
感情的になっているため気を使いながら何が起きたのか聞いてみても要領を得ず、事実把握からうまくできない状態で頭を抱えることに
人間関係の問題は双方に言い分があるため一方だけの話を聞いて対応することはできません。オンラインでそれぞれの事情をくみ取り、事実を整理し、今後の改善策を検討し、感情的にもおさまりがつくまで関わっているとあっという間に1日がおわります
結果的に経営者としての業務は睡眠時間を削って取り組まざるをえない状況が続き心労から体調も悪化するように
更に一度落ち着いたかのように見えても人間関係の問題はすぐに再燃し、周囲を巻き込んで更に空気が悪くなっていきました
その都度双方からヘルプを求められ限界に達した経営者はテレワークの中止と出社に切り替えようとしました
しかしその行動に対しても社員から「社長は監視を強めたいんだ」とあらぬ疑いをかけられてしまいました
疲れ切った経営者はテレワークの継続を決め、社員は溜飲が下がったのか一時的に社長に対する批判は収まりましたが、結果的に人間関係の悪化が起因して主力から退職者が続く事態に
失敗例はどの企業でも起こりうる
これらの失敗例は特別な事例ではありません
テレワークを導入した会社で多かれ少なかれ起こっていることです
これらの現象に振り回されてしまうといつまでも生産性は高まらず、経営の基盤すら揺らいでしまうのが恐ろしいところです
実は上記3つの企業には共通している点がありました
テレワークによって一部の社員に負担がいくのは仕方がないと思っていた
社員が声をあげづらい環境にあった
社員が自分達で問題を解決しようとしていなかった
1つ1つは経営上大きな問題とは捉えられないかもしれません
しかし現代のテレワークにおいては1つ1つが致命的な問題になっているのは事例を読んでいただけると分かるのではないでしょうか
どんな状況からでもテレワークでの組織運営のポイントを押さえれば好転する
上記の事例企業3社のその後ですが、テレワークでの組織運営のポイントを押さえていくことで状況が大きく改善し、離職数が大幅に減り定着率がたかまり生産性も対面時よりも高まっています
一足飛びにはいきませんが、きっと思っているよりも簡単に状況を好転させることができます
実際に上記3社の経営者も「こんな単純なことでうまくいくなんて」「手間がかからずにこんなに変わるなんて」「こんな短期間で自分の手を離れるなんて」と驚きの声をいただいています
少なくともテレワークから対面へと変化させても問題状況は大きく変わりません
私が見た限りテレワークから対面に戻した後に状況が好転する企業はほとんどありません
なぜならば根本的な問題は別なところにあるからです
テレワークでの組織運営のポイントについては別記事で改めて紹介しますが、知っておいていただきたのはテレワーク導入により生産性を高め、対面時以上に良好な人間関係をつくりだしている企業も多くある、ということで
す
問題はテレワークそのものではなく、組織運営にあります
今回の記事を読んでくださりありがとうございました