見出し画像

映画「私を離さないで」を3度見て

カズオ・イシグロの小説の映画化「私を離さないで」は、とても好きでもう3度も見た。

これは、臓器提供用に作られたクローンの子供たちの物語である。主人公のキャシー・Hは優秀な介護人だが、ヘイルシャムという臓器提供の子供を育てる寄宿学校で育った。苗字がアルファベットなのも、複数クローンがいるかもしれないし、単に名前の区別をつけるためのなのか何かを暗示する設定だ。彼女は、トニーのことを寄宿学校時代から愛していたが、親友ルースが奪ってしまった。後に、3人は離れ離れになった。

キャシーが介護人になって、しばらくして偶然ルースと出会い、更にトニーとも再開した。ルースはやきもちを妬いて、わざとトニーと付き合うことにしたが、キャシーとトニーが愛し合っていることを認め、二人に愛し合うように伝える。

クローンに魂はあるのか

寄宿学校では、マダムと呼ばれた女性が生徒たちの芸術作品を選ぶのが恒例となっていた。生徒たちの間ではなぜマダムが芸術作品を選ぶ理由について噂が絶えなかった。キャシーとトニーは、芸術作品によって愛し合っていることを証明できれば、臓器提供の猶予期間が与えられるという噂を聞きつけ、マダムの家を訪れる。しかし、猶予の噂はまったく根拠のないことであった。マダムの家には元校長もいて、彼らに芸術作品の選別の理由は魂を探すことではなく、魂があるのかを見つけることだと告げる。

この映画のテーマは、クローンに魂はあるのか、という哲学的・宗教的テーマだ。キャシーたちは愛を証明しようとしていたが、実は愛の証明だけでなく、魂の存在の証明、さらには幸せや生きる意味の証明できるのかという疑問もこの作品のテーマだと思う。
臓器提供のクローン子供を作り出す社会制度に怒りを感じることそれ以上に人間の生きる意味とは何かを考えさせられる映画だ。
映画の雰囲気は、常に通奏低音が響いている静かな感じだ。何か含みを持った表情を持った主人公キャシーの演技に魅了される。何度見ても一つ一つのシーンが意味があるように思える名作だと思う。

いいなと思ったら応援しよう!