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無くなった財布と世界線。

先日、財布をなくしました。

なくした場所は自宅の最寄り駅にあるATM。

その日は朝から予定が詰まっていて、
一番最初の用事がATMでのお金の処理。

小さな駅にあるATMなのですが、いつも人が並んでいて、
その日も私の前には5〜6人の人の列がATMの外まで続いていました。

このATMでは、家の家計や仕事のお金のことを処理し、
それが終わったら、高齢の両親から頼まれていた
年金の処理をするために、両親の口座がある別の銀行に行く予定でした。


ここであれをおろして、あっちの口座に入れて・・
それを2件やったら、親の銀行に行って・・


など、アレコレ考えながら列の最後尾につきました。
そうこうしているうちに、私の順番。

考えていた通りに処理を終え、
両親の口座がある銀行に向かおうと
足早にそのATMを離れたのです。

親の口座がある銀行は、
そのATMから歩いて3分もかからないところにあります。
両親の通帳を手に、預かったキャッシュカードを出そうと思ったところ、

ないんです。
財布が。

つまり、手元にない財布の中に
両親から預かっていたキャッシュカードを入れていたんです。
ご丁寧に暗証番号のメモまで添えて。

預かっていたキャッシュカードは、
親の年金が入っている口座。親の暮らしの生命線です。


キャッシュカードを悪用されたら、
両親はどうやって暮らしていけばいいの!?


頭が真っ白になりました。


おまけに、その財布には親のキャッシュカードの他にも、
現金が1万円ちょっとと、
ついさっき使った、我が家の生活費用キャッシュカード、
仕事用のキャッシュカード、
クレジットカード数枚、免許証・・。
とにかく重要なカード全てが入っていたんですから。


忘れたんだ。さっきのATMに。


そう思った瞬間、足が勝手に走り出していました。
最初に立ち寄ったATMに向かって。

そこにあるよね!?あるよね!?
頼む!そのままの状態で残っていて!!


祈るような気持ちでATMにつくと、ATMには誰もいない状態。
おかげで全てのATMのブースを
くまなく見て回ることはできたのですが・・。


ないんです。


え!?なんで!?
ほんの数分前のことなのに!?
もしかして、私の次に使った人が警察に届けてくれたのかも!?

と、祈る気持ちで「絶対ある絶対ある」と唱えながら
近くにある交番に向かい、警察官の方に事情を話しました。

でも、届出はなし。

ガックリと心折れながら、紛失届を出したのち、
もしかしたら、落としただけかもしれない。

一から自分の足取りを辿って確かめようと、
駐車場に停めておいた車の足元や
地面や街路樹の根本を探ってみたりと、
かなり怪しい行動をしてました。


でも、全くどこにもない。

なんでこんなことに???
いつも見る風景が全く違うものに見えてきて、
人とすれ違うと、

もしかしてあなたが取ったんじゃないの?

と疑ってみたり・・。とにかく心が荒んでしまいました。


とにかくは一旦冷静になろう。
まずは、財布に入っていた各種カードを止めること!と思い、
車を走らせ、家に戻りました。


家では、電話やネットで、財布に入っていた
全てのカード類をストップすることに集中。
無事に手配を終えた時には、涙が出そうになってきました。

なんでこんな目に遭うの・・???と。

・・・・・・・・・

その日は、銀行のあと美容院に行って、
夜は久しぶりに会う娘との夕食と色々予定があったのですが、

それぞれに財布を無くしたことを打ち明けると

笑い話になったり、共感してもらったりと、
色々話をしてスッキリというか諦めもついて・・
やっと普段の自分に戻った気がしました。

その日の夜、なんとなく興味が惹かれて
ある映画を観ました。
それは、アニメ「ルックバック」。

その映画をみて、

「世界線」

という言葉が浮かんできました。

いろんな偶然が重なってこの現実ができていること。
ほんの小さな出来事が起こったか起こらないかで
自分の生きている世界線が少しづつ変わっていく。


今日の私も財布を無くしたことで
世界線がちょっと動いたのかも、と感じました。
そして、財布を無くすのは必然だったのかも?とも思ったのです。

財布をなくさず、普段通りに過ごしていた私が生きる世界線。
そして、
財布を無くしてしまい、バタバタしながら様々な感情が渦巻きながら
1日を過ごした自分がいるこの世界線。

財布を無くしたことで気持ちも落ち込み、
その対応のために面倒がいっぱい増えましたが、
良いこともあったように感じたからです。

まずは命があること。
強盗や脅されて財布を差し出したのではないし、
自分のうっかりでやってしまったことなんだし。

また、私は過去の経験から警察(特に交通課)が苦手だったんだけど
警察官の方の迅速で丁寧な対応に、警察への印象が変わってきたこと。

カードの停止や再発行の際に対応してくれた担当の方は
みなとても親切で的確で救われた気持ちになれたこと。

両親にカード紛失のことを話したけど、
いつも私に任せっきりで申し訳ないって逆に謝られちゃって・・
その後たくさん話ができたこと。

夫が財布を無くしたことについて
怒ることもなく、力になってくれたこと・・・。

今日一日、財布を無くしたことで、
全く見ず知らずの人、そして近しい人からの
思いやりや優しさを感じることができた。

これは、財布をなくさない世界線の私では
味わうことができなかったことだからです。


自身の選択や社会の大きな波によって
大きく変わっていく世界線もあるけれど、
日常のこんな小さなできことでも世界線は変わっていってる。

自分で選ぶ世界線の移動もあれば、
偶然が引き起こす世界線移動もあるんだって思った1日でした。

毎日毎日、偶然が重なって目前の世界が繰り広げられている。

そんなことを感じた1日になりました。

・・・・・・・

財布を無くした日から4日後、
警察から「財布が見つかった」という連絡が入りました。

現金は小銭を含めて全てなくなっているけれど、
カード類は無事とのこと。
見つかった場所は、ATMからはかなり離れたスーパー。

そのことを警察から聞いたとき、

財布に気がついたのに、声を翔ことなく自分の懐に入れ、
現金だけを抜いて買い物・・
どんな人かは分かりませんが、その映像が頭に浮かんできて、
再び、心が荒みそうになりましたが、

盗られたのは現金だけ。
カードの被害もなかったし、
それだけでも良かったと思うことにしました。

そして、その現金で買い物をした人は、
もしかしたら、経済的にとても苦しかったのかもしれないし、
その方を少しでも助けることができたのだったらそれでいいや。
(うちに余裕があるわけじゃないけど笑)

そんな風に思うことにしたんです。

きっとそう思う自分と、紛失届を盗難届に変えて、
徹底的に犯人探しをするという自分。
どちらを選択するかで、また世界線が変わっていく。

心地よく、自分らしく暮らせる世界線に移動するのは
結局、自分の意志やその意志を元にした行動によっても
変わっていくのでしょうね。

そんなこんなで、お財布紛失事件は色々なことを考えさせてくれました。
その後、財布にはカードタイプのAir tagを入れて
ATMでの用事の後は「指差し確認」を励行中です。(笑)


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