ホロ甘い星
バレンタイン特別小説
お礼チョコ兎季から三津星先生へ
モチーフ
フーシェのチョコ
「ねぇ兎季明日一緒にデパート行きましょうか」
「え?何急に、どうしたのお母さん」
母親はなぜが随分と機嫌がいい、特に自分の用事もないが、何か裏があるのか少し面倒そうだなと思ってしまう。
「あ!今面倒だなとか思ったでしょ、んもうたまにはお母さんとお出かけしてもいいじゃない」
「いや…べつに…」
どのみち断っても、僕は目の前の面倒ごとに強制的に巻き込まれる運命のはずだ。
だってうちの家系はかかあ天下である、父親も穏やかな性格で基本的に母親に頭が上がらない、父親は最近になって僕に「兎季、お母さん、いや世の中女の人を怒らせると大変な事になるそれだけはしっかり覚えててくれ」
そんな事を言われた過去を思い出す
その時は一体何を言ってくるんだこの父親はくらいにしか思っておらずめちゃくちゃ聞き流していた。
「いいけど、なんでデパートなの?」
「これよ!これ!もうすぐバレンタインでしょ?お父さんのチョコレート選びに行くのてつだって!」
「もちろん!兎季にもあるから!」
「……いいよ、別に」
恥ずかしいから巻き込むのはやめてほしい。
翌朝
「さぁ兎季!色々見て回るわよ!荷物持ちお願いね!」
「…うん」
そうして朝早く母親に駆り出され、兎季は午前中たっぷり引き連れ回されることになる。
ハートや宝石の形をしたチョコレート達
言われなければわからないような綺麗なお菓子たちがガラスケースの中にお行儀よくならんでいる、それを母親があーでもないこーでもないというような表情でとても真剣にショーケースを眺めていた。
自分は特にハートのチョコに興味はない、がしかし視界の端に何か気になるものが映った。
「惑星……チョコ」
導かれるようにショーケースに近づいた。
「わぁ、すごい、本当に惑星だ…」
「いらっしゃいませ、どうぞごゆっくりご覧ください」
綺麗な販売員さんに声をかけられたが、目はショーケースの中のチョコレートに釘付けだ
金粉や銀粉、高価そうな材料がふんだんに使われてキラキラとチョコレートは輝いている甘くほろ苦い香りが鼻腔を擽り、兎季の好奇心が疼いた。
(こんなチョコ、三津星先生が見たら驚くだろうな)
見た目もさることながらお値段もなかなかである、自分の財布の中身を確認して、兎季は覚悟を決めた。
「あの…すみません」
「「いただきまーす」」
母親の買い物が終わりご褒美のパフェをご馳走してもらった。
母親はイチゴのミルフィーユ、僕はイチゴチョコのパフェを頼んだ。
特に甘いものが好きかと言われればなんとも言えないが、いちごは好きなのでいちごがたくさん食べられるパフェはなんだ得した気分になる。
「そう言えば兎季もなにか買ってたけど、何かいいの見つかったの?」
もりとりといちごとクリームを頬張っていたらそんなことを言われた。
「え……いや」
「あ!もしかして気になる子でもいるの?!!」
「ちがうよ!!」
即座に否定すれば母は残念とばかりに肩を落とした。
「なんだ違うのか」
「何を勝手に想像したのさ」
この年頃だからなのか、少々母親との会話に一種の脱力を感じるようになっていた、やめてほしい、切実に。
「宇宙柄のチョコレートがあったんだ、それ買ったの」
「あぁ!あれねお母さんもみたみた、最近のチョコって本当に凄いわよねぇ…じゃあ三津星先生とこに行くの?」
「ん?…う、うん」
「遅くならないうちに帰りなさいよ、一応受験生だしね」
「うん」
宇宙=三津星先生と言う解は母の中で当たり前になってしまっているようで、母は別の話題に花を咲かせ始めた、それに自分もどこか安堵して、それなりの相槌をうってパフェにら舌鼓をうったのであった。
