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オフラインマーダーミステリー「部外者」制作秘話

はじめまして。坂元の歯タロサカと申します。
普段はマレーグマの姿でオンラインで遊べるマーダーミステリーを作っています。

坂元の歯 - BOOTH
↑不気味な雰囲気のシナリオや不気味な雰囲気の本編をぶち壊すオマケギャグシナリオが多いです。アイコンとヘッダーの素敵なマレーグマは家哭のイラストレーターであり、長年の友人である市川茉里(@ichikawamari_6) さんの力作です。

今回はご縁をいただき、店舗公演用のオフラインマーダーミステリーを書き下ろしました。それが記事タイトルの「部外者」です。
シナリオのネタバレはないので、安心して読んでいただければ幸いです。
また、「自分が作ったマダミス(ストプレ)を店舗に持ち込みたい!」と考えている・絶賛持ち込み中の作者様方の御役に立てるかは微妙なところですが、店舗様とやり取りするうえで自分が意識していたことも書いています。
「ほーん」って気持ちで読み流してください。



mystery mansion dots(ミステリーマンション・ドッツ)様との出会い


某オフラインマーダーミステリーのプレイヤーとして、三鷹のミステリーマンションdots様(以降ドッツ表記)を訪れた際、ドッツのオーナーさんが同卓者だったことが今回のお話に繋がるご縁でした。

↓ドッツ公式サイト 館の主・灰色猫のカスペル様がso cute。

mystery mansion dots(ミステリーマンションドッツ) | マーダーミステリーの専門店

その際は、マダミス店舗にシナリオを持ち込むことは考えていませんでした。自分はオンライン活動がメインで、ドッツで遊ぶのもこの時が初めてだったので、店舗様にとってどこの馬の骨だか知れぬ人間が突然「オフラインシナリオを書きますので公演してくださいよへっへでもあなたのお店で遊んだことは(ほぼ)ないです」と言っても、胡散臭いし、失礼だよな…と思っていたからです。

また、宣伝の場でない集まりで「マーダーミステリー作者でして、これこれこういうシナリオを書いていまして‥」と名乗ることも個人的に好きではないので、この集まりもプレイヤーとして遊び、大いに楽しませていただきました。(ちなみに遊んだマダミスは作者NOVAKさんGM「殺意の特異点」でした。面白かった~!殺意の特異点 / マダミス.jp

それから約1か月半後。ドッツオーナーさんから「ドッツ用のマーダーミステリーかストーリープレイングを書いてみませんか?」とお声がけいただき、はい喜んで!と二つ返事。じゃあ早速打ち合わせを…というタイミングで「zoomではなく、ドッツで打ち合わせたいです」とずうずうしく望み、公演と公演の間のとても忙しい時間帯にずうずうしく押しかけました。

このド厚かましい行動、言い訳しますと、オーナーさんからは事前に「公演時間は○時間、人数は○人‥etc」とご要望を伺っていたので、細かい部分はオンラインミーティングで済ませてもよかったのですが、「直接お声がけをいただいたんだし、せっかくならドッツに合うシナリオを作りたい。既存のアイデア集からアイデアを拾って書くのではなく、三鷹を練り歩いて、ドッツを観察して、ドッツという【場】に相応しいシナリオを書き下ろしたい」との無謀な欲望が暴走したからです。(とはいえ、さすがに丸腰でお邪魔するほど剛の者ではなかったので、事前に店舗のHPを読み込み、ある程度構想を練ってから訪問しました。全てボツにしましたが。)

個人的に、マーダーミステリーという、誰かの人生を疑似体験する遊びには「説得力」と「納得感」が必要不可欠であると考えています。それらを生み出すためにも、シナリオの制作者が実際にその土地へ赴き、土地の空気や人の雰囲気、公演場所である店舗の特性を摑むことは非常に重要でオフラインシナリオを書く上でおろそかにしてはいけないと思っています。

などと書くと、「コイツなりにそこそこ真面目に考えているんだな」と思ってもらえそうですが、単純に「お店いい匂いして居心地よかったし、もう一回行きたいな~。打ち上げ用に三鷹のいい感じの飲み屋も探しておこう~」と暇人力を発揮しただけです。(ドッツはアロマを焚いているので、いい匂いに包まれながら遊べます。常時焚いているわけではないので、アロマが苦手な方もご安心ください。)


坂元の歯に求められること、「らしさ」について考えた


そんな感じで電車に揺られ、ドッツを再訪しました。
(今、この記事を書くにあたり当時のメモ帳を読み返していますが、「みたかめっちゃ住みやすそうアトレあるわ」という一文の下に自分が勤める会社と三鷹の往復時間と経路が記されていました。引っ越す気でいたのか。無謀。)

オーナーさんとの初回の打ち合わせで特に印象深かったご要望は「坂元の歯らしさを存分に出してください」です。
「やりたいようにやってくださってかまいません」という有難いお言葉のもと、「坂元の歯らしさ」、「ドッツという場、三鷹という街だからこそ書ける物語」とはなにか、考え続けました。
でも、一人の頭で考えることには限界があります。

ですので、知恵は人から授かろうと、坂元の歯シナリオを数作体験済みの方々へ「坂元の歯マーダーミステリーに何を求めていますか?」と聞いて回ったところ、色々言われましたが、共通していたのは「没入感」でした。「じゃあその、没入感ってどこからきていますかね?」と追いかけたところ、回答は「独特の世界観と読み合わせが多いところかな~」でした。なるほど、と思いました。


