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シリーズAディープテックスタートアップに入ってみた

はじめに

ずっと好きだったいわゆるディープテックスタートアップに身を置いて1年以上が経ちました。
たった1年2ヶ月ですが本当に色々ありました。その中で感じたことを出来るだけリアルに伝えたいと思います。

そもそも何をしているか

Zip Infrastructureで写真のような新しいモビリティを作っています。

秦野試験線

弊社では自走式ロープウェイZippar(ジッパー)と呼んでいるのですが、その名の通りロープウェイをベースとした乗り物です。
突然ですが、質問です。

ロープウェイで通勤・通学している方っていますか?

多分ほとんどいないのではないのでしょうか。
国内ではロープウェイは山間部や都市部においてはみなとみらいを走るロープウェイが有名ですが、いわゆる公共交通として街中を走っているロープウェイって世界中探してもほぼないです。
で、これがどうしてかというとロープウェイって曲がれないんですよね(私も入社後初めて知りました)
従来のロープウェイって車両がロープに固定されていてロープが動くことによって車両の移動を実現しています。なので色々深い理由はありますが曲線を作るのが難しく、路線の設計が柔軟にできないので、なかなか公共交通として発達しなかった背景があります。
ただ、ロープウェイのいいところは柱などの地上占有物が少ないことと単純に建設コストがモノレールや地下鉄に比べると安いというメリットがあります。
一方でZipparは車両自身が動くことによって車両を移動させます。で、曲線部はレール構造を作ってロープ(直線部)→レール(曲線部)→ロープ(ロープ)といった風に路線を設計します。
まあ、簡単にいうとモノレールとロープウェイのいいとこ取りをして、安く/早く作れる公共交通を開発しましょう!というのが弊社のやっていることです。

弊社の現状

Zipparはまだ研究開発の段階です。ありがたいことに国内をはじめとした多くの自治体や事業者からお声掛けをいただき、導入に向けた調査を進めていただいている自治体もあります。

神奈川県の秦野試験線でコンセプト実証を行い、ここからは本格的な技術的検証の段階となります。現在は福島県の南相馬市に大規模な試験線を建設しており、各種設計も並行して進めています。

また、ファイナンスという意味では今年の夏にシリーズAの資金調達を実施し補助金なども活用しながら技術開発や事業開発を進めています。

では実際に入社してどうか?

前置きが少し長くなりましたが本題です。
まずはディープテックに限らず世間一般で言われるスタートアップで言われていることを、入社後感じたことと紐付けて考察したいと思います。

裁量は大きいか?

信じられないくらい大きいです。
「スタートアップは裁量が大きいのが最大の特徴です」とかエージェントさんから言われたことのある方も多いのではないのでしょうか?
あくまで個人的な考えですが

裁量=落ちているボールの多さ×そのボールが含んでいる意思決定の数(あるいは事業への影響の大きさ)

と定義します。
まず落ちているボールの数ですが入社当時、もはや初日でもわかるくらいたくさんのボールが落ちていました。
例を挙げるとZipparに必要な自動運転/運行システムの仕様が決められてなかったり、秦野試験線の撤去を誰が担当するか決まってなかったり、福島試験線の計画が固まってなかったりとなかなかな状態でした。
上記は一例ですが、3つとも弊社の事業に大きく影響を与える内容であることはなんとなく理解していただけるかと思います。

結局3つとも私がメインで担当することになり、今では名ばかりと社内で突っ込みがきそうで怖いですが福島試験線の責任者とかもやっています。
また補助金運営の副責任者や事業開発も担当できており、本当に多くのタスクを任せていただいており、感謝しかありません。
※若干自慢みたいになりましたが、私が優秀だからではなく単純に人手不足がここまでタスクをいただけている主な理由です。多分今だったら入社すらできてません...
ということであくまで弊社の例ですが、おそらくシリーズA前後は社員もまだ少ない割に事業を一気に推進するタイミングであるため同じようなスタートアップ企業は多いのではないのでしょうか。

カオス??

これもよく言われませんか??
いちいち面倒ですがここでカオスの定義を確認しましょう。

カオス理論(カオスりろん、英: chaos theory、独: Chaosforschung、仏: théorie du chaos)とは、力学系の一部に見られる、数的誤差により予測できないとされている複雑な様子を示す現象を扱う理論である。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%AA%E3%82%B9%E7%90%86%E8%AB%96

なるほど、つまりは予測が難しい(ジュラシックパークではマルコム博士が予測不可能性と説明してたあれですね)ということですね。

その意味では弊社は間違いなくカオスでしょう。
例えばですが、私が入った後の大きな転換点は上野動物園案件でした。
結果的には落選となってしまいましたがその際の代表の思いは下記の通り。

