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愚痴を聴くこと①
20年来の友人と新百合ヶ丘で飲みました。
近場の出張ついでに彼の会社の近くに寄りました。
彼は今月、左遷されて不本意な部署に異動しました。
彼の愚痴を聴こうと思いました。
20年前の彼は、彼の会社の中では、飛ぶ鳥落とす勢いがありました。
そのときの社長のお気に入りだったからです。
やった仕事はすべて成功させていました。
長身でイケメンでテニスが上手でポルシェに乗っていました。
その後、社長が変わり、彼の立場が逆転しました。
あまり日の当たらない部署の管理職になりました。
彼の良いところは、志(こころざし)が高いことです。
夢があって、夢に向かって努力を続けることです。
彼は40歳過ぎて、僧侶であった父親が突然亡くなり、実家の寺も継がねばならなくなりました。
会社を休職して、2年間宗派の総本山で修行をして、僧侶になりました。
修行から帰ってきたら、甘いマスクが厳しい顔つきに変わっていました。
長髪が坊主になっていました。
平日は会社で働き、土日は実家の寺の法事で働きます。
話を聴いているうちに、彼は会社に恩があることが分かりました。
会社の会長とも親交があるそうです。
彼を高く評価していた社長が会社を去るときに、彼の給与を目いっぱい上げてくれたそうです。
そして、「しばらくは冷や飯を食うけど、耐えてくれ」と言われたそうです。
その後に就任した社長は、私利私欲を満たすための経営をしているそうです。
私の友人は、とても正義感が強いです。
お客様のために働いています。
酒が進んでいくうちに彼はポツリと言いました。
「本当は怖いんだ」
会社の中で正論を言っている彼は孤独です。
会社はどんどん売り上げが減っています。
このままだと4年で赤字経営になるそうです。
彼は、社内結婚を2回しています。
2人目の奥さんとの子どもは、まだ小学校6年生です。
これから学費がかかります。
だから働かなければなりません。
彼は、宗門の総本山の僧侶に相談したそうです。
「正論が一番人を傷つける」
と言われたそうです。
確かにその通りです。
しかし、彼は世の中のために働きたいと言います。
上司にゴマすりができない彼が馬鹿だと思う人もいるでしょう。
しかし、私は彼を笑えません。
私も同じだからです。
恐らく彼は弱音を吐ける人がいないのだと思います。
彼は56歳。
私は61歳。
私は人生の先輩です。
彼の話をじっくり聞いてあげようと思いました。
話をするだけで悩みが軽減します。
茨城の自宅に帰り、次男を22時に迎えに行かねばならない私は、
新百合ヶ丘駅20時の電車に乗らねばなりません。
20時までの2時間はじっくり彼の話を聴きました。
悩みの答えなどありません。
どんなに苦しかろうが、彼が自分で選んだ道を進むだけです。
彼の活躍する時代が、また来るような気がします。
私は彼の可能性を信じています。