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ルーティン

できるようになりたきゃ、毎日やればいいんだ。

そう思って焼き菓子を始めたのは二年前。

仕事はその点最高だ、毎日何回もトライする機会がある。量より質、に行き着くためには質は一定のラインを守りつつも、とにかく量、回数を重ねる時期が必要なのだ。

仕事であり、練習であり、訓練であり、毎回が本番トライ。

そうして自分がイイ!と思うものと、お客さんがイイ!と受け取るものができるだけ一致していくようにする、それが私にとって、お店作りのひとつ、ルーティンである。

自分が「これはおいしい!」と思うものを作ったとして、それがオペレーションに組み込めるか、コストはどうか、とかいうのと同時に、「それはお客さんの評価を得られるか」という問題がある。

これがいい、と自分のセンスをぶつけたものが、お客さんにウケなかった時のショックといったらない。

よい(と思う)ものを作れば売れるわけじゃなく、よいものを作るのは大前提として、売れるものを作る、そうチャンネルを切り替えられればよいのだけど、なかなかそれが難しい。

売れるものを作る、お客さんの求めるものを作る、それじゃ作る側の創造意欲をもてあましてしまう。

そしてまた、売れるものを作る、という姿勢では頭ひとつ抜けることができない、悪くはないけど客がつかない、というような店になってしまう。

こういうのを文字で論じて、「いわゆる正答」を語るのは無駄なことだ。
正しい答え、正しい考え方なんてたいていの人は知っている。
現実は正しい答え通りにいかないのだ。

こういうターゲットはこういうものを志向する。

こういうターゲットはこういうやり方をするのが効果的だ。

こうやって運営すれば困ることはなく、数字はこのくらいに管理するものだ...

たとえば、ひとりで店を開くとして、10坪以下の店舗がいいだろう、 家賃は坪2万以下が好ましい、と本に書いてあるとする。

じゃあ、開業したい土地にそういう物件が空いてるのか?
まあ、だいたい出てない。

そもそもその家賃で出てるのか?
まあ、たいていもっともっと高い。

その物件が出ていたとして、集客が見込める場所なのか?
まあ、ハードルが低いところは厳しい立地条件だと思ったほうがいい。

原価はこれくらいでやるものだ、販促費はこれくらい、そういう割り振りですら、「続いているお店はこれくらいでやっていることが多い」という分析に過ぎない。

だれかが成功しているとして、そのやり方が正しいのかといえば、そうでもあるしそうでないこともある、というくらいのことしか言えない。

その人にとってそのやり方が適していた。
または結果的にそういうやり方に落ち着いた。
あるいは、成功したように見えているけど中身はそうでもないのかもしれない....

読むだけなら「そりゃそうだ」と思うだろうし、読んだらまるでそれが自分が経験したかのような錯覚に陥って、わかったような気になってしまう。
大事なのは、それはそれとして、自分の場合はどうなんだ、と自分の頭で考えて、実践して、何度でもフィードバックしていくことなんだ。

うちのやり方は、本に載ってるのとはちがう。費用の配分も違うし、メニューの立て方も違う、効率的なものではないし、オペレーションにはややこしさが織り込まれている。

だけど、底に流れているものは素朴でシンプルだ。

逆から言うなら、シンプルだけど、よそには真似できない複雑さ、バランスによって成り立っている、と言える。

どこかを切り落としても成り立つようになってるけど、付け足していっても成り立つようになっている。

見た目よりも、働く側の実用性を志向していると思うし、お店のオリジナリティよりもお店を利用する人が評価する効用を志向している。

そして、お店は続いている。

だけど、これが成功例かというとそうは言えないんじゃないか。
他の誰かに応用できるかといえば、もっとそう言えない気がする。

お店のブログを始めた頃は「開業を目指している誰かが探しているような情報を提供できたらいいな」と思っていたけど、もうそんなことは思ってない。

求める人は、自分で必死に探す、そして、教えてもらわなくても、ふとした言い回しのなかからピンと悟ったり、一枚の写真から多くのことを読み取ったりするものだ。

真剣に探し求めている人はちゃんと答えにたどり着くことができる、いまはそういう時代なんだと思う。

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