オタクになるための感想批評術

昨今、「オタクにあこがれる若者が増えている」らしい。
というのも、10代~20代の若者にかけて、そういった考え方が増えている、と「映画を早送りで観る人たち」に書いてあったからだ。
私も20代のいわゆるギリギリZ世代、一般的には若者といわれる側であるが、それがマジョリティという認識は一切なかった。
同年代の友人はオタクしかいないし、わざわざなりたいなんて言う奴もいないからだ。

今日は5月18日。どうやら当て字に従って"言葉の日"らしい。なので、オタクになるための感想、批評術をまとめてみようと思う。
「映画を早送りで観る人たち」に書いてあることが本当なのであれば、オタクにアイデンティティを求める同年代は多数いることになる。なのであれば、そのなり方ぐらいは指南してやってもいいだろう。ならんほうがいいけど。
一応検索をかける程度はしたが、実際にオタクになりたいんです!と思いのたけをつづった大変可愛らしいヤフー知恵袋質問も見つけた。
そんな君たちが自分の言葉で思いのたけをつづれるようになれば私も大変うれしい。
オタクにあこがれている若者がいる、というソースについては、上記の本の著者が書いたネット記事があり、こちらにも記載がある。


youtubeのサジェストに●●反応まとめ動画が
あるなら今すぐ人生を恥じろ

お前の想像の中のオタク像は知らないが、自分自身の思うこの人いいオタクだなと思うオタク像は明確にある。
「自分の言葉で物を話してずっと狂っている奴」だ。
基本的にオタク文化と感想批評は切っても切り離せない関係だ。
当然だろう。
映画でもアニメでも演劇でもなんでもいい。基本的にはエンタメコンテンツに重度に触れている人たちをオタクと指すことが多い。
もちろんガジェットオタクや鉄道オタクみたいなものもあるが、いったんわきに置く。
コンテンツに触れれば、何かしら心が動くはずだ。そう仕組まれている。それが楽しみの源泉だ。
であるのであれば。その楽しみの源泉を、お前だけがその作品から通じて得た楽しみの源泉を、言葉にして形にしよう。
ライバルのアイツの行動理由が分からなくてうざかった。主人公がかっこよかった。なんでもいい。
夏休みの読書感想文、つまらなかっただろ。俺は嫌いだった。フォーマットが決まっていて、大人が喜びそうな言葉選びを考えるあの作業が大嫌いだ。そういう気遣いを一切しないでいい感想、批評を行うのはすごく気持ちがいい。なんでもいいから、まずはやれ。

そのうえで、見出しの話につながる。もし、感想をひねり出そうとする際に●●反応まとめ的なものを見る習慣が、もしお前にあるのであれば、今までの人生を今すぐに恥じろ。ひろゆきやホリエモンをチャンネル登録してる?論外だ。
それはインターネットの誰かや、子気味のいい斜に構えた意見を都合よく用意することでお金を稼いでいる奴らの言葉で、
"お前の言葉"じゃない。人はあまりにも弱い。Aと思っていなくても、実際に自分の考えを固める前にAとたくさん聞けば元からAだったと思い込んでしまう節がある。
もしお前が本当に"個性的なオタク"になりたいのであれば、今すぐその手のコンテンツから手を切れ。例示しておく。

・反応まとめ動画
・インターネット掲示板(たまにすごい味のする増田があるんだが、今のお前に判別は無理だ)
・Togetter
・ファスト映画(論外。上記三つと違って法を犯している)

もしお前が寝る前にこれらを見ながら寝落ちしているなら最悪だ。まだシコって寝る方がマシ。
どうせなら小説でも読め。ラノベでもウェブ小説でも何でもいい。

お前が見るコンテンツはお前が決めろ

「彼らは作品を"コミュニケーションツール"として使っている。ツールである以上、興味がないから観ないとか、途中まで観てやめるという選択肢はありえない。会社員で言うなら、事前に配布された会議資料に目を通しておかないと、会議で議論に参加できず、ハブにされるのと同じだ」

https://gendai.media/articles/-/83898

は?馬鹿じゃねーの。同じ作品を見てなかったハブにしてくるやつとなんか友達付き合いやってんじゃねーよ。
何のために生きてるんだお前。自分の言葉で、知識で物を話してそれがなかなかに的を射て面白い。だからお前は"個性的なオタク"がキラキラ輝いて見えているんじゃねーのかよ。お前のことを微塵も考えていないやつに時間を使うんじゃねぇよ。
お前、お前、お前。お前はどうなんだよ。友達が見てたからじゃなくて、お前はどうだと聞いている。
何を見たら心が躍る。何を見たら苦しい。何に怒りを覚える。
分からないか?そうだろうな。分からないからお前は感想まとめ動画やひろゆきの切り抜きから納得できるものを探すんだよ。
図星だったとしたら、これを読んでムカつかないか?
そうだ、それだ、それが"お前"だ。
自分が何を考えているのか、どうしたいのか、考えるのが苦手だ。
いいじゃないか。それが分かれば一歩前進だ。
もしかしたらそういった主人公がもがき苦しみながら何かをつかもうとする作品が"お前"には刺さるかもな。

