レッスンにおけるディスカッションの重要性
昨日こんな記事を書きました。
ぜひご覧いただきたいのですが、ざっくり言うとアンブシュアは作るものではなく、その人の演奏時の見た目でしかないのだから、指導者の勝手な基準で直させるものじゃないよ、という感じの話です。
その記事の中でこんなことを書きました。
音にノイズが発生する原因
レッスンに来てくださっているひとりの生徒さんが、上手に吹けないと悩まれていました。
僕のところにはこのような生徒さんが多くいらしてくださいます。こうした場合、生徒さんが悩んでいる原因がどこにあるかを考えながら原理や奏法に関して解説・実践していただき、その方向性が生徒さんに合っていると感じられればそれを今後の練習時に意識してもらうようお願いしたり、具体的な練習方法を提案します。しかし、今回の生徒さんはこうした流れでは改善が見られず非常に悩まれていました。
ディスカッションによる発見
こうした場合、奏法の改善の提案よりさらに前段階の何かに原因があるので、ディスカッションを多く取るように心がけています。
ご自身ではどのように考えて吹いているのか、知識と実践が正しくリンクされているかを確認したり、あと最も重要なのが、他の指導者さんなどからこれまでにどんなレッスンや指導、アドバイスを受けたか、お聞きます。
解説や実践による改善が見られない場合、他の指導者さんからのアドバイスが足かせになって演奏に支障が出ている場合が結構多いのが事実です。
指導者が安直な思考で使うワードが成長の足かせになる可能性
その中で最も多いのが部活動などでの指導者の決まり文句のような「息を沢山吸う/吐く」「楽器に息を入れる」「音を遠くへ飛ばす」などの言葉です。これらの言葉の呪縛で良いサウンドが得られないとか、ピッチが不安定になるとか、高い音低い音が出ないとか、すぐバテるなど、上達できずにいる奏者が非常に多いのです。
ですからレッスンでは正しい発音原理とその実践方法について解説することが必然的に多くなります。それらを実践していただくことでこうした悩みは少しずつ(もしくはすぐに)改善していきます。
しかし、よく使われる言葉の中のひとつ、「アンブシュア」は、抽象的でありながら奏法の根幹を揺るがし、自由を奪う危険なワードです。
今回悩まれている生徒さんも、以前部活に来ていた指導者からベルが他の人よりも低かったために、その角度を否定され、高く構えるようにさせられたという話をしてくださいました。
これだ。
ベルを自分の体の作りに反して高く構えようとすると上下の唇へかける圧力(貼りつきかた)のバランスが取れず、顎や口周辺の筋肉を本来必要でない動きをして強引に作らなければなりません。そんな状態をキープし続けられるはずもなく、この生徒さんは2,3小節吹くとすぐに保てなくなり、バランスが崩れてノイズが発生したり、ドッペル音(一度に2つの音が聞こえる状態)になったり、空気の摩擦音しか出ない状態になっていました。
ですので、まず生徒さんにはベルを高くする必要はないとお話をした後、マウスピースのリムと上下の前歯(唇ではありません!)が仲良くなれる角度を見つけてもらい、これまでのレッスンで解説してきた準備から音を出すまでの一連の動きであるセッティングルーティンを実践してもらったところ、ノイズがまったく出なくなりました。
確かに今までよりもベルは下がった状態になりましたが、違和感があるほど下がっているわけではないので、なぜその指導者はベルの角度を直させたのか疑問が残ります。
今回のお話では、外部からの指導・アドバイスがかえってレベルダウンに繋がってしまった流れですが、ディスカッションをすることで僕がお伝えした解説と生徒さんが実践されている状態の相違を発見することもできます。
レッスン=教えるという一方通行の構図にならないよう、指導者側が意識していることが大切なのだと改めて感じます。
もし同じようなお悩みを持っている方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ツキイチレッスンにお越しください。お待ちしております!
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荻原明(おぎわらあきら)