この案件が取れていたら当然今は全く違う状況になっていたでしょう。ただしその状況がとても良いものなのか、逆に悪いものになっていたかは全く分かりません。

上野の件は極端な例ですが、普段から大なり小なり事業の行き先を決める分岐点(意思決定)が多くあります。
あくまで例えですが、どの領域の開発に資金を投入するか、試験線のどの部分から作っていくかなどがそれにあたります。
そしてそれぞれの意思決定がもしかしたらZippar実現の運命を遠因的に決めている可能性もあるわけです。そしてその結果は明日出るかもしれないし、5年後に出るかもしれません。

そういう事業の大きな方向性を決めうる意思決定の機会が多くあるかつそれに携われるという意味では前述の裁量にもつながるとともに、カオスな環境であると言えるのではないでしょうか。

色々整ってない??

本当に正直に言いますが、色々整ってないです。
私は入社初日、自分が使うPC探しから始まりました笑(今は初日にちゃんと付与されます)
他にもまだオンボーディング体制も最低限で、特に大手から転職してきた方はびっくりするかもしれません。
技術開発や事業開発の業務についても、本来文章化/資料化されていた方が良いと思われるものも整備が進んでいなかったり課題がいっぱいです。

逆にそんな状態なので、例えば入社後自分でオンボ体制整えたいと思えば、普通に出来ます。誰も止めませんし、作り上げたものが良ければたぶん採用されます。

結局はどれだけ自分でボールを見つけて、自分で拾いに行けるかが、このフェーズを楽しめるかの鍵になると思います。

夢はでかい

ここからはシリーズAかつディープテックならではという点に触れていきます。

私は普段道を歩いている時、車を運転している時、もしここにZipparが走ったら...という妄想にふける時があります。中央分離帯があればその幅が気になって仕方ありません。

ディープテックというのは研究開発に非常に時間がかかってしまう一方で、実際に目に見えるという点も含めてそのインパクトは大きいです。
エレファンテックさんの最近のプレスとかやばいですよね。リソグラフィが不要になる未来なんて誰が想像したでしょうか...もちろんLSIではまだ必要なんでしょうけど...

Zipparの場合は大企業ですらなかなか手を出さない(それだけ難しい)公共交通の開発に挑んでいるわけですから、実現した際はきっと大きな話題になるでしょう。
もしかしたら Zipparが通ったおかげでその土地の価格が上がったり、大きなビルが建ったりしたりするかもしれません。

今はシリーズAというまさにこれからというタイミングなので、いい意味で先行きが分かりません。
だからこそ「夢はでっかく」という状態でいられるのは、このフェーズならではないでしょうか。

組織のモチベーションという課題

前述の通り、夢はでっかくといってもやはりその実現には長い時間がかかります。
そのため、組織のモチベーションを高く保つにはそれなりに工夫が必要かと思います。
なぜかと言うと、特に技術開発のフェーズでは事業進捗が目に見えずらいからです。

例えばSaaSスタートアップとかで言うと、エンタープライズから受注した!とかARR〇〇億になった!といったような定量的な事業の進捗がシリーズAでも出てくるかと思います。

もちろんディープテックにおいても浅いフェーズでプロダクトが実用化することもあるかと思いますが、やはり通常の事業よりも長い時間がかかることが多いのではないかと推察します。

そのため、ある意味淡々と事業と向き合う癖がついてしまい、スタートアップに必要な勢いやスピード感を損なってしまう懸念が多いのではないでしょうか。

弊社ではそれを防ぐ工夫の一環として常に短期的なゴールを掲げて朝会の資料などで見えるようにしています。

最近でいうと福島での大きな展示会での出展があったのですが、その展示会までのカウントダウンをしたり、全体会議では事業開発部から案件のグッドニュースを共有したりします。

そういう意味では短期的なKPI•KGIの設計がこのフェーズのディープテックスタートアップの組織運営においては非常に大切なのではないかと考えています。

クラファン始めました!

唐突な宣伝ですが、弊社は先日クラファンを開始しました。

Zipparの実現のためにはまだまだ多くの資金が必要です。
これまで投資家からの調達や補助金を活用して開発を進めてきましたが、今後の開発を加速させ1日でも早くZipparを実現させるためにも、本クラファンを始めました!

様々なプランを準備しており、中には福島試験線の試乗なども含まれていますのでご支援&拡散いただけましたら幸いです!


とりあえず今回はZip入社後1発目ということで、社内全体的なことを書いてみました。
いくらでも書きたいことはありますが、長いとアレなのでまたの機会に。
次回予告
Zipに入社してから何をしてきたか?
↑そのうち書きます乞うご期待!
ここまで読んでくださりありがとうございました!

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