なんでもいい。お前の人生の中で抱いたコンプレックス、優越感、トラウマ、そういう人間として柔らかい部分を全部引っ張り出したときに、多分本当に好きなものってのが分かるんだよ。そんなもん誰かと全く同じなわけがねーだろうが。
お前で考えてお前が見るものを決めろ。当然中には外れもあるだろう。その中でキラリと光る何か、狂える何かを探すんだ。
タイパが悪い?知らねーよ。勝手に生産性でも高めてろ、こちとら好き勝手に趣味をやりたいって話をしてるんだろうが。
別に創作物にこれらが見いだせないのであれば別にそれはそれでいい。適正ってもんがある。交際相手とそれを深めるなり、スポーツをするなり、いくらでも代替手段はある。なんならそっちの方が生きていくのは楽だ。
そうできるならそうしろ。オタクなんかよりよっぽど生きやすいし、楽だし、つらいこともすくねーよ。
そうやって狂えるもの、毎日でも考えてしまうようなこと、自分の思考の癖が分かって”好きなもの”が見つかったら、次だ。

頭を使え、勉強しろ。
死んでもエモいなんて言うな

「カタルシス」「アナロジー」「メタファー」「マクガフィン」
批評・論評だとかによく出てきがちなカタカナワードをいくつか挙げてみた。お前はいくつ分かる?
あぁ、あれでしょ、あんな感じの……といったあいまいな説明しか思い浮かばないならそれは数に入れるなよ。
別に意識高い系になれと言っているわけじゃない。
ただ、語彙の数はそのままお前が見えることのできる、感じることのできる世界に直結する。
俺たちがリンゴをリンゴとして認識できるのは、「リンゴ」という言葉を知っているからだ。
そしてその共通認識があるから、わざわざ赤くて丸くて、中の果肉が白い果物なんて言わなくて済む。
この世にはインターネットという便利なものがあるが、それも所詮は「検索ワード」を入れなければいけない。
つまり、インターネット検索から、まぁTwitterとかインスタグラムの検索でもいいけど。そういう検索からお前が得ることの出来る知識も、お前の語彙に比例する。
先ほど挙げたリンゴにしても、味が好き、嫌いとしか考えないやつもいれば、禁断の果実とされることもある、と考えるやつもいる。
よく禁じられた恋的な文脈の作品にリンゴが出てきがちだが、そのメッセージを受け取って自分でも発信できるかどうかは、お前の語彙と、知識に依存する。いっときかしこい人とバカな人の比較マンガみたいなものが流行ったが(あの顔があほそうなやつだ)、まぁまぁ言いえて妙なところもあったと思う。
もし本当に"個性的なオタク"なオタクになりたいなら。エモい、映えるでなんでも片づける人間には死んでもなるな。それしか言わないやつとの付き合いは切れ。軽蔑しろ。俺はそのたぐいの人間のことを心底軽蔑しているし話したくもない。

だからこそ勉強をしろ。特にこういったアイデンティティの悩みを抱えているのは中高生のがきんちょのことも多いだろう。
もし家庭の事情や、学級崩壊によりどうにもならないなどであれば別だが、そうでない限り学生という身分は天国だ。
大人は口をそろえて勉強しろというだろう。ムカつくだろう。もっとしたいことがたくさんあるだろう。
ああ、それもやったうえで勉強しろ。別にエモいと映えるで生きていきたいならしなくてもいい。
ただ、特別な何かになりたいなら。頭を使え、勉強しろ。死んでもエモいなんて言うんじゃねぇ。
偉そうに言っているが社会人の俺もそこまで勉強に時間を割けているわけじゃない。
みんなできねぇんだから、出来たらお前は特別だよ。
またここでいう勉強は別にテストだけのことじゃない。お前が知らないこと、知らない理屈を叩き込むことすべてを指している。

