[翻訳] 3段階で考える エクスプロイト戦略開発フレームワーク by Saulo Costa
ポーカーにおいて、相手が明らかなリークを抱えていることがわかっていても、それを最大限エクスプロイトすることは簡単ではありません。
今回は以前も取り上げたSaulo CostaのYouTubeチャンネルを再び取り上げ、「エクスプロイト戦略を考えるためのフレームワーク」を紹介している最新動画を翻訳して書き起こしました。
具体例として、パッシブな相手をエクスプロイトする方法が紹介されていますが、このフレームワークは、様々なリークに対する最適なエクスプロイトを自分で考える際に役立つはずです。
パッシブプレイヤーをエクスプロイトする方法
How To Exploit Passive Players
パッシブなプレイヤーは多くのミスを犯します。最もよく知られているリークは、ブラフが充分に打てていないことでしょう。そして、多くの人は適切なエクスプロイト方法が「オーバーフォールドすること」だと考えています。パッシブプレイヤーがベットしてきたら、深く考えずにただオーバーフォールドするのです。
しかし、これはパッシブプレイヤーを最大限にエクスプロイトする方法ではありません。
私はこれまでに何年もソルバーで研究を行い、何千時間も人々の傾向を分析し、さらには最大エクスプロイト戦略を開発するための自動ノードロックソフトウェアを開発しました。
その結果、「3段階のエクスプロイト」と呼んでいるフレームワークを生み出しました。
この動画の中では、パッシブなプレイヤーに対して、このフレームワークを適用する方法を紹介します。
第1段階 - ターゲットアクションをエクスプロイトする
99%のポーカープレイヤーが実践しているのは、この第1段階のエクスプロイトです。
それは、この動画の冒頭で触れたとおり、「ターゲットアクションをエクスプロイトすること」です。つまり、相手がターゲットアクションを行った後に、アジャストを行うというものです。
例えば、あなたが相手はブラフ過少傾向だと考えているのであれば、「相手によるベット」というターゲットアクションが行われた後に、あなたはオーバーフォールドする、というアジャストを行うのです。
実際に相手がブラフ過少なのであれば、正しい対応方法は本来コールするハンドでのフォールドを増やすことです。これは多くのパッシブなREGに当てはまります。
とあるプールのREGのプレイ傾向を見てみます。
B-B-Bのラインを見てみると、ベット頻度は51%ですが、例えば75%PSBを見るとブラフは23%しか含まれていません。75%PSBのポットオッズは30%なので、ブラフキャッチの利益をブレイクイーブンにするためには、30%の頻度でブラフする必要があります。
7ポイントのブラフ過少なので、すべてのブラフキャッチャーによるコールは不利益となり、すべてフォールドすることになります。
ある例をソルバーで見てみると、均衡におけるフォールド頻度は46%ですが、相手をブラフ過少の設定でノードロックをするとフォールド頻度は88%となり、ブラフキャッチャーはすべてフォールドとなりました。
ただし、特定プレイヤーや特定アクションに対して、自分の感覚に基づいて、このような極端なアジャストを行うことには注意が必要です。パッシブプレイヤーでも、ブラフ過剰になるシチュエーションもあります。
例えば、XC-X-Bのラインを見てみます。
GTOであれば、ブラフ頻度は29%になるところを、このパッシブプレイヤーは37%もブラフをしています。同じプレイヤーであっても、違うラインでは違う行動を取ることがあるのです。
パッシブなプレイヤーをエクスプロイトしたければ、どんどんやるべきですが、過度に一般化しないように注意してください。
第2段階 - 隣接するアクションをエクスプロイトする
次の段階は、一つ目のようにわかりやすいものではありません。相手の傾向を広い観点で見た時に、それがどういう意味を持つのかを考えてみます。
これを理解するために、まず前提となる知識を説明します。
リバーブラフを例にとります。適切なベットレンジを構成するためには、バリューハンドの量に対して、適切な量のブラフを組み込む必要があります。
100%PSBの例で考えます。
ベットしたいバリューハンドが10あれば、弱いハンドから5つを選んでベットレンジに組み込み、残りはチェックレンジに入れます。
次は反対に、相手のベットに対して、自分がディフェンスレンジを構築する場合を考えてみます。もし自分がコールしすぎるようであれば、相手はネバーブラフでエクスプロイトできてしまいます。もし自分がフォールドしすぎるようであれば、相手はオーバーブラフすることでエクスプロイトできてしまいます。
オーバーフォールドにも2種類あります。一つ目は、理論的にはコールするべきハンドでフォールドすることです。
二つ目は、チェックレンジに弱いハンドが多く残り過ぎていることによるオーバーフォールドです。相手がオーバーコール傾向と考えて理論上はブラフするべきハンドをOOPでチェックした後に相手からベットを返された場合、均衡よりフォールド頻度を増やさなければいけなくなります。これはチェックレンジが均衡より弱いためです。
私が言いたいことがわかったでしょうか。つまり、あるアクションのバランスが取れていない場合、その結果として、どこか別のところにもリークが生まれるということです。
ベットレンジがブラフ過少なのであれば、その結果としてチェックレンジを弱くなるため、アグレッションに対して脆弱になるのです。
そこで、私は2段階目のエクスプロイトを「隣接するアクションに対するエクスプロイト」と呼んでいます。
