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機能不全家族で育った人達①

既婚者なのに独身と偽って私を騙したロイくん(41)。

彼は機能不全家族で育った1人である。
結婚という制度に対する認識がとても甘く、良く言えば世間の常識に縛られない。モラルやルールを考えない自由な発想を持っている男性だ。
ひっくり返せば、浮気や不倫なんておかまいなし。相手が傷つくことよりも、自分が楽しい・気持ちよい事を優先する。他人の気持ちを一切考える事が出来ない男性なのだ。

では、彼の心理がどのように動き、どう考えていたのか。
今回のようにたくさんの人を騙しても手に入れたかったものは何か。
1ヶ月に渡る傾聴・カウンセリング・対話の記録を綴る。

彼の心には底知れぬ闇が潜んでいた――。

機能不全家族とは?

機能不全家族。
子供の目線で見たときに「家族として正常に機能していない家庭」を、機能不全家族と呼ぶ。一体何をもって”家族として正常なのか”と問われると、難しい質問である。まず機能不全という言葉そのものがネガティブだ。

あくまで一般論になるが、機能不全家族と呼ばれる家庭には、以下のような身体的・性的・精神的虐待が起こっている。

■家族の仲が悪い
夫婦間や嫁姑問題等、家族の仲が悪く問題を抱えている。
親子間の愛情が希薄または冷たく愛情を感じない。
怒りをコントロール出来ず、大声で怒るまたは怒りにまかせた暴力も含まれる。

■依存症がある
アルコール・ギャンブル・薬物(合法薬物・市販薬を含む)・人間関係に依存傾向が強い。または依存症と診断歴がある。

■親子関係が健全でなく支配関係にある
親が子供に対して期待が大きすぎ、子供が期待に添えないことが原因で家庭内で問題が起こってしまう。
学歴・職歴・金銭面だけを重視してしまう家族。
親が子供の交友関係や進学先等を決めてしまい、子供の意思や決定権が無い状態の家庭。

■その他の要因
周囲からみると”仲が良い家族”に見えるが、他人の目を気にするあまり表面上だけ取り繕っている。
常に他人(兄弟姉妹や親族を含む)と比較し優劣を決める家族。
親と子供の関係性が逆転し、子の言いなりに親がなっている家族。
親が情緒不安定である。病気がちだったり、留守にしがちな家族。

思いつく限り書き出してみた。他にもさまざまな特徴が挙げられるが、これらの項目だけを読むと「あれ? 我が家も機能不全家族だったのでは?」と思う人もいるだろう。

自己愛が強すぎる人の会話には特徴がある

ロイくんの特徴に、機能不全家族の元で育ったことに加え、もう1つ特徴がある。

それは「自己愛が強すぎる男性」だ

自己愛の強さに関しては、ロイくん自身も自覚していた。
「人間って誰でも一番かわいいのは自分でしょ?」と本人が何度も口にしていた位だ。41歳後厄の男性が何言ってんだかと思うが、本人はいたって真面目にそう思っている。

交際スタート~ロイくんの既婚発覚~最後に2人きりで会う日まで、彼とはいろいろな話を繰り広げてきた。雑談レベルから真面目な話まで、彼が既婚者であるという情報以外は真実を聞き続けてきた。
ロイくんの話はいつも「僕は~」「僕ね~」と、会話の8割が一人称で始まる。そして会話を進めると、彼が持つ独特な世界観と会話の薄さに気が付いた。

例えば、私側から何かしらの話題を振る。私自身、感情が表情に出やすいため、彼は私の表情を見て「うん」「そうだね」とワンクッションを置く。ここまではどんな関係性でもよくある会話だろう。
だが、表情が読めないシーンになると、ロイくんとの会話が続かなくなることも多々あった。これは自己愛が強すぎる方に顕著にみられる特徴の1つである。相手の表情を読み取ったり、声のトーンを読むことは得意なのだ。しかし、相手の気持ちや内面の悩みまで把握したり、相手の立場に立って気持ちを考える能力が欠如している。ゆえに、表情や声のトーンから「私がどうしてほしいか」察せないとロイくんが判断した時には、話題を変えられたり、別の動作がスタートしていた。

機能不全家族+自己愛の強さ=●●

機能不全家族+自己愛の強さ。
この2つが組み合わさって結果、ロイくんの内面には大きな認知の歪みが生じていた。

既婚発覚後に1ヶ月かけて彼の話をメールでじっくりと聞くと、不貞行為を行っていた罪悪感が驚くほど低いのだ。

元配偶者に対して「不倫してごめんなさい」という感情よりも、私に対して「騙していてごめんなさい」という感情よりも。彼から出てきた言葉は「僕が2人に甘えてきた結果が、2人を失うことになったんだ。本当にごめんなさい」なのだ。自己愛が強いと、初めての謝罪ですら「僕が~」から始まるのかと私自身も興味を抱いてしまった。

