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【前段の話】グループG 第2節 ブラジルvsスイスのために第1節の話をする【カタールW杯アーカイブ化計画】

サッカーを愛している方々、ワールドカップを見てサッカー面白いな、と思ってサッカーを追いかけ始めた方々、はたまたそうでもないけど、気になってきたぜ・・・って方々こんにちは。
ワールドカップアーカイブ化計画として「ブラジルvsスイス」の試合を担当するくろだといいます。

この記事はブラジルvsスイスの試合の前に行われた第一節の試合の短観を残すことでブラジルvsスイスで起きた現象の補助線になることを目的としています。
ザっと読んでいただきながら、本チャンの記事をお楽しみいただければ幸いです。

前節までの両チーム

ブラジルvsセルビア

ブラジルの基本配置は4-3ー3。

【守備】
ビルドアップ阻害の局面でハイプレスを敢行する際にはリシャルリソンがサイドへ追い込みながらパヴロヴィッチを狙って動く。
ラフィーニャに指定された行動範囲は広く、ハイプレスではサイドへもう然とアタックする一方、逆サイドにボールがある時はパケタ・カゼミーロおよびディフェンスラインを補完する動きを見せる。
半面、ヴィニシウスは守備ブロック(5-3-2)形成時にはパケタ・カゼミーロとラインを形成するに留まり、プレーエリアは高め。
この辺の守備陣形の挙動はディフェンスライン4枚とパケタ・カゼミーロを核として両翼の選手が場面に応じて換装しあうことで中央の6枚の配置を崩さないことで堅さを担保しているようだ。
ブラジルが先制してセルビアが前掛かりになった際にはパケタ、カゼミーロがディフェンスラインに吸収されかかる場面もあったが、これはネイマールの負傷により一時的に枚数が足りなかったことによるかもしれない。

【攻撃】
ビルドアップはシンプルでディフェンスラインでサイドを替えながら出口を探していく。セルビアはビルドアップ阻害の局面でセンターバックと人数を合わせてくるがプレス志向が低くブロックを形成することからネイマールが下がる・パケタが持ち上がる・サンドロがポジションを上げるなどしてセルビアの陣形を歪めるために働きかけていた。
前半30分を越えたあたりからブラジルが深く押し込む場面が増えてくるが、押し込んだ局面ではネイマールがリシャルリソンとセルビアのセンターバックに近いポジションを取りつつラインを行き来することで崩しの局面での楔としての機能を見せる。
パケタとカゼミーロも機を見た攻撃参加を見せており、特にパケタはダイナミックな動きを見せていた。
後半に入ると5-3-2然としたブロックの「3-2」の外側でボールを持つことでWBを引き出すなどより直接的に影響力を行使しようとする意志を見せていく。特にヴィニシウスがいる左サイドを中心に崩していこうとしたことでサンドロが内側に絞る動きを多く見せる事になったが、おそらくセルビアのブロック配置を見て後方のリスク管理に目処が立ったという事ではなく誰に目付けするかが整ったことによる動きだろうと思われる。
このことで早々にセルビアのディフェンスラインに一人ずつアタックできる体制が整い、先制点のキッカケとなるヴィニシウスの中央(おそらくパケタ)へのパスが生まれる。実際にはこのパスが直接的に成就した訳ではないが、これによってセルビアの陣形が中央に密集することになり、ネイマールのターン、ヴィニシウスのシュート、こぼれ球に詰められるリシャルリソンのポジションへとつながった格好だ。

【ネイマールの影響力】
ネイマールは後半21:38ごろにカウンターで持ち上がった際の接触により足首を痛めたが、その後10分以上に渡りピッチに立ち続けている。
その間は1回だけランがあったが、それ以外はジョグ程度でスプリントは一切なし。それでもセルビアの陣形に対して上述の「3ー2」の外側でボールを受ける事でヴィニシウスの突破を助けていた。
リシャルリソンの2点目はネイマールが積極的な侵入を避けたことでネイマールへのケアがセルビアの陣形に綻びをもたらしたことでヴィニシウスがリシャルリソンへのパスコースが開けたことによる。
セルビアのブロック形成時のインテンシティが低めだった事を差し引いても大きなポジション移動をなさずとも影響力を発揮できるネイマールは次節出場しなかったが、ブラジルはどのようなプレーを選択するだろうか。

スイスvsカメルーン

欧州予選と同じく、スイスの基本的な配置は「4-2-3-1」。しかし、選手の顔触れはジャカが負傷で予選期間のほとんどを休場していた事からやっと真の姿を見せたという趣。
ワールドカップ前でのテストマッチではジャカが中盤の底に位置することでシステム的強度を担保する文字通り「要」としてスイスの攻守を支えていました。(ただし、3バックをやっていたことからWB裏が大変でしたけど)
特筆すべきは最前線。欧州予選ではトップに収まることが多かったセフェロヴィッチではなくエンボロがファーストチョイスに。