間違ってもいいから、とりあえず知らなかった言葉を使ってみろ。笑われてもいい、変だといわれてもいい。
好きで好きでたまらないものを表現して、伝えるためには、武器が多ければ多いほうがいいに決まってるからな。
ちなみにオタクをやるにあたっておすすめの学問がある。論理学と哲学だ。心理学とかもいいかもな。
あぁ、どれも大学で勉強するとまともに就職できないぞ。"普通なら"お勧めしない。
ただ、いわゆる伝えるための武器としては最強クラスだ。興味があればちょっと新書をかじってみるといい。
「トロッコ問題」「世界五分前仮説」「ラプラスの悪魔」は比喩表現として創作物には頻出だ。
この辺だけでも、調べてみるといいかもしれない。

間違いたくない?
お前は神様にでもなったつもりか

間違った感想を言ってしまったら叩かれるかもしれないから、言いたくない。
SNSには、もっと詳しい人がいるから、別に自分が好きと表明しなくてもいい。
「映画を早送りで観る人たち」には、若者に批評が流行らない理由として上記のようなメンタリティがあると概ねまとめられている。

なんだお前は。全知全能の神様にでもなったつもりか。間違えないほうが賢いとでも思っているのか。
別に根性論がいいたいわけじゃない。傷つかないといけないといいたいわけじゃない。
ただ、最初から物事がうまくいくわけねーだろ。俺たちは全知全能の神様じゃなくて、弱くて哀れな人間でしかない。
よくよく考えてほしい。Twitterで「●●って映画面白かった!●●が好き!」という感想をつぶやいたとして、
そこに引用RTで「何も考えてないバカ」とつけられたとしたら、そいつをブロックしたら済む話だろ。
確かに人間は哀れで弱い生き物だから、距離感を図れずにそういったマウントを取ることでしか生きる意味を見出せない類人猿は多く存在する。
でも、その類人猿たちが嫌だから、"お前"を殺してしまうのか?カスみてぇな奴のためにお前の感性と気持ちをないがしろにしてしまうのか?勿体ない。
そりゃ初めて感想批評を真剣に書いてみたら、まぁ穴だらけだろう。誰だってそうだ。でもそれはお前の楽しみ、喜びが否定されたわけじゃない。別に次、その次にもっとうまくやればいい。
オタクを通じて特別な何かになりたい、自分を好きになりたいのであれば、別に批評じゃなくてもいいが、コンテンツに対してそれ相応に時間は使うべきだろう。
何度でもいうが、別にいやならしなければいい。代替手段はごまんとあるし、なんなら人生の生きやすさはそちらの方がたいてい優れている。ただ、それをしないまま、倍速視聴とファスト映画を見続けたまま、漫然とオタクにあこがれることだけは俺が許さない。
俺の"好き"を、そんなあまっちょれたものだと勘違いされては困る。プライドの問題だ。だからこんな駄文を書いている。

アイデンティティをオタクに寄せるのは
本当にやめておけ

さて、長々と書いたがなんて面倒くさそうなんだ。
もう一度言う。いやならこんなことはしなくていい。別にお前にとって映像作品が今俺が書き上げた内容程度の価値を感じないのであれば、倍速視聴や飛ばし視聴をすればいい。別にそれは自由だ。
俺だってyoutubeの暇つぶし動画は適当に飛ばし飛ばしに見るし、AVは実際の行為のシーンしか見ねぇ。"俺にとって"それらはその程度の付き合いでいいか、と思っているからだ。
「映画を早送りで観る人たち」を読んだことで、その人たちにとっての映画やアニメとの付き合い方がそうであるということが分かったので、これは本当に良かった。自分にとっての異文化だったが、自分も確かに似たようなことをほかのコンテンツに対して行うことがある。必要以上に攻撃してもお互いのためにならない。ただのスタンスの違いだ。
ただ、これらを行ったうえで「オタクにあこがれる」といった文脈だけは我慢ならない。同じ畑に入るなら、それなりに郷には従ってほしい。君たちの大好きな言葉で言うなら、これを行ってアイデンティティを獲得することは、「ものすごくコスパが悪い」。
物凄く時間がかかるし、金もかかるし、まともな人間生活は送れなくなるし。

もしそれでも、一目置かれる特別なオタクになってみたいなら、まぁ上記の内容をやってみるといい。
狂ったオタクは、別ジャンルの人間だったとしても見ていて豊かな気持ちになる。心の栄養になる。
実際書いてみて俺自身もシャキッとした。もう少しインプットを増やそうかと思う。
狂った先で、いつでも俺は君たちを待っている。


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