マーダーミステリー「部外者」は、読み合わせ皆無なシナリオに仕上がりました。


狂人のハンドアウトを引いたわけではないです。
理由と狙いと制約があっての判断です。

ドッツから「面白く仕上がるのなら好きにやってかまわんぞ」と有難いお言葉をいただいたうえで、「でもここは守ってくださいね」とお願いされていた制約のひとつに、公演時間がありました。
解説を含めて、2.5~3時間の公演に収めること。これが条件でした。
この時間を守るためには、「お前のシナリオはマダミスの文章量じゃない。小説の文章量だ。喉が痛くなる。減らせ、減らせ!」と非難の礫を喰らっている(聞かないふりをしている)普段のオンラインシナリオのように、15分、20分、読み合わせのために使うわけにはいかなかったのです。

また非常に個人的な事情ですが、店舗シナリオを遊ぶ際、視覚的には普段の自分なのに、現実からかけ離れた設定・世界観を補足するための読み合わせが多いと、どうも頭に入らず、台詞をうまく読み上げられないことがあったので、「読み合わせが多くても没入感を損なわないオフラインシナリオを作れる自信と力量はない。なら、いっそ坂元の歯に求められる要素のひとつである読み合わせを捨てよう」と決断しました。

矛盾しちゃいますが、読み合わせが多いシナリオは大好きです!
ただ、自分が作るとなると、今の力量では、読み合わせの要素をオフラインシナリオにうまく落とし込めないな、と断念しました。だからといってドッツの設備に頼りきるのは一作者として情けないとも思い、読み合わせで没入感を高めることを諦めたうえで「店舗の演出」にも頼らない仕掛けがシナリオ自体に必要だと考えました。
補足:ドッツには一面投影のプロジェクターがあります。そのため、オンラインシナリオ同様にグラフィックを用いたシーン切り替えが可能です。また、演出用の照明があり、細かい光量調整・色彩表現が出来るので臨場感が素晴らしかったです。ぜひ、↓公式インスタグラムの店内写真をご参照ください!

マーダーミステリー没入空間『mystery mansion dots』 | #三鷹 #レンタルルーム #レンタル会議室 #パーティルーム #マダミス #マーダーミステリー #マダミスドッツ | Instagram

では、坂元の歯に求められる「没入感」を生み出すにはどうすればよいか。
答えは最初からありました。「ドッツという場、三鷹という街だからこそ書ける物語」。物語の舞台を東京都三鷹市に設定することで、プレイヤーは三鷹に足を踏み入れた時点から強制的に「場」に立っている、それはつまり、実際に店舗へ足を運ぶオフラインシナリオだからこそ味わえる没入体験なのではないか、と。
なんて、えらそうに書いていますが、打ち合わせ帰りの電車でたまたま見かけた周遊型謎解きイベントから着想を得ただけです。(あと店舗マダミス制作者・関係者の方々からは「なにを当たり前なことを……」と鼻で笑われそうですが、どうか許してつかあさい。)


プレイヤーの皆様へ


自分は他の店舗様とやり取りをしたことがあまりなく、また、オフラインの作家様方との交流も少ないため経験も知識も浅いですが、今回のお話は、一作者にとってとても貴重で幸運な体験をさせていただいたと理解しています。
だからこそ、プレイヤーの皆様にも「貴重な時間とお金を使って遊んでよかった」と思っていただけるシナリオを作らなければならない。その覚悟で「部外者」を制作しました。

マーダーミステリー「部外者」は桃郷都美多寡市(とうきょうとみたかし)を舞台にしたミステリーです。

プレイヤーの皆様が「思い遣り会」という不思議な集まりに参加するために美多寡市のドッツ会場を訪れたところから、「部外者」は始まります。
美多寡の街で、ドッツ会場で、いったいどんな事件が起きるのか。
思い遣りとはなにか。部外者とは、誰を指すのか。
ぜひ、東京都三鷹市のドッツで体験してみてください!

タロサカ作「部外者」10月リリース決定 | mystery mansion dots

ちなみに、SNSなどに感想を投稿される際「マダミス部外者」「#マダミス部外者」をつけていただけるとありがたいです。「部外者」だけですと感想が引っかからず、己のタイトル付けの愚かさに歯ぎしりしています。

宣伝・設定資料集


全員分のハンドアウト、エンディング、グラフィックなどまるっと収めた100ページ超えの「部外者」設定資料集(500円)があります。「部外者」を遊ばれた方にGMからそっと案内していますが、強制購入ではないので恐れずに遊びにいってください。

ここまでお読みいただき誠にありがとうございました。

坂元の歯・タロサカ
新作制作中です。ホラーが苦手じゃなければ完成後に遊んでやってください。
タロサカ(@trsk_noha)さん / X


部外者制作における唯一の後悔


毎回朝から晩まで通しのテストプレイだったため、気力体力を使い果たし、初回テストプレイ以降打ち上げにいけなかった。無念。(写真は唯一にして頂点の鳥貴族打ち上げ)

解散後、逆方向の電車に乗り終電を失い、10年ぶりの満喫で夜を明かした

ドッツお隣の居酒屋がいつも混んでいるのでとても気になっている。いつかいきたい。

おだしのだしお【公式】


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