あるアクションのバランスが崩れれば、隣接するアクションのバランスも崩れます。
相手がシンバリューを打ちすぎる場合、チェックレンジを守るための良いブラフキャッチャーが少なくなるので、相手のチェックに対してシンバリューベットを増やすことができます。
相手がスロープレイしすぎることにより、チェックレンジが強すぎるのであれば、相手のベットに対して、オーバーコールやオーバーレイズで対応することができるでしょう。
パッシブプレイヤーを相手にもっと稼ぎたいのであれば、相手がブラフハンドでのプレイがパッシブすぎることによって、チェックレンジはゴミだらけになっていることに着目しましょう。
GTOボットとパッシブな弱REGのスタッツを比較してみます。
チェックレンジを比較すると、このようにパッシブな弱REGのほうが弱いハンドの比率が高く、ベットに対してフォールド頻度が高いことがわかります。
このような相手がチェックした時には、ブラフレンジを拡張することでアジャストしましょう。多くのフォールドエクイティを稼ぐことができ、ベットのEVが上がります。
相手がどれだけパッシブかによりますが、本来ピュアチェックのハンドがピュアベットになることもあるでしょう。
第3段階 - 前のノードでエクスプロイトする
最後の第3段階をご紹介します。これはすでに紹介した2つよりもさらに高度で、このレベルでプレイしているプレイヤーは1000人に1人もいないでしょう。高度ではありますが、それほど複雑ではありません。ただ、みんなこのような考え方を誰からも教わってきていないのです。
まずはゲームツリーについて理解をしてください。ツリー図をポーカーの文脈で描くと、このようにゲーム内で起こりうるすべての意思決定ノードと、それぞれに対応したすべての子ノードと、それぞれの利得が表現されます。
ポーカーにおいて、EVを最大化するためには、最も利得の高い分岐を選んでいきます。複数の子ノードで等しい利得が得られる場合、混合戦略を用いるのが最適なプレイになります。(上図で言えば、50%ベットすることもあれば、75%ベットすることもある)
誰かをエクスプロイトするということは、ある子ノードのほうがもう一方より利得が大きくなるところを見つけ、そちらを選択することで利得を最大化するということなのです。
例えば、先ほどの例のように相手がブラフ過少なのであれば、フォールドの利得(EV=0)が最も高い選択肢になるため、100%頻度でフォールドを選択することになります。
相手のミスによって、特定の選択肢のEVが最も高くなったとき、それを選択することがエクスプロイトなのです。
ここで面白いことが起きます。ある特定の子ノードでエクスプロイトによって利得が増加した時、その影響で上位ノードの利得も増加するのです。その結果、その前のノードでのベストな戦略も変わることがあります。
第3段階のエクスプロイトとは「前のノードでエクスプロイトをする」ことです。
相手がこの先ミスを犯すと想定できる時、実際にミスを犯すより前の時点で、自身の戦略をアジャストするのです。そうすることで、より多くのハンドをその相手がミスをしやすいノードへ進むように誘導し、より多くのEVを獲得することができます。
パッシブプレイヤーの例で考えてみます。相手がブラフハンドでアグレッシブにブラフをしてこないことが想定されるのであれば、その結果、前のストリートも影響を受けます。
一つ目に、弱いハンドやブラフキャッチャーを持っている時にアグレッションに直面する機会が少なくなります。つまり、こちらは役なしハンド等でブラフをする機会が増え、ブラフキャッチャーはショーダウンできる機会が増えます。
二つ目に、ナッツ級のハンドをスロープレイするインセンティブが減ります。これは相手が弱いハンドでベットしてきてくれる可能性が低いためです。
この変化を説明するために、独自開発のノードロックツールを使ったパッシブプレイヤーのシミュレーションをお見せしましょう。
BTN (パッシブな相手) vs BB (HERO) の状況における K72r を例にとります。
相手がパッシブで、ターンでのバレル頻度が均衡より低い設定でノードロック(チェック頻度を62%から69%に変更)し、MESを計算します。
その影響は劇的で、フロップでの相手のベットに対して、あらゆるゴミハンドもフロート(コール)する結果となりました。文字通り、あらゆるハンドでのコールが金を生む投資となるのです。
もう一つの重要なアジャストは「強いハンドでスロープレイしないこと」でした。
上図を見てみると、K7、K2のようなツーペアやKQのような強いトップペアが、混合戦略から純粋戦略でのチェックレイズに変わっています。つまり相手がターンでブラフ過少傾向なのであれば、フロップで強いハンドをコール止めすることは利得が減ることになるため、レイズすることが最も利得が高いアクションとなるのです。
以上が「3段階のエクスプロイトフレームワーク」をパッシブプレイヤーに適用した場合の説明です。
まとめると、パッシブプレイヤーをエクスプロイトする方法はこのようになります。
オーバーフォールドによってエクスプロイトする
相手の弱いチェックレンジを攻撃する
強いハンドはファストプレイし、マージナルハンドは前のストリートでオーバーコールする
これで、あなたもパッシブプレイヤーから多くの金を得ることができるでしょう。
Source: How To Exploit Passive Players
翻訳は以上です。読んで頂いてありがとうございました!
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