前置きが長くなってしまったが、ロイくんの生育環境をここで振り返る。

初婚の父親と子連れで再婚した母親がロイくんの両親だ。
連れ子の姉が1人、再婚後に生まれたのがもう1人の姉とロイくん。
幼いロイくん目線では仲が良い家族に見えていたそうだ。
しかし、現実は姉同士も仲が良いとは言い切れず、親同士も不仲へ――。
父親が40代に入り障害を持ち車椅子生活へ。
仲が良いと思っていた両親は、ロイくんが高校卒業する頃に離婚。
薄々両親の仲の悪さや家族仲の悪さは察していたそうだ。
それでも家族で仲良しごっこを続けていて、両親の離婚時に大声をあげたり罵倒しあう姿を見た結果、ロイくんの中で「親しい人同士が言い争う姿はもう見たくない」というトラウマが形成されてしまった。

後に上記トラウマから、元配偶者と私が言い争わないために、ロイくんが奔走していた事を知った。

理想の家族像が思い描けない

既婚発覚前から、ロイくんは常々こんな言葉を話していた。

「両親の離婚劇を見ていたせいか、結婚生活に何の夢も理想も抱けないんだ。」

こんな言葉を話した男性が、実は付き合いの長い女性と結婚して6年が経過していたというオチが待っているのだが、まずは最初のセリフに注目していただきたい。

既婚発覚後にロイくん自身が語った内容では、元配偶者とは出会って付き合いが長いこと。付き合いが長いから結婚(入籍)はした。子供はいない。元配偶者とは家族って感じ。セックスレスってわけでもないけど、月に一晩1回あれば良い方。子作りのためのセックスはしていない。結婚後も僕の価値観やモラルは何も変わらなかったそうだ。これを騙していた相手に話すか?とも思ったが、ひたすら傾聴した。
そして私に話していた内容は「両親が離婚するってなったとき、仲良し家族と思っていたのにいろんな問題が表に出てきて……親しい人達が言い争う姿が正直トラウマになってるし、家族がバラバラになるんだったら結婚なんかしたくない」と何度も話題に出していました。ちなみに私からロイくんに対して結婚を迫った事は1度も無いと断言できる。

幼い頃のロイくん目線で感じていた家族に対する違和感や不信感。これらの葛藤を抱えたまま思春期を超え、高校卒業頃に家族が完全に分裂。ロイくんの中では「両親も姉妹もみんな仲良し家族」が理想だったけれど、現実は違い両親は離婚を選択。その際に、父親側と母親側に姉2人は分裂。唯一両親両姉の間を自由に行き来する存在がロイくんになったそうだ。

30代半ばで入籍した当時のロイくん自身が「理想の家族像」を描けないまま結婚したと話している。

元配偶者もまた、機能不全家族出身者だった――

ここからは、ロイくんから聞いた情報を簡潔にまとめる。
ロイくんの元配偶者に関してだ。

・相手の家族構成も訳あり。
・家族構成は実母と再婚した父親。
・元配偶者も親の不仲や離婚劇を見ている。
・だから元配偶者は「男性はいつか浮気もするし本気の不倫に走る」と思って過ごしていた。

ここまで聞いて、なんとも居たたまれない気持ちになった。
何が事実で嘘かは分からない。ロイくん目線での報告なので嘘をついている可能性も捨てきれない。

上記4項目のうち、聞いていて一番胸が苦しいと感じたのは「男性はいつか浮気もするし本気の不倫に走る」と悟った上で結婚生活を送っていた点だ。

入籍当時30代半ばで理想の家庭像を描けない男性と、20代半ばで男性はいつか浮気もするし本気の不倫に走ると思いながら年の差婚をした男女が実在する。

2人しか分からない現実もあるだろう。交際当時は良い思い出もツライ思い出も乗り越えたのかもしれない。現実に起こった出来事として結婚生活6年中、結婚当初から数年間はロイくん自身が幾度か出会い系サイトでワンナイトの女性を求めているし、後半は私との関係が年単位で続いている。
彼自身が自発的に出会いを求める行為=一般的に不倫(不貞行為)に関してのハードルが、著しく低いのだ。
付け加えると、元配偶者も既婚男性の性生活に関しては「いつか男は浮気をするし本気の不倫もする」と割り切っている。
なんだろう。今回の件で巻き込まれた第3者だが、ひどくむなしく感じてしまう。

機能不全家族で育った男女が出会い、結婚をした。
ここまではよくある話だ。
そして、今後更新予定の離婚劇についても、2019年の現代では決して珍しい話ではない。

『両親が離婚していたら子供も離婚へのハードルが低くなるのか。』
このテーマを軸に、次回は『ロイくんが抱える性依存症について』掘り下げます。

長くなったので、続きは次回更新へ。
ご愛読、ありがとうございました。

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ちひろ30歳
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