見出し画像

やっぱり訪問看護が好き

私が訪問看護に就いた時、決して希望では無かった。
スタッフ不足で、急遽外来から、応援要員として駆り出された。

それまで、病院から離れる時は救急搬送の転院が主で、救急車に同乗だった。

それが今度は、ジャージに着替えて病院の公用車でご自宅へ訪問とは。
精神科訪問看護ということもあり、何を観察してどうケアをすればいいのか想像もつかなかった。

しかし、行ってみて驚いた。病院から90分も離れたお家の訪問も…多々あるある。それ以上の距離も、あるある〜!
そして向かっている最中どころか、玄関先で断られたり、居留守を使われることも…

でも、病院で看ていた患者さんとは大きく違った。そこではお父さんとかお母さんとかおばあちゃんとか。当たり前だけど、役割があった。その人と、支える周りがあった。

内服薬残数確認もするとか管理が難しい方には、カレンダーで飲み忘れないようにセットしたり。

「この子が大笑いしたのを見たのは、何年振りだろう」などと涙ぐみながらお母さんが話してくれた場面にも立ち会えたし、

冬の寒い日に、凍えて動けなくなっていた状態で発見して、救急要請してそのまま同乗したことも、あったなぁ。

ある時は、家じゃなくその横の畑で話を聞いたり。飼っている羊が気になるからと訪問中に牧場まで散歩したこともあった。

家の中に外の人を入れるっていうのは、案外ハードルが高い。
私自身も、年1回の家庭訪問の時でさえ初めは不眠になる程だった。だが、慣れていくと少しずつ、「家の中に風が入る」状態になるのだと感じた。当事者と家族だけでは固定概念で見てしまいがちになるから、新たな視点が非常に必要だと思う。

 私が訪問看護に意欲が出て、利用者さんを、ご家族を、変えようと必死になってた時期は、完全に空回っていた。
「変えなくていいんだよ。変わることがいいとは限らない。その方とご家族の物語だから。俺らは、最悪を見逃さないってだけでいい」
これは私が先輩から教わった言葉。これを肝に銘じていた。そこから訪問看護の奥深さに触れた。

あれから何年も、いや10年以上経っても、やっぱり訪問看護が好き。

いいなと思ったら応援しよう!