久しぶりの故郷
出張で久しぶりに故郷に静岡に行った。
故郷の静岡を離れたときの風景は、未だに瞼に焼き付いている。
35年前の寒い1月末の冬のことである。
用宗港に近い会社の寮から、自分で借りたバンに少ない荷物を詰めていた。
同期の社員が荷物を積むのを手伝ってくれた。
寒い朝で空気が澄んでいた。
東名高速道路を走っていると、富士山が手の届くような距離でくっきり見えた。
これで故郷を離れると思うと、涙がとめどもなく出てきた。
涙を拭いながら車を運転していた。
「富士山=故郷」のイメージは私の中には残っている。
新幹線はいつも右側の席に座るようにしている。
それは、富士山が見えるから。
今回は、富士山が雲でまったく見えなかったが、
私の頭の中では、35年前の富士山が見えていた。
それを思い出すと62歳の男でも涙が出てくる。
たまに、ふと考えることがある。
あのときに会社を辞めなかったら、叔父の会社だったので社長になっていたかもしれない。
あのときに故郷に残っていたら、孫に囲まれて賑やかな生活をしていたかもしれない。
人生には「もしも・・・」はないが、「糸の切れた凧」の私の人生は、故郷を離れたときから始まった。
人生の選択肢で、厳しい道を選んでしまったのは私である。
故郷を捨てた私が、故郷を懐かしむことは道理に合わないが、どこに住んでいても故郷は心の奥底にある。
歳を取るに従って、故郷の思い出が蘇る。
小・中・高と一緒に過ごした幼馴染に会いたい。
お世話になった方々には感謝の気持ちを伝えたい。
富士山を見ると、心がギュッと締め付けられる。
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