社会的処方としてのparkrun
parkrunのGlobal CEO Russ Jefferys氏の講演を聴講しました。講演の中で、「parkrunは、英国の家庭医によって社会的処方として患者に提供されている」という大変興味深い話を伺ったのでまとめてみました。
parkrunとは
parkrun(パークラン)は、毎週土曜日の朝、公園や自然豊かな場所で5kmのコースを走ったり、歩いたり、観覧したりする、ボランティアによって運営されるイベントです。
2004年、イギリス・ロンドンのブッシーパークで、ポール・シントン=ヒューイットという一人のランナーの企画が始まりでした。孤独を感じていたポールは、「一緒に走って、その後にコーヒーを飲みながら交流できる友人が欲しい」というシンプルな願いから、週末の5kmランニングイベントを始めたのでした。
日本でも2019年に初めて開催され、現在、全国40箇所でイベントが展開されており、都市部から地方まで多くの人々が参加しています。
parkrunはボランティアによって運営されており、参加者同士のコミュニケーションが活発で、新しい友人やランニング仲間を見つける絶好の機会となっています。年齢や運動経験を問わず、誰でも参加できるのが特徴で、健康増進だけでなく、地域の人々との交流を深めるコミュニティとしても注目されています。
多様な関わり
parkrunは「走る」だけでなく、「歩く」や「みる」「応援する」といった様々な関わり方が可能です。
運動に自信がない方やゆっくりと自然を楽しみたい方でも、自由に参加することができます。参加者全員がゴールするまでサポートする体制が整っており、最後尾には「テールウォーカー」というボランティアがついて、誰も置き去りにされないよう配慮されています。
また、イベントの運営はすべてボランティアによって支えられており、タイムキーパーやコースの案内、写真撮影など、様々な役割を担っています。さらには、友人や家族の応援として参加することも可能です。
このような様々な関わり方ができるおかげで、運動に自信がある方もない方も気軽に参加でき、人とのつながりを築くコミュニティとして発展してきました。
parkrunと社会的処方
社会的処方
parkrun発祥の地イギリスでは、医療従事者が患者に対してコミュニティ活動やボランティアなどの社会的プログラムへの参加を促し社会的課題解決を進める「社会的処方(Social Prescription)」が制度化され、積極的に行われています。
2018年には、parkrun UKはRoyal College of General Practitioners(RCGP)と共同でparkrun practice initiativeという取り組みを開始しました。
https://volunteer.parkrun.com/hc/en-us/articles/16858224370322-5-2-parkrun-Practice-Initiative
このプログラムでは、一般診療所(GP)が地元のparkrunイベントと連携し、患者やスタッフに参加を促しています。これにより、身体的な健康増進だけでなく、精神的なウェルビーイングの向上や社会的孤立の解消にも寄与しています。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2211335520301893?via%3Dihub
日本での可能性
parkrunの取り組みは、日本が抱える課題の解決策として可能性を秘めています。
高齢化や都市部への人口集中により、地方の過疎化やコミュニティの希薄化が課題となっています。parkrunは、公園を活用して地元の住民が集まる場を提供し、地域社会の活性化や多世代交流が促進されることが期待されます。
また、日本は高齢化が進み、医療費の増大が社会問題となっています。parkrunへの参加を通じて、定期的な運動習慣を身につけることで、生活習慣病の予防や健康寿命の延伸が期待できます。
さらに、英国で成功している社会的処方の取り組みを日本でも導入することで、医療と地域コミュニティが連携した新しい健康支援モデルを構築できます。
まとめ
parkrunは、ただのランニングイベントではなく、多様な関わり方を通じて人々をつなぐプラットフォームであり、健康増進やウェルビーイングの向上、コミュニティの活性化など様々な恩恵を受けられる取り組みです。今後更に日本で広まっていくことが期待されます。