【守備】
ピッチ上の盤面が落ち着きだした10分過ぎのミドルゾーンで構えた状態では4-4-2的な配置。カメルーンがバックラインにボールを戻した場面ではそこまで深追いはせず、あくまでミドルサードが主戦場だ、という趣。
12分ごろのビルドアップ阻害ではプレスラインが上がりそうな気配があったが、バックラインがプレスラインと連動できずに引き出されてしまった格好となりパスルートが大きく空いてしまったことから、ボールの高さやプレスのルートに応じて段階的に押し上げながらプレスをかける意識は無かったのだろうと思われる。
実はこの前半、前評判ほどの守備の堅さを見せていない。トランジション設計において人数をかける事でのリスク管理を度外視している可能性も高く、リスク配分の比重が相当「攻め」に寄っているように見える。
そのことから、スピード豊かなカメルーンの前線にカウンターを受けて危ない場面を何度か迎えるも、ゾマーやヴィドマー、アカンジの対応によって最終的に崩されることは無かった。

後半は早々に点を取ることが出来た事で両軍の配置がかみ合い始めてアンバランスさが解消。お互いがビルドアップから隙を伺う姿勢を見せるも4-4-2を基調に4-5ー1的な配置を維持し、クロス対応にせよトランジション対応にせよ安定感を取り戻し、試合を閉める事となる。

【攻撃】
試合序盤からボールを握ることになったスイスだが、カメルーンが守備時4-5-1(または4-1-4-1)と慎重な立ち上がりを選択したことで前線も早々に前線に人数をかけて配置することに。カメルーンの4バックに対してバルガス、シャチリが両ワイド、CBに対しては右にエンボロ、左にソウが立ち位置を取り、中盤との噛み合いや景色の変化に応じて降りながらボールを引き出すことでわずかながらもスペースを創出していこうという趣。
前半9分には早々にビルドアップ阻害においてスイスの2CBに対して人数を揃えにかかってきたカメルーンに対してはサイドバックを逃げ道に活用しながら前進を目指していた。ただ、この時は急襲を受けた感もあり、中盤に人数が残っていなかったことからピンチを迎える。
それ以降の前半は、カメルーンが見せる攻め筋との噛み合い方がしっくりこず主にトランジション時にカウンターを見せる事でしかチャンスの匂いが出てこない。ただし、ここで大きな役割を果たしていたのがシャチリ。トランジション時の反応も良く、ボール奪取を成就させた場面がいくつかあった。
比較的静的な攻撃としては、15分を過ぎたあたりからスイスは前進しつつサイドから「アンカー脇」を狙いだすも、なかなかスペースやパスラインを見出すことが出来ずにサイドを起点に深く侵入できるポイントを探る作業が続いていた。
カメルーンの流れになりつつあった32分ごろ、トランジションでピッチ中央に位置していたソウがボールを受けて右サイドを駆け上がるバルガスへの配球からクリーンにカウンターを打てた場面があったが、おそらく今節における数少ない勝ち筋。この辺りからカメルーンの前線は色気を出し始めてスペースをスイスに提供する場面が増えた気がする。

後半序盤はスイスがボールを握る展開。カメルーンが積極的に前からビルドアップ阻害のために前進してくることからボールを動かしながら前進を試みるスイス。前への圧力を高めたことでウム・グヴェットの前に広大なスペースが発生し、フロイラーがジャカからのパスを受けて右サイドへの展開を成したことでエンボロの先制点が生まれる。
スイスとしては中央でクリーンにボールを持たせようと意識し続けていた志向が結実した格好。
以降のスイスは前線から圧力を高めようとさらにプレス前かかりになるカメルーンをかわしながらビルドアップを行っていくが、カメルーンもビルドアップ時には丁寧に繋ごうという姿勢(恐らく本来の姿)に戻ったことでトランジション時に両者に等しくスペースが与えられることになった。そのおかげでシュポ・モティングが息を吹き返し、スイスはエンボロやシャチリが躍動。試合展開としては後半の方が見応えのあるものとなったが、スイスはディフェンス陣の対応がシンプルになったこと、カメルーンはGKのオナナの好セーブによってお互いゴールを割らせずにそのまま試合終了の笛を聞くこととなった。

【スイスまとめ】
スイスはカメルーン戦を勝利必須として捉えていたからなのか攻めへの意識を強めて配置を取る段階を飛ばして積極的に前へと人数をかけた格好だったが、やはり静的な仕組みをベースにしたビルドアップを土台にすることで強みや安定感を増すチームだ、という事を再確認できた試合だった。
とはいえ、ネガティブ・トランジションにおいてはシャチリの挙動が肝になるであろうことも好材料であり、ジャカ(と相方のフロイラー)が中盤の底で大きい仕事を果たすことが出来ている事でシャチリの特性が前線で開放されている事も特筆すべき事だろう。
そのため、スイスはビルドアップからの前進をベースにしつつもネガティブ・トランジションが発生するポイントをジャカの周辺に設計することで意図したチャンスを狙う事が出来のではないか、という期待も起きる。そのうえ、オカフォーやセフェロビッチといったキャラクターが違う選手が控えにいる事も打ち手によっては十分いい成績を残すことが出来るのではないか、と思わされた。
とにかく、次のブラジル戦では耐えてチャンスを待つ形になるだろうが悪くない結果となる事を祈るばかりである。

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