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#033.楽譜を正しく演奏する技術を手に入れよう

前回まで「楽譜を読むための基本」を延々と解説して参りました。楽譜の基本を理解せずに音楽はできませんから、重要なところだけでもと思って書きましたが、結局こんなに長くなってしまいました。わからないことが出てきたらぜひ読み返してくださいね。


「楽譜を読める」ということはすごいことです。世界共通言語を手に入れているようなものですから。

しかし、楽譜が読めることと楽譜に書かれた情報をきちんと演奏できるかは、また別の話。そこで今回の話です。


楽譜を見て演奏する

楽譜にはたくさんの情報が記録されています。音符だけ見ても、音の高低、リズム、スタッカート、スラーなどのアーティキュレーションが関係していて、それをトランペットで演奏しようと言うのだから大忙しです。

初心者の方が最も難関と感じる理由のひとつが、このように「一度に処理する情報量が多い」点です。

そこで、まずはこれらをバラバラにして考えていきましょう。

楽譜の情報を分けて考える

1.テンポだけを考える

音程もリズムもテンポなくしては決定することができません。ただし、実際に楽譜に書いてあるテンポで演奏することは最終的な目標のひとつです。自分にとって把握しやすいテンポであれば良いのですが、とても速かったりとても遅いと、合わせられないとか、ついていけないような感覚に陥り、もうそれだけで難しく感じてしまいますから、楽譜に指定されているテンポは把握するだけにとどめ、この後書きますが、音程確認の練習と、リズムを理解する練習では自分にとって把握しやすい「一定のテンポ」で進めていければまずは構いません。

ではまず、楽譜に書いてある指定テンポがどのくらいなのかを理解しましょう。テンポはメトロノームで確認するのがもっとも確実で手っ取り早い方法です。具体的なメトロノーム記号が書かれていなくても、楽曲であれば何かしらの速度に関する記述があるはずですからそれらの情報からおよそどのくらいのテンポがこの作品に最適なのかを暫定で良いので確認します。

AllegroとかModeratoとしか書いていない場合はその言葉から想像できる最適テンポをイメージし、暫定として決めます。文字による速度記号に関してはこちらの記事を参照してください。

最終的なテンポを把握したら、音程練習、リズム練習をする際の演奏しやすいテンポを決めておきます。


2.音程だけを感じる

テンポが決まったら次に音程の練習をします。音程というのは音と音の距離のことです。したがってこの練習は、ひとつひとつの音を単発で捉えるのではなく、次に来る音をあらかじめイメージして歌えるようになることが音程感の練習です。

そのためにはまず「調」について理解しておくことが大切です。調がわかると、その調のスターティングメンバーである7つの音がメインで登場することが把握でき、音程を取りやすい状況にできます。

調については少し前に「調と音階について」の記事を2回にわたって書きましたので、そちらを参考にしてください。

少なくとも、調号を確認した上でこれから演奏する調が何であるか、長調なのか短調なのかを理解します。

そうしたら、とりあえず今はリズムを無視して先ほど決めた演奏しやすいテンポで音符を書いてある順番にひとつずつ並べてみます。トランペットで音を出しても構いませんし、ピアノで音を出して声で一緒に歌ってみるのもとても効果的です。ただしピアノでトランペットの楽譜を演奏する際は書いてある音と実際に聴こえる音の高さが違うことが多いと思うので、そのあたりは理解しておく必要があります。移調された譜面についてはまた後日解説したいと思います。

リズムがないぶん、あまり長すぎる範囲を一度に並べてしまうと意味がわからなくなるので1小節とか2小節などの短い範囲で何度か繰り返したほうが良いでしょう。もし取りにくいと感じる音程の部分があれば、そこだけ重点的に確認します。

3.リズムだけを考える

一旦音程から離れて、次はリズムを確認します。

リズムは音程以上に複雑な場合もあり、また、無限にパターンがあるので、作品によっては(人によっては)これが最も難しく感じる可能性があります。

リズム練習で特に気をつけて欲しいのは、音の出だしだけではなく、それぞれの音がどれくらいの長さキープされているのか、要するにその音がいつ終わるのか(どこまで伸ばすのか)も必ず理解し、できる限り正確に表現するように心がけましょう。

