音楽か?...どんな闇でもそれを奪えない
この言葉は、イギリス刑事ドラマの最終シーンのセリフだ。私はとてもこのシーンが好きなので紹介する。
どんな闇でもそれを奪えない
刑事モースというイギリスのドラマは、名探偵ホームズに並んでイギリスでは人気のドラマであるらしい。
このドラマは、新米のモース刑事とサースデイ警部が主人公である。サースデイ警部は父親のように時に厳しく、時に優しい。
紹介したいシーンは、狂った殺人鬼がサースデイ警部をコンサートホールの屋上におびき出し、殺そうとした所だった。モースは殺人鬼の狙いを見破り、サースデイ警部を助けに行き、無事二人で殺人鬼を捕まえた。その時のセリフである。
モースはサースデイ警部の家に招待されたこともあり、言葉にしていないが温かい家庭を作っている警部に対しどうやってこんな狂った世界から家庭を守ることができるのか質問を投げかけたのだ。
その時のセリフがこんな感じだ。
音楽か?音楽は素晴らしい。帰ったら一番好きなレコードを大音量で聴け。音の一つ一つを心に刻み付けろ。どんな闇でもそれを奪えない
日本語では漏れもあるので、英語版も紹介する。
誰も奪えないものを見つけ、守ることが大事だということだ。
誰も奪えないものとは何だろう。このシーンから推測してみると、経験や好きという感情ではないかと思う。
持つ様式とある様式
ドイツの心理学者エーリッヒ・フロムが人間の存在様式を持つ存在様式とある存在様式の2つに分けた。彼は、「生きるということ」、原題は、”To have or to be?” であり、英語の原題の方が彼の思想をよく顕している。簡単に言うと、持つ存在様式は、財産や物を所有すること求める心であり、一方ある存在様式とは様々なものと一体になる心の状態である。
フロムの思想に基づくと、奪えないものとはある存在様式で獲得したものであり、経験や思想のように個人の頭の中に存在するものだ。持つ存在様式で得たものは、何らかの災害や人災などで奪われてしまうので、奪えないものと言えない。
主人公のモース刑事は人生の紆余曲折を経て、音楽(オペラ)を愛する心に気が付き始めた。そんな彼に対し警部がそれを大事にするようにと助言を与えたのだ。