一度家に荷物を置いて、僕は違う路線のバスに乗り込んだ、バスに揺られること1時間、道が混雑してたのもあり中々に時間がかかってしまった。
メールで三津星先生がまだいる事はわかっていたので焦らずに目的地へと足を運んだ。
「こんにちは、三津星先生いらっしゃいますか?」
「こんにちは…面会希望ですね、確認しますのでお待ちください」
「おーい!兎季くーん」
「あ、三津星先生!」
受付の女性が確認を済ませる前に三津星先生自ら受付にやってきた。
おろし立ての白衣に身を包んだ三津星先生はなんだか少し新鮮で背筋が自然と伸びる。
「こんにちは」
「こんにちはー、今日はどうしたんですか?」
「あー、はい、これ」
なんだか急に恥ずかしくなって、ぼくはぶっきらぼうに綺麗な紙袋を差し出した。
「?」
「珍しいチョコレートだったので、よければ食べてください」
「チョコですか?わぁ!ありがとうございます」
三津星は花が綻んだようにニコリと笑う。
「じゃあこれで…」
背中が妙にソワソワして思わず踵を返すが
「そうだ、今日美味しいドリップコーヒーもいただいたんですよ、兎季くんも一緒にお茶にしませんか?」
「わぁ!チョコなのに惑星になってますね!凄い!なんだか食べるのが勿体無いですねぇ」
チョコの蓋を開けた三津星先生は予想以上に喜んでくれていた、ここまで喜んでくれたなら買った甲斐があったというものだ。
「先生、もう体調は大丈夫なの?」
「おかげさまで、仕事にもこの通り復帰できました、まぁ通院は終わってませんが」
「でも、元気になってくれて、本当に良かった」
マグカップにコーヒーを注ぎなが三津星は話を続ける。
「兎季くんも、もう大丈夫ですか?」
「うん……でも今はそれ以上に受験勉強が忙しいから逆にへっちゃらです」
「ふふ、兎季くんも来年からは高校生なんですね、早いなぁ、また背も伸びたんじゃないですか?」
「そうかな?自分じゃあんまりわかんないかも」
あったかくて少し苦いコーヒーと大きくて小さな惑星を口に頬張れば、三津星先生は幸せそうに微笑む。
その笑顔を見ていたらこちらまでなんだか嬉しくなってしまう、三津星先生はそんな不思議な雰囲気を持っている人だ。
ぼくは頬杖をついて先生に話しかけた。
「先生って、甘いものもなんでも美味しそうにたべるよね、苦手な食べ物とかないの?」
「んー、そうですねぇ、極端な味付けの料理とかでなければ、基本何でも美味しく食べれますよ、それにしてもこのチョコ凄く美味しいですよ!兎季くんも食べてください」
「先生が全部食べてよ、先生の為に買ってきたんだからさ、それに」
「?」
「ぼく、三津星先生が美味しそうに食べてるの見る方がいいや」
心がポカポカしてきて、ぼくは一口コーヒーを口に含んだ、口には香ばしくて苦い味が広がる。
少しの間三津星先生はキョトンとしていたが、楽しそうにふふッと笑ってくれた。
「ふふ、兎季くんボク呼びに戻したんですか?」
「うん、なんかどうでもよくなっちゃった」
「うんうん、どんな兎季くんでも私は良いと思いますよ、なんだか無性に将来が楽しみになってきました」
「どういうこと?」
「ふふふ、秘密です、兎季く〜んこっち向いて下さい」
不意に口の中にホロ甘い球体が放り込まれた。
「むぐっ」
「兎季くんにはファイ・エリーダニをあげましょう」
「えっ?そんな難しい名前のチョコあったっけ?」
ファイ・エリーダニ
星言葉 幸せを分かちあう清い心
あとがき
ものすごくお待たせした割には薄っぺらい内容になっているような気がしてならない。
ライカ自陣の2人はなんだかふわふわしててお互いゆるっとしたイメージがあります。
これからも2人はニコニコしながら楽しく探して欲しいものです。