#3 教育の前に考えたいこと
よく顧問契約をして、毎月(もしくは隔月)訪問し、社内整備した後の次は「幹部社員の勉強会」と「ドライバーの安全大会」をするのですが、ドライバーさんの勉強会のテーマはどんなのがいいですか?と聞くと、まぁまぁ依頼される確率が多いのが『愛社(もしくは愛車)精神』というやつです。通常の業務でもきちんとやってくれるドライバーさんは自身でもよくわかっており、そんなことをお話するまでもありません。逆を言えば、そういう意識があるからちゃんとした仕事をするわけです。
問題なのは2‣8の法則の残りの2割の人間です。
私のパートナーの社労士の大先生はほとんどの人は性善説でOKなんです、残りの2割の人のために性悪説を想定して就業規則等をしっかりと作らなければならない、とよく言います。今の自粛している日本の中でもそうですよね。家にいてください、と言っても言うこと聞かない人がどうやっても何割か存在する、みたいなものです。
で、そういう人たちをどうやって教育するかというと、これは至難の業です。
話は変わりますが、私は、保護猫活動をしている友人から、保護した猫を家で一回預かり、そして人に慣れさせ、新しいお家に引き取られ、愛情をかけられて生活しているうちに猫でもこんなに人相(いや猫相?)が変わるのかというくらいすさんだ顔がおだやかな顔になり、そして本当にかわいい顔に変身していく様をここ数年何度も見せられてきました。いや、猫や犬と人間を同じにするな、というのもよくわかっておりますが。でも人間もほぼ同じようなものだと思っております。
ここ最近話題になっていたベストセラーの「ケーキの切れない非行少年たち」を書いた児童精神科医の宮口幸治氏は、著書の中で、この非行少年たちは罪を犯し少年院に入るまでの成長過程の中でほとんどの青少年が壮絶ないじめや虐待にあっていると書いています。
それが何かのきっかけで逆転し、自分より弱い幼児や年寄り、女性などに矛先が向けられるというものです。
本来、子どものうちに変な子や性格の悪い子はいません。私は行政書士の前職は教員ですから、ほぼほぼ99.9%の子どもは間違いなくまっすぐでかわいいものでした。
普通の家庭で愛情たっぷりに育てられていていたり、または片親でもその親がしっかりと愛情を伝えられていたり子どもがそれを理解したりしていると子どもはまっすぐ育ちます。
逆に両親揃っていても、愛情の伝え方が間違っていたり、コミュニケーションが取れないと子どもの性格はゆがんでいきますし(中には発達障害を疑うものもあるので一概には言えませんが)なにかのきっかけで罪を犯すということもあります。
そこまでいかなくとも大人になるにつれ、人となかなかなじめない、言っても聞いてくれない(もしくは聞けない)、何かひねくれている、コミュニケーションが取れない等の人間関係のうまくできない方々というのは、どこかの成長過程の中でいろんな体験からゆがんだものが出てくると考えられます。詳しい話はセミナー等でさせていただきますが、その体験がそういう性格を形成していくと思われるのです。
だとしたら、そういった体験や生活の背景の根本から考えてあげないと、ただただ、
安全に気をつけろ、とか、事故起こすなとか、何かあったときに自分だけの問題ではなく会社とか仲間に迷惑をかけるんだ、などと言っても入っていかないというのも理解できます。でも何かのきっかけで、仲良くなり、その人の背景を理解してあげたりするととたんに言うことを聞いてくれることがあります。
昔の運送会社は、社長が(もしくは社長の奥さん、または専務など)そのような役目をしてくれていたものでした。よくドライバーさんが「おやじのためにがんばる」と走り続けてくれるというやつです。今もうまく行っている会社はほぼほぼこのような方がいらっしゃいます。
だとしたら、そこにヒントがあるような気がします。まずは仲良くなる、というよりはその人の存在を認めてあげる、というところからスタートしませんか。
(たとえ仕事ができなくても、ちょいちょい事故を起こしがちでも。)
その人の存在。その人の人生の背景。その人の命。そういうものを考えてあげられたとき、自分はここでがんばろう、と思ってもらえたら、それはもうほぼ教育は要りませんね。
そこから先、スイッチが入ったときには人間は自分から学ぶようになるものです。
なので、そのスイッチがどこなのか、と見てあげることが大事なので、話としてはきっかけが教育12項目なのですが、いろいろと話をふってみる、そして、あなたはどう思う?と聞き続けることが大事なのです。
私が顧問契約を始めたのもそこに理由があります。何度も何度も話を投げかけて考えるということをしてもらいたい、そして会社も大事、仕事も大事、だけどあなたの命が一番大事なんだよ、と伝えていきたいと思ったからです。
自分の命を大事にできない人が、目の前の仕事や仲間や会社を大事にできるはずがない。
でもドライバーさんの中には実はこういう人多いんです。
命の話をしても、俺はもう歳だしなぁ、とか、家族もいないし死んでもだれも悲しまないわなぁ、とか、そんなこと考えたことないわ、とか。生きる楽しみすらあまりない人もいます。
家族がいる人が一生懸命働くのがよくわかりますよね。生きがいがそこにあるからです。
まずは自分自身の生きている意味がわからない人たちに、生きることの大切さをしっかり考えてもらわないと、走っているときに横を走る自転車の人の命の重さのことなんか、考えられないのではないでしょうか。
だから、安全教育の前に、愛社(愛車)精神の前に、あなたの命の大切さを考える授業をさせてもらえると本当に助かります。そして、そこからの人間関係をつむいでいくのは配車のみなさんだったり、管理職のみなさんだったり、社長だったりします。なので、そこの実務者の研修も必要だと考えています。対応する側の対応がまちまちだと会社は混乱します。
ぜひその辺の体制も今、この時間のあるときに、ぜひ考えてみてください。
次のメルマガは、そんなことがあった私の顧問先の事例のご紹介をしたいと思います。
その次は実はそういう人格の形成には食事が大きくかかわっているという話に続きます。
みなさまの感想もお待ちしております。長文にお付き合いありがとうございました。
行政書士佐々木ひとみ