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light_wood822
生きる気力は目標設定から
20年来の友人と食事をした。
彼とは同い年で、共に62歳になる。
彼の会社の業績は厳しく、先行きが不透明だという。
「来年には退職するかもしれない」
彼はそう語った。
私たちには定年まであと3年ある。しかし、彼は早期退職を考えていた。
彼は昭和の男であり、情熱的な性格だ。
還暦を過ぎた今、彼の重要な役割は若手の育成にある。
会社の未来は明るいとは言えない。
それでも、彼は若手にポータブル・スキルやエンプロイ・アビリティを身につけさせようと努力してきた。
しかし、それがかえって仇となった。
かつて「愛のムチ」と呼ばれていた指導法が、令和の時代には「パワーハラスメント」とみなされるのだ。
人事課から「厳しすぎる」と注意を受け、彼は自分の存在意義を見失ってしまった。
「もう生きる目標がなくなってしまった」と彼は寂しげに呟く。
彼はアパレル業界から転職してきた。
モデルのようなスタイルで、いつも若々しい彼だったが、
この日は少し老けたように見えた。
「仕事をしなくなったら、ボケてしまうよ」
私はそう言ったが、自分でも説得力がないと感じた。
老後を充実させるには、目標設定が不可欠だと改めて痛感する。
幸い、私はまだ生きる目標を持っている。
そのことが、何よりの幸せだと実感した。