good morning all  自陣二次創作小説

テディベアズデー 

10月27日

雪が降るにはまだ早いこの頃、よく分からない森から抜けて街中に降りると、何処を見ても町中カボチャで埋め尽くされている。
「………?」
カボチャ以外にもよく見たらゴーストや蝙蝠にドラキュラだろうか、おどろおどろしい飾りがポップなカラーで可愛らしくカボチャと共に飾り立てられていた。
掲示板を覗き見ればHalloween partyの張り紙が目につく。
「ハロ…ウィン」
そんな催しが遥か昔の記憶にあった様な、無かった様な、忘れてしまった様な…まぁいっかと思い彼女はポケットに両手を仕舞い込み当てもなく街を歩き出した。

ハロウィーン…はて、確かお祭りだった様な気がしている、しかしどんなお祭りだったのかさっぱりわからない。

「「トリックオアトリート‼︎」」
魔女やお化けの姿をした子供たちが元気に通り過ぎる、そのうち何人かは目が合うと頬を染めて逃げる様に去っていく。

「…………」
ハロウィーンの事は結局思い出せないが、楽しそうだと言う事は理解できた。

街中を歩き回り、いつの間にか広場まで来ていた、どうやら蚤の市が開かれている様で様々な露店が軒を連ねていた。

「やぁ、そこの美しい…銀髪に夕日色の瞳のお嬢さんウチの店見て行かないかい?」
「………?」
声をかけられたと気づくのにはかなり時間がかかった、隣を振り向けばシワシワで白い顎髭を蓄えたお爺さんが一人手招きをしている。
近寄ればお爺さんの目の前にはボロボロの布の上に珍妙な品々を置いている。
草臥れた焦茶のコートを纏って眉毛も白く、そして瞼をも覆い隠していた、表情は窺い知れないが、自分に声をかけたのかと問えば
そうだ、と頷いた。
「今日はいろんな品を置いていてね、お嬢さんにも気にってもらえるかも知れないよ」

でも私は知っている、彼らの生活の中で物を売り買いする時はお金が必要になる、しかし私は持ち合わせが無いため首を横に振った。
「お金がないのかい?」
「…うん」
「大丈夫だよ、ウチの店はね、商品が客を選ぶのさ」
「?」
言葉の意味がわからず小首を傾げた。
「まぁ、見たら分かるさ」
言われるがままに骨董品を眺める、壊れた時計や欠けた陶器、見れば見るほどガラクタの様な物ばかり、柄や形は量産品とは異なるのか一つ一つは丁寧な作りだった事は分かる、見るだけなら退屈こそしないが、お爺さんの言っている"商品が客を選ぶ"とは一体どう言う事なのか…

ふと、目の端にフサフサの金色が映った、何となく気になり金のフサフサを見ると、そこにはとても綺麗な毛並みのクマのぬいぐるみがあった。
「おや珍しい…テディベアに気に入られた様だね、それは若くして亡くなった寡作の人形師が残した唯一の縫いぐるみ、瞳の硝子には本物の宝石が使われているんだ」
手に取ってテディベアをよく見る、縫製も装飾も繊細で凝った物だ。
「もしお気に召したのなら貰ってあげてくれ、その子は自分を愛してくれる主人を探して毎夜宝石の涙を流すんだ」
「…………」

買った、と言うよりお爺さんから貰った形にはなってしまったが、面白そうだし良いかと思って結局持ち帰ることにした。
モフモフ…フサフサ
「ふわふわ…」
謎のテディベアの触り心地はめちゃくちゃによかった。

広場のベンチに座りテディベアをボーッと見ていると。
「ニコ?」
少年から声をかけられた、その声は忘れっぽい私でもよく覚えている声、でも少しカサついて心なしか低く聞こえる。
前を向けばそこには修道服を纏った少年が食材を抱え込んで立っている。
「やっぱりニコだ!戻ってきてたんだねっ!」
「…う、ん」
「わぁ、ニコが持ってるのテディベア?凄く綺麗だね」
「市場で、お爺さんが…くれた、夜に泣くんだって」
「すごーい、貰ったん…えっ!?泣くの?!!」
サイモンはテディベアを覗き込んでいたが、泣くと聞いた途端一歩後ずさった。
「面白そうだから…貰った」
「そ、そっか…ニコらしいね、ねぇニコ、もしよかったら今日は教会においでよ、ご飯を一緒に食べながらまた沢山お話しを聞かせて!」
「…うん」
サイモンはニコの手を引いて教会へと向かう、その道中でも二人の楽しげな会話は途切れる事はなかった。

fin
とある日の二人の思い出

いいなと思ったら応援しよう!