海も枯れるまで自陣3周年記念ss
現行未通過の方は閲覧をご控えください、直接的なネタバレはありませんが念の為ワンクッション
どうもレモンティーです、もう早いことに3周年ではありますが、マリアは23歳、樹くんは18歳かな?時間が経つのはとても早いものです。
今回はそんな二人に思いを馳せて、どんな生活をしているのかを現在の時間軸で考えてみました。
「マリアさーーーん!準備できたぁー?」
「はいはい、もうすぐだから先に外出てていいよ」
「わかった!!」
ガチャと勢いよくドアが開け離れた音が聞こえる。
今日は久々に朝から樹くんと出かける予定だ。
仕事の繁忙期も抜けて、満を持しての連休。樹君がテレビをみて気になっていたカフェに行き、そのあとは最近できた水族館に行く予定だ。
冷たい風が頬を撫でる11月、毎日元気いっぱいな樹君も流石に半袖半ズボンではいられない……が、彼はシンプルに動きやすい服を好むため、黒のカーゴパンツにスポーツインナーに藍色の半袖シャツを身につけている、身長もぐんぐん伸びているので、普通に女の子から声をかけられてもおかしくないくらい格好良くなって……
「はっ、私何考えてんの…」
鏡の前で支度の手を止めていたマリアは我に帰った。
樹君とのお出掛けは何もこれが初めてでは無いが、今日はやけにキマらないのだ、チェック柄のスカートやら柔らかいゆったりしたニットに少しタイトなレザージャケット、スマートに行くべきかモダンで行くか、そのどれもがしっくりこず
急かされたマリアは、あれこれと考えるのをやめて、シンプルな白のニットワンピースを着る事にした。
「やだ、ちょっと太った?」
去年は少しゆとりがあったスカートはくっきりと体のラインに沿っている隙間が無い。
モデルの第一線から離れた今は過度なダイエットをやめている。
今のマリアは樹くんと2人で、楽しく暮らせる事を第一としているので、よく食べ、よく寝て、(樹くんは良く走り)そして広告代理店で忙しなく働き、たまに貰うモデルの仕事をこなして、休みはめいっぱい遊ぶ、それが今の生活である。
少し丸い輪郭と大きな傷がついた顔、自分自身は見慣れたが、他人はそうでは無い、なるべく化粧で隠し痛々しさを隠しているとはいえこの傷はそんな小手先の技術でどうなるものでは無い
「流石にこれ以上太ったら樹君に見放されちゃうかも……」
彼だってお年頃なのだ、何があってもおかしくは無い。
太った事実に軽くショックになりながらも、マリアはお気に入りの帽子を被ってバックを引っ掴み早足で家を出たのであった。
「今日すっごく天気いいね!マリアさんっ!」
「そうね、雲もないし、晴天ね」
長閑な田舎、とまではいかないが、駅から離れているので人通りはほとんどない、そんな道を二人で進む
そしてふと、車道側を歩く彼をみて思う、隣に並んだ時に樹君は少年というより、男の人なんだと思うほどに彼は成長している。
「目線も、いつの間にか越されちゃった」
「ん?どうしたのマリアさん?」
思ったことが口に出てしまう、うまく聞き取れなかったのか樹はマリアの口元まで顔を寄せた。
「えっ!」
その近さにマリアはたじろぎ、後ろに身をのけ反らせ、そしてバランスを崩す
「ちょっ、あ、あれ?!」
「わっ!マリアさん?!」
咄嗟に樹がマリアを支えてアスファルトに尻餅をつく事は回避された。
「大丈夫マリアさん?」
心配そうに樹がマリアを覗き込んでいる
「う、うん、ありがとう樹くん…もう大丈夫だよ」
「わかった!…あっ!!そうだ!」
「えっっ、どうしたの?急に大きな声出して」
「あわゎ、ごめんねマリアさんびっくりした?」
「ちょっとだけ?でも大丈夫よ、それより何か忘れ物でもした?」
「ううん違うんだ、マリアさん今日は手繋いで行こ?」
「手を?」
「うん、そうしたら、さっきみたいに転けそうになった時、助けられるでしょ?」
ニカッと屈託なく笑う彼は自然にマリアに手を差し伸べる。
どんなに時が経っても、彼のこういう真っ直ぐな優しさや純粋さは出会った時から変わらない。
「ありがとう樹くん」
マリアも自然と微笑み、差し出された手を握り返す。
「マリアさんはあのお店で何食べたい?
オレはね、おっきいハンバーグ食べたいんだ!」
「ふふっ、そうね……私は美味しい魚料理がいいかな」
「それも美味しそうだね!」
寒空の下、楽しそうに言葉を交わす彼と彼女の目線の先には穏やかに凪ぐ海が佇む。
視界いっぱいにずっと 海が 一面に広がっている
その海はあの日の海ではないけれど、それでも何故か2人の事を優しく見守っている様な
そんな気がした。
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