音程を理解するために調を知る必要があったように、リズム練習の際には必ず「拍子」を理解してから始めます。吹奏楽作品の場合、拍子が変わる場面や混合拍子が登場する機会も多いので、難しく感じる箇所はそれだけを重点的に見る必要があるかもしれません。

参考までにこちらの記事もご覧ください。

リズム練習をする場合はメトロノームを鳴らしっぱなしでも良いと思います。手拍子でやってみたり、歌えるならば最初は棒読みで構いませんから「タ」などで歌ってみたり、可能ならばドレミで歌えれば更に次のステップに繋がりやすくなります。

多分これらの中でリズムが最も難しいですから、どうしても楽譜だけでは理解できない場合は、レッスンを受けてみるとか、友人に教えてもらうとか、音源を聴いて感覚的に覚えるとか(特定の音源だけを聴くのは危険です、幾つも違うものを聴いてください)、様々な視点から、自分が理解できる方法を模索してください。

3つの要素を合体させる

音程、テンポ、リズムそれぞれの確認と理解が十分にできたら、それらを合体させてみます。

テンポとリズムは切っても切れない関係で、すでに合体しているので、そこに音程を合わせていくことになります。

この時まだ楽譜の指定テンポで行う必要はありません。先ほどリズム練習をした際のテンポのままで構いません。その一定のテンポの中に、きちんとしたリズム、そして音程が合体すれば楽譜に書かれている最も重要なデータは把握できます。もしこの時点で難しいと感じたとき、それがリズムによるものなのか、音程が理解できていないのかを見抜くことが大切です。それがわかったら一旦戻って先ほどのリズム練習や音程練習をその部分だけ再度確認してみましょう。

これらの要素をトランペットで演奏する場合、トランペットのコントロールに関しても意識を向ける必要があるので、もっと処理する情報が増えます。ただ、これは今回の話題の次のステップなので、機会を見て少しずつこのブログで解説したいと思います。

テンポ、リズム、音程を合体させて曲を演奏できるようにする工程は、ジグソーパズルを組み立てることと似ています。最初のピースを噛み合わせるのがとても根気がいるのですが、少しずつピースがくっつき合ってだんだんと理解するスピードが上がり、ひとつの音楽が生まれてきます。

そして、最も大切なのは、こうした行為を楽しめること。早く楽譜を吹きたいのはとてもよくわかりますが、せっかちにならず、音楽の初期段階の練習はじっくり腰を据えて丁寧に落ち着いてひとつひとつ理解を重ねていけるようにしましょう。


小節線と練習番号

楽譜を見ていると、2重線の小節線がたまに出てくることがあります。複重線(ダブルバー)と呼ばれるこの線は、調や拍子が変わるなどここから何かが変わることを示唆しています。したがって、楽譜を読む際にはそこが音楽の(何かの)境界線だと捉えるようにしましょう。

また、合奏の時に便利な練習番号も適当に割り振っているのではなく、当然キリの良い場面だから書かれていることがほとんどですから(たまにそうではない10小節区切りだったりすると大変練習しにくいのですが)、楽譜を読むための練習範囲を設定したり、目標範囲にするのも便利です。

さて、いかがでしょうか。

楽譜を読むことに慣れているからと、曖昧な理解や感覚的に理解しただけで練習してしまうと、いざ合奏で自分だけ違うことをしてしまったり、クセになって修正できないなど後々苦労するので、丁寧に理解するよう心がけてください。
特に有名な曲や自分がよく知っているポップス作品を演奏する際は注意しましょう。

それではまた次回!


荻原明(おぎわらあきら)

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荻原明(おぎわらあきら):トランペット
荻原明(おぎわらあきら)です。記事をご覧いただきありがとうございます。 いただいたサポートは、音楽活動の資金に充てさせていただきます。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。