『音楽?音が苦?』

 皆さんは「音(おん)が苦(く)」という言葉を聴いたことがありますか?音楽を奏でる人は、ステージでお客さんに演奏を披露します。華やかできらきらした姿、凛々しい姿、そのステージ裏には時に「苦しい」こともあります。今日はその「音が苦」についてのお話です。

 本題に入る前に一つ触れておきたい言葉があります。「アンブッシュア」という特に金管楽器の世界では避けて通れないものです。これは楽器を吹く際の口の形を意味する言葉です。

 私はアンブシュアを今まで二回大きく変えたことがあります。一度目は中学一年の冬、そして中学二年の秋。中一の私は真ん中から右側に大きくずれたアンブシュアで吹いていました。それを一人で真ん中に修正を試みた時、音が出なくなり、当時の私はとても不安と恐怖を感じました。中学生の私には、慣れた吹き方を辞めて別な方法で音が出るまで待つことはできませんでした。高音、大きい音、速いメロディ、そして音色…と少しずつ求めるものが日に日に変わってきていた矢先に、音が出なくなって焦った中二の私は何を求めたか…。それは「音がでること」そして「高音」でした。真ん中で吹くことと高い音が出ることを融合させ、かすれているけれど高い音が出る方法(粘膜奏法)を見つけてしまいました。低い音がほとんど出ないのはお構いなし。低音が得意だった同期と分担してうまい具合に隠し、誰にも指摘されることなく中二の夏の大会を終えました。
そして秋先にあった講習会で初めてその吹き方を指摘され、またも音が出せなくなりました。その講習会後、一カ月ほど音が出ない時期がありましたが、冬の大会ではどうにか一番高い音までしっかりと出せるようになっていました。この時の講師の先生が教えてくれていなかったら前の吹き方のまま、トランペットから離れてしまっていたかも知れません。

 自分の試行錯誤だけでなく、いろいろな人からのアドバイスのおかげで今の自分がいるのだと思います。人それぞれに個性があるのと同じように、アンブシュアも十人十色です。身長、身体つき、歯並びなど一つとして同じものはなく、その個性と切っても切り離せないアンブシュア。指導の際もとても慎重にアドバイスします。デリケートなことでもあるので敢えて深く触れないこともあります。改めて初歩の、特に初めて楽器に触れる人はこのアンブシュアについては大事にしてほしいと感じます。

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