「声」
茹だるような暑さが続いていた。
首に巻いたタオルは触れるだけで、吸った汗を吐き出していく。
馴染みの石畳の上を歩きながら、今年もあの頃に思いを馳せる。
ここにくるたびに、何も成長していない自分に嫌気がさす。
今年も彼は、いつもの場所で先に待っていた。
「ふぅ…久しぶりだな。変わりないか?最近は何をしているんだ?」
『…………』
「まぁそっちも変わりないってところか。」
『…………』
「もう3年になるのか、あれから。色々あったよな。中学でお前と出会ってから、俺の人生は意味のあるものに変わった気がするよ。」
『…………』
「無味無臭。味気ない毎日に、見違えるような刺激をくれた。」
「あれから16年、いつも俺のことを気にかけてくれる友人は、お前だけだったよ。」
『…………』
「やっぱりあれだな、恥ずかしくてなかなか言えなかったけど、お前は俺の【心友】ってやつだったよ。」
「昔のように会えなくなって、つるむ時間も無くなってさ。それでもこうして会いたいと思える。」
「そんなツレは、お前だけだ。」
『……………』
「いつだって夢に真っ直ぐで、全力で。命を削りながらも、人生を使って、誰かの心に何か一つ残せるように、精一杯曲を作り続けた。」
「そんなお前を、俺は誇りに思うよ。月並みな言葉では言い表せないこの関係、この想い。」
「簡単な言葉を使いたくないけど、あえて言うよ。」
「本当にありがとう。」
『あぁ………』
「え……!?」
目を細めてしまうような暑さの中、ひぐらしと蝉の鳴き声が響き渡る。
来るはずのない返事が聞こえた気がした。
ここに来るたびに、もう一度会いたい。と思ってしまう。
きっと来年も、何も成長していない自分に、嫌気がさすのだろう。
あとがき
ふとお盆休み中に思いついた書き殴った短編です。
今後も何かふと思いついたものを上げていこうと思っています!
今後とも、マイペースな投稿にお付き合いいただけると嬉しいです!
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