プロローグ4
千晴:「ふー、きまったぜー…(キラキラ)」
WC:長かった…
玄:「ふらふらだよもー…運転代わってくれよ(笑)。」
千晴:「まったく…一食おごれよな。」
玄:「高くつくなあー。」
千晴:「で、お嬢さん、大丈夫ですか?」
女性:「え、あれ、あれれ? ちょ、何だったの今のオバケ?
というか、君たちのその剣とか盾とか魔法とか…」
玄:他に怪しい気配は?女性は千晴に任せといて(笑)
他の気配を探る。
WC:ミギワは、コノヤの消失とともに引いている。
怪異の気配は消えているようだ。
千晴:「えー、通りすがりの、『勇者』と…」
玄:周りを見ながら「魔法使いですよ。」
千晴:とりあえず、一安心だね。
玄:「なんか他にもいっぱいいたような…
とりあえず、ここはもう平気みたいだな。」
女性:「ふうん…私の記憶では自分探しのフリーターと、腕がいまいちな喫茶店見習いだったけど?」
千晴:よかった、「お前は遊び人だろ」って突っ込まれなくて
玄:「…人違いだな。」
WC:女性の顔には確かに見覚えがあった。
3年くらい前に、クロノアの常連の一人であり、遊び友達の一人でもあった夏川夕日(なつかわ・ゆうひ)だ。
千晴:「あー!!!ほれ玄!夕日じゃん!」
WC:頭の回転が速く親しみやすい性格の彼女は、当時クロノアに出入りしていた同い年くらいの連中の中でも一際目を引く女性だった。
千晴:最近あわなかったのはなんでだ?
WC:2年半くらい前に、ふいと姿を消し、音信不通になっていたのだ。
千晴:「奇遇じゃん!こんなところで何してたの?これって運命?」
WC:うわさでは、結婚したとか、不倫の末に略奪婚で…とか…
千晴:きにしないきにしない!
WC:いずれにせよ、性的な匂いの薄かった彼女にはあまり似つかわしくない噂で、仲間内でも彼女について話すのはどこかタブーのようになっていた。
千晴:まあ、人間いろいろあるからねー。
玄:「あれ、そういやお前…」
夕日:「あはは。千晴君は今もそんなキャラか。」
千晴:「なーんだ、キャラってばれちったか。」
玄:「千春、千春、夏川だよな(ぼそぼそ)」
夕日:「聞こえてます。大丈夫。今は夏川。」
玄:「あー、へー。」
千晴:「あれ?結婚とか、略奪とかは?」
玄:「おいおい、そりゃ与太話だろ?」
千晴:「まあ、ほら、他人のモノになっちゃうのはやっぱり寂しいじゃん、元仲間として。」
玄:「幸せならいいだろ(笑)。」
千晴:「実際、仲間内でなにも力になれなかったわけだし…」
夕日:「んー…色々あって、今はただのしがない雇われ店長なんだけどさ。」
玄:「あ、そうなん?」
夕日:「あのころのみんなには、ちょっと悪いと思ってるんだよ?」
玄:「別に悪かーないけどさ、聞いてる限り顔出せないわけじゃーないんじゃね?また遊びに来いよ。」
千晴:「んだんだ。最近みんな仕事で忙しくて、俺と玄ぐらいだけどさ。
そっちは何の店?遊びに行くよ。」
夕日:「久々里にある小物屋…というか、輸入雑貨品店?
久々里市は、物語の舞台である珠間市の隣の市。
WC:夕日は、『amarach』と印刷された小さなカードを差し出す。
裏面には地図や簡単な取扱商品の紹介が。
玄:「へ~、なんかちゃんとしてそうだな(笑)。」
千晴:「あまらちぇ?」
夕日:「ほんとの読み方は『アモーラハ』なんだけど、よめないよね(笑)。
アマラックとか呼ばれることが多いかな。
玄君は、クロノア?」
玄:「そうだよ。今は同じく雇われ店長でやってるけどね。」
夕日:「店長!大変だね!」
千晴:「おばさんの味がまったく再現できてねーの!」
玄:「常連て苦労するよな…」
夕日:「それじゃ、今度、久々にお邪魔しようかな。」
千晴:「うん。きてきて、仲間が来るのは大歓迎!お友達も連れてくるといいよ。」
夕日:「…で、勇者と魔法使いやってるなんて初耳なんだけど?」
玄:「そ、そろそろ行こうぜ!ここ気分悪いし。送ってくよ夏川。」
千晴:「え?!おれ荷台?」
玄:「いやー、俺クタクタだから運転変わってくれるなら席で(笑)。」
千晴:「えーと…」
玄:「免許あったっけ?」
千晴:「失敬だな、あるよ!」
夕日:「はい誤魔化さない。
普通手から剣とか盾とか爪とか出ないよね。ごめん最後のは出るけど。」
玄:「でしょー!?深く考えなくていいよ(笑)。」
千晴:「まあ、あの頃から、こういうことはできたんだけどね、紹介できないじゃん『これが僕の剣ですよろしく』って。
なんか卑猥な感じだし。」
玄:「卑猥ならある意味ありじゃないか?(笑)」
夕日:「『かわいいショートソードね』とか言われちゃったり(笑)。」
千晴:「ショートソードじゃないよ!…だから、こうこっそりとね、モンスターやっつけてゴールド稼いでます。」
夕日:「なるほどなるほど。」
玄:「おーい、人の話きーてるかー。」
夕日:「でもまあそうね。深く考えなくてもいいか。」
玄:「かえろーぜー。」
夕日:「あ、私も車だから、送ってくれなくて大丈夫。
千晴君も荷台は暑いだろうし。」
千晴:「そうだよ。昔と俺たちなにも変わってないと思うぜ。
気楽にルイーダの酒場に来てよ。」
玄:「誰がルイーダだ。」
夕日:「ギルガメッシュ?」
玄:「まあ、それなら…いいのか?(笑)」
夕日:「私、馬小屋で寝るのはちょっと…」
玄:「安いよ。アンチエイジ的にはあれだけど(笑)。」
夕日:「馬小屋は年取らないのよ。」
千晴:「そっちの話しに行っちゃう?」
玄:「だめだ、相変わらず、のせられる(笑)。」
夕日:「うーん…馬鹿話しちゃうわね。」
千晴:「そのげーむあんまりしらねーんだよな。」
玄:「渋くていいよ。」
夕日:「特に試練場ね。
…おっとまた。それじゃ、助けてくれてありがとね。」
千晴:「おう(笑)。またなー。気をつけて帰りなよ。」
玄:「気をつけてな~。」
夕日:「またね。」
WC:姿を見せなくなったときの微妙な確執が。
会うことの出来なかった時間が。嘘のように消えてゆく不思議な人柄。
玄:「何してたんだあいつこんなとこで。
まあ、お姫様助けましたでいいかー…味が落ちて客離れじゃないかとか、思ってなかったけどね!」
千晴:「うーん…!!あ!!!!」
WC:あのころと変わらぬ笑顔を残して夏川夕日は去ってゆく。
千晴:「携帯聞き忘れた!!!!」
玄:「致命的だな(笑)。」
WC:だから三流ホスト(笑)。
千晴:「いや、また会えるさ、きっと…」
WC:夕日の去った余韻が消えたとき、周囲の異常な気配も消えている。
東の空から放たれた気配は、それが嘘だったかのように霧散しており、この黄昏の出来事は一端の結末を迎える。
しかし、物語は、その2日後、当たり前